静寂の中、波音がゆったりと聞こえる。まるで、子守唄のように。ある意味、子守唄なのだろう。永遠の眠りについた者にとって。
「それにしても、久しぶりの『舟流し』だな」
「てっきり、次は
「おい、彼の名前を出すな。目をつけられれば最後、次はあんたの番かもしれん」
「それは嫌よ」
「なら、おとなしくするんだな」
こそこそと会話をしているが、僕には丸聞こえだ。彼らは死者を送り出す「舟流し」について、なんの疑問もないらしい。当然の風習だと。
舟に近づき別れをつげる。彼を見るのは、これが最後。死化粧で和らいでいるが、恐怖の表情までは隠せない。
――まるで、最後に何かを伝えようとしたかのように。あの夜、何があったかは分からない。一つ確かなのは噂が本当だったことだけ。「見張り台で一夜を過ごすと死ぬ」。噂を否定するつもりが、逆に真実味を持たせてしまった。
「
「心配し過ぎだよ。あれは、あくまでも噂だから」
「でも、実際に選ばれた人は儀式の当日に亡くなっているでしょう? それに儀式まで残り一週間を切ってるわ」
「
彼女の手を握るが恐怖から手汗が出てしまう。そう、結局怖いのだ。彼女が死ぬかもしれないことが。
「神託によって選ばれた者は、『火送りの儀式』の当日に死ぬ」。科学が発展した現代に解けない謎はないはず。きっと、何か説明がつくに違いない。でも、僕だけの力では限界がある。彼の助けを借りるしかない。