目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

5 1日目ー3回目の注射と更なる羞恥

「……っ」


目が覚めた瞬間、まず最初に感じたのは 異様な熱 だった。

頭がぼんやりする。

体の内側がじんわりと火照って、じっとりと汗が滲んでいる。


「……なんだ、これ……」


寝起きのはずなのに、心臓がやけに早く鳴っている。

皮膚が妙に敏感な気がする。

それよりなにより。


(……ヤバい……)


腹の奥に、強烈な違和感。

鈍い圧迫感と、嫌な焦燥感。


(……マジか……)


尿意だ。


さっき寝る前は 「まだ我慢できる」 と思っていたはずなのに、今はもう限界に近い。

「意識すればするほど耐えられない」 あの感覚がじわじわと襲ってくる。


(やべぇ、これ……)


目をギュッと閉じる。

さっきのやりとりを否応なく思い出す。

けど、どう考えても無視できるレベルじゃない。


「おはよう、れーちゃん」


穏やかな声が、耳元に落ちる。


(……っ!)


目を開けると、すぐ近くに凛がいた。

俺の顔を覗き込むように座り、当たり前のように微笑んでいる。


「よく眠れた?」

「……っ」


そんな場合じゃねぇ。


「うん、顔色いいね」

「……勝手に判断すんな……」


息を吐き出しながら、なんとか平静を装う。


「ちょっと熱っぽいかな。そろそろ、3回目の時間だね」


(……っ!!)


凛が、ゆっくりと注射器を手に取る。

これ以上、薬を打たれるのはまずい。

俺の体は、確実に変化し始めている。

自分で気づかないフリをしていても、もう誤魔化せない。


けれども――


(それより……トイレ……っ!!)


尿意は、さらに強く訴えてくる。

今すぐここから抜け出して、トイレに駆け込みたい。

でも、逃げる手段はない。

まだ足枷はついたままだし、上半身を動かそうとした瞬間、すぐに凛の手が俺の肩を押さえた。


「大丈夫、すぐ終わるから」

「っ、やめろ……!」

「ほら、力抜いて」


再び、冷たい針が肌に触れる。

今度は二の腕に。


(……くそ……!!)


チクリ、と小さな痛み。

それだけ。

なのに、もう俺は この変化が止まらないことを確信していた 。


「……よし、終わり」

「……っ」


腕を押さえながら、俺は息を呑む。

体が、熱い。

そして、尿意も――もう誤魔化せる状態じゃない。


「……なぁ」


限界だった。


「トイレ……」


絞り出すように言うと、凛は驚いたように目を瞬かせる。


「ああ……そっか」

「……っ」


頼むから、すぐに行かせてくれ。

そんな願いを込めて、俺は凛の顔を睨みつける。


「でも、その前に……」


凛はゆっくりと立ち上がった。


「お風呂、入ろっか」

「……は?」


一瞬、言葉の意味が理解できなかった。


「ちょうど、汗もかいてるしね」

「いやいや、待て!!」

「大丈夫、すぐ終わるよ」

「すぐ終わるとかじゃなくて、俺は――」

「ほら、立って」


無理やり腕を引かれる。


(やべぇ……! 俺は今すぐトイレに行きてぇんだよ!!)


でも、それを言ったところで、凛が聞くわけがない。

「お風呂」が優先されてしまう最悪の状況 。

しかも――


「脱がすね」


そう言って、凛の手がシャツのボタンにかかる。


「っ、お前、やめ……!」

「汗かいたままじゃ気持ち悪いでしょ?」

「気持ち悪いとかじゃなくて!!」


俺は 今、それどころじゃねぇんだよ!!

なのに、凛は優しく微笑んだまま、俺の服をゆっくりと剥がし始めた。

無理やり肩をすくめて拒絶するが、足枷のせいでろくに動けない。

両手を使えば抵抗できるかもしれないが――


「暴れると、脱がせるのに時間がかかるよ?」


凛は穏やかにそう言った。


「早く終わらせたいでしょ?」


(……っ!)


確かに、もたもたしている時間はない。

今すぐトイレに行きたい。

でも――


「……っ……っくそ……!!」


俺は奥歯を噛み締め、目を逸らした。


(……無駄な抵抗はやめろ……! とにかく、早く終わらせて、トイレに……!)


シャツのボタンが一つずつ外される感触が、妙にリアルに伝わってくる。

凛の指が肌に触れるたび、背筋がゾワッとした。


「れーちゃん、ちょっと力抜いて」

「……っるせぇ……!!」


力を込めて肩を引くが、凛は優しく微笑んでそのまま俺の腕を取り、シャツを滑らせる。


「はい、上は終わり」


腕を拘束されていないはずなのに、身動きが取れない。

凛が俺の手首を握るだけで、何もできなくなる。


「次は……」


スッと、指先がズボンのにかかる。


「っ……!」


嫌な予感がして、とっさに身を引こうとした。


「れーちゃん?」


凛が名前を呼ぶ。

その声が、やけに穏やかで――逃げ場をなくさせる。


(……っ……!!)


ズルリ、とズボンの生地が滑る。

下着と一緒に。

俺の下半身が露になった。


「や……めろ……っ!!」


反射的に手で押さえようとしたが――


「ん、ダメだよ」


その手を優しく押さえ込まれた。


「お風呂入るんだから、ちゃんと脱がなきゃ」

「……っ!!」


俺の意思なんて、関係ない。


(……やべぇ……!)


「あ、ごめん。れーちゃん……足枷あると脱げないから……」


凜は一呼吸おいてから、足元から鋏を取り出した。

その手に握っていた鋏を、開いたり閉じたりする。


「切っちゃうね。危ないから動かないでね?」

「な……っ」


俺が止めるよりも早く凜は生地を切った。

いとも容易く簡単に、鋏が切り落としていく。

ズボンが完全に床に落ちて行った。。

布地が離れた瞬間、腹部にかかっていた微妙な圧迫が消え――

尿意が、一気に襲ってきた。


「っ……!!!」


全身が硬直する。


「れーちゃん?」


凛が小さく首を傾げる。


「……っ、いや……っ……」


ヤバい。

本当にヤバい。


(もう、無理かも……!!)


ここで……なんて、絶対に……!!

必死に息を殺し、腹筋に力を入れる。

でも、どうしても力が入らない。


「れーちゃん、どうしたの?」

「……っ、なんでもない……っ……」


震える声で返すと、凛がじっと俺を見つめた。


「……ああ、そっか」


コツン、と軽く額を突き合わせるように、凛が微笑む。


「トイレ、行きたかったんだね?」


(――!!)


図星を突かれた瞬間、背筋が凍りついた。


「……っ、……っ」

「無理しなくていいよ」


優しい声。

なのに、その言葉が最悪の結末を予感させる。


「トイレ……行く?」


全身が総毛立つ。


「……っ、ちが……っ……!!」

「ふふ、でもれーちゃん、もう我慢できないんじゃない?」

「……っ……!!!」

「ねえ、大丈夫だよ?」


その瞬間、ぐっと俺の腰を支えるように、凛の手が添えられた。


(――!!!)


「力抜いてもいいよ?」


耳元で囁かれる。

その瞬間、全身が総毛立つほどの嫌悪感と恐怖に襲われた。


「っ……!! ふざけんな!!!」


俺はとっさに腕を振り払った。


(……ヤバい……マジでヤバい……!!)


もう、限界だ。

ギリギリの状態で踏みとどまってはいるものの、これ以上は耐えられない。

今すぐトイレに駆け込みたい――なのに、凛がそれを許すわけがない。


「れーちゃん?」

「っ……」


凛が優しく微笑む。

俺が今、どういう状態なのか、絶対に分かっているくせに。


「……トイレ……行かせろ……」


震える声で、搾り出すように言う。

すると、凛は少し考えるように首を傾げた。


「トイレ行きたいの?」

「当たり前だろ!!」


俺が叫ぶと、凛はゆっくりと微笑んだ。


「……じゃあ、ちゃんと言って?」

「は?」

「僕に、『トイレに行かせてください』って、お願いして?」


(……っ!!)


怒りと屈辱で、全身が震える。

なんで、そんなことをしなきゃいけないんだ……!?

でも――


(……っ……でも……)


もう、限界なんだ。

俺には、もうそれしか選択肢がない。


「……っ……」


唇を噛み締め、喉が震える。


でも、言わなきゃ――


「……ト……イレ……行かせて、くだ……」

「聞こえないよ、れーちゃん」


凛が、すぐそばで微笑む。


「ちゃんと、お願いして?」


(……っ……くそ……!!!)


俺の誇りが、最後の最後まで抵抗していた。

でも――


「……トイレ……行かせて、ください……」


喉の奥で、掠れる声が漏れる。

言った瞬間、敗北感で頭が真っ白になった。

俺は今、自分の意思じゃなく、

こいつの言う通りに「トイレへ行かせてもらう」ことを選んだ。

完全に、支配されている。


「うん、いい子」


凛が満足げに微笑む。


「じゃあ、トイレ行こっか」


俺はただ、俯いたまま、唇を噛み締めるしかなかった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?