全身の力が抜けて、凜にもたれかかる。
それは凜を増長させるだけだとは思ったが、体力が限界だった。
(……はぁ……っ……)
息が乱れて、喉がカラカラに渇いていた。
けど――
(あ、でも…………さっきまでの熱が、ちょっと引いた……?)
確かに、体はまだ火照ってる。
けど、さっきまでの異様な発熱とは違う。
「……落ち着いた?」
凛が、優しく微笑む。
「……っ……黙れ……」
もう、言葉を交わす気力もなかった。
「よかったね」
そう言って、凛は俺の濡れた髪をそっと撫でる。
「れーちゃん、頑張ったね」
「……っ……」
何も言えず、俺はただ、目を逸らした。
(……くそ……こんなの……)
羞恥と敗北感で、胃の奥がギュッと縮まる。
でも――
(……もう、これで終わり……だろ……?)
これ以上、何かされることはないはず。
せめて、今はこのまま静かに――
「……うん、れーちゃん、やっぱり可愛い」
不意に、凛がそんなことを言った。
「……は?」
「でも、これで終わりじゃないよ」
(――!?)
頭が、一気に冷える。
「まだ、続きがあるからね」
凛が、ゆっくりと微笑んだ。
「……は?」
俺は思わず顔を上げる。
(……何言ってんだ、こいつ……)
もう十分だろ。
俺はもう、限界まで追い詰められて、何もかも奪われた。
なのに、まだ何かあるっていうのか。
「れーちゃん、今は落ち着いてるけど……」
凛の指が、俺の濡れた頬に触れる。
「すぐにまた、熱くなるよ」
「……っ……」
喉が、ひゅっと詰まる。
「嘘だろ……」
呟いた言葉に、凛はにこりと微笑む。
「嘘じゃないよ。……だって、もう身体が変わり始めてるもん」
(――!!)
全身の毛が逆立つ。
「……っ……ふざけんな……」
「ねえ、れーちゃん」
凛の指が、俺の鎖骨をなぞる。
「さっき、すごく気持ちよかったでしょ?」
「っ……!!!」
「もう、僕の手で感じられるようになったんだよ?」
その言葉が、決定打だった。
「……っ……っざけんな……っ……!!」
俺は頭を振って、必死に否定する。
けど、さっきの感覚は、まだ俺の中に残っている。
凛の手で――射精させられた感触が。
「……違う……俺は……っ……」
必死に言葉を探すのに、喉が震えて、何も出てこない。
「大丈夫だよ、れーちゃん」
凛の手が、そっと俺の腹に触れる。
「僕がずっと見てるからね」
(――!!)
その瞬間、全身の血が凍ったような感覚に襲われた。
(……終わりじゃ、ない……まだ……続く……)
本能的に察してしまう。
これから俺の身体に起こる変化を。
そして、それを誰よりも楽しみにしている凛の存在を。
「れーちゃん」
凛が優しく呼ぶ。
「もっと素直になっていいんだよ?」
凛の声が、耳の奥で響く。
「……っ……」
俺は目を逸らした。
もう、何を言っても無駄だ。
(……ふざけんな……)
けど、俺にはもう抵抗する力も残っていない。
「ほら、体拭こうね」
ふわりと、大きめのバスタオルが俺の体を包む。
「っ……!!」
一瞬、温かさに安堵しかけて――すぐにその安心感自体が恐ろしくなった。
「……いらねぇ……自分で……」
そう言おうとしたのに。
「れーちゃん、もう力入らないでしょ?」
そう囁かれた瞬間、俺は自分の手足がまったく動かないことに気づいた。
(……なんで……っ!?)
力が抜けている。
全身が、ふわふわして、思うように動かない。
(……薬のせいか……?それとも……)
その答えを考える間もなく――
「はい、こっちおいで」
次の瞬間、俺の体がふわっと宙に浮いた。
「――っ!?」
抱き上げられたんだ、と気づくのに数秒かかった。
「っ、お、おろせ……!!」
「ダメだよ。ちゃんと運んであげる」
凛の腕の中で、俺は完全に固定されていた。
「……お前……っ……!!」
「大丈夫、落とさないから。僕、れーちゃんを落としたことないよね?だから安心していいよ?」
頭を撫でられる。
(っ……!!)
怒りと屈辱で、顔が熱くなる。
なのに、もう暴れることすらできない。
俺は、まるで赤ん坊みたいに――こいつの腕に抱かれて、運ばれるしかなかった。