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ディープダンジョン~クラス転移でゲーム的な世界に来たが、しょっぱい能力を与えられたぼっちの俺はのんびり周回遅れで攻略を進
ディープダンジョン~クラス転移でゲーム的な世界に来たが、しょっぱい能力を与えられたぼっちの俺はのんびり周回遅れで攻略を進
umi
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年03月29日
公開日
1.2万字
連載中
高校2年のとあるクラスの黒板が突如、ディスプレイに切り替わった。
『ディープダンジョンの世界へようこそ』
というメッセージと共に、強制的にガチャを引かされる。
そこはゲームであるものの、引いたガチャの力を使って生身でモンスターと戦うことを要求される殺伐とした異世界だった。
外は真っ暗闇、進むべき道が示されるが、突然の出来事にクラスメイトたちがざわつく。
しかし、生徒会長の榊とクラスのムードメーカーの神崎がクラスメイトを引っ張りまとめあげ、ディープダンジョンの攻略を進める。

――そんな彼らの蚊帳の外にいる生粋のぼっちである松井は、ゲームの説明をしてくれる地味な能力を持つ「物知りなイルカ」にゲームの進め方を聞きながら、ひっそりとダンジョンに潜るのだった。悲壮な覚悟で挑むクラスメイトたちとは逆にのんびりとした面持ちで。

第1話 はじまりはじまり

抽選ガチャを行ってください』


 黒板だった巨大ディスプレイに表示された文字に麻痺していた感覚が戻ってきた。不可思議な事象の連続で圧倒されていたが、ガチャって何だよって素にもどれたよ。

 俺こと|松井圭太≪まついけいた≫は日陰者のどこにでもいる高校生である。

 今日も今日とて目立たぬように息をひそめ席に座っているいつもと変わらぬ日常だった。高校二年の冬、数ヶ月後には三年生になるということでそろそろ受験やら進路のことがあってめんどうだなあとぼんやり考えていたりいなかったり。

 ガラリと扉が開き、ひなびた痩せぎすの数学教師が姿を現すはずだった。

 最初の異変は、いや、正確には最初に気が付いたのは窓の外。窓の外が真っ暗になっていたんだ。文字通りの暗闇で、灯りがないから暗くなっているわけじゃなく「何もない」暗闇といえばいいのだろうか。真っ暗な画面のような、そんな異様な光景が窓の外に広がったいた。

 だというのに、教室の中はこれまでと同じ色。光の指す方向まで同じで時が止まり、教室という空間を俺たちごと切り取ったかのようである。

 黒板もディスプレイに変化しており、黒い画面に真っ白な文字が浮かび上がったんだ。

『ディープダンジョンの世界へようこそ』

 ってさ。

 元気な生徒たちは口々に叫ぶ。しかし、誰も彼らの問いに答えるものはいない。

 そんな中、俺はあっけにとられたまま固まっていた。

 スマートフォンを取り出して電話やSNSメッセージを送ろうとする生徒、仲の良い者同士で相談を始める生徒、俺と同じように呆然とする生徒……。

 そんな中、抽選ガチャを行えって。

 一体どうやって?

「おい、スマホが、お前のは?」

「俺もだよ」

 ほほう、スマホとな。

 うわ……。スマートフォンにディープダンジョンとかいうアプリがインストールされており、他のアプリが一切合切なくなっていた。通話やメールも含めてだ。

 お、俺のこれまでの血の滲むような努力が……いや、まだ諦めるには早い。アカウントは残っているはずだから復旧できるはずだ。

 何がって? そらアプリゲームだよ。

 こんな時までアプリゲームの心配をする自分が嫌になってくるよ。

 さて、件のディープダンジョンであるが、シンプル過ぎる画面でまるで興味を引かれない。

 こう美少女やカッコいい戦士とかワクワクするようなトップ画面というのがアプリゲームの常だろ。ディープダンジョンは黒い画面に文字だけというやる気の無さ過ぎるスタート画面だった。上半分は一定時間で文字が切り替わり、下にはガチャのボタンがある。全て白黒のシンプルなものだった。

 気が進まないが、一応チェックするか……。現状、『ガチャを引け』以外何も見えてないからな。

『さあ、ディープダンジョンをはじめよう』

『君たちを強力にサポートしてくれるガチャを引こう』

『「降臨」「神器」「真理」のどれかが出てくるぞ』

 ……。ゲームぽいことだけは分かったのだが、どんなゲームなのか一切説明がない。ガチャを引いて「何を」するんだ?

 ディープダンジョンというタイトルから想像されるに迷宮探索でもするのか?

 この奇妙な空間からどうやれば元の世界に戻ることができるのか、とか一切説明がない。

 流されるまま、ガチャを引いてしまっていいのか? 現状他の手段がなさそうであるが……。

 誰かに相談を、いやいや、自分で言うのもなんだが俺は純粋培養のぼっちである。二年になってから挨拶・連絡・授業以外で誰かと会話したのは数えるほどしかない。

 こんな時には必殺技がある。「聞き耳を立てる」だ。

抽選ガチャを行ってください 残り21人』

 んお、元黒板のディスプレイの表示が増えた。

「お、表示が変わったぞ」

「少しは読んでからにした方がいいぞ」

「ま、変わらんだろ。ヒデもひいちゃえよ」

「晴斗は相変わらずだな。悩んでいたのがばかみたいだ」

 お、おお。クラスのリーダー的存在の二人がさっそく動き始めた。真っ先にガチャを引いたのはスポーツ万能で剣道部で汗をかく爽やかイケメン。

 もう一方は文武両道で男女共に人気がある生徒会長である。二人とも誰にでも分け隔てなく話かけるので、俺も一度か二度くらいは会話したことがあったな。

 「おはよう」とかそんな……あれ、悲しくなってきた。

 俺たちのクラスを物語にするとしたら間違いなくあの二人のどちらかが主人公だよ。俺? 俺は漫画だったらコマの端っこに後ろ姿が小さく描かれるくらいのモブ未満だろうな。

 モブといえば、右斜め後ろで談笑する二人かなあ。人を見てモブとは失礼な奴だよ、俺ってやつは。でも本人がモブ未満だから許してくれ。

 と心の中で謝罪しつつ次に注目……というか話し声が聞こえてきたのはオタク気質な二人である。

「ふん、所詮ゲームだろ」

「ソシャゲみたいなもんなのかなあ」

「ガチャでSSSを引くかどうかだろ、こんなもん」

「一発勝負だったら嫌だなあ」

 ふむふむ。ガチャからソシャゲを連想したのか。ソシャゲをやったことがあれば、誰しもがそう思うだろうなあ。

 しっかしリセマラできそうにはないよなあ、ディープダンジョンの場合は。となると課金してガチャ引けるのかどうかとか、気になるところ。

「へえ、『神器』小狐丸こぎつねまるだってよ。ゲームっぽいなこれ」

「僕は『降臨』英雄ウプサラというものだった。誰だかも分からないな」

「検索もできないもんなあ」

「そうだね」

 主人公格の二人は神器に降臨だったらしい。

 オタクな二人も降臨と神器と聞こえてきた。

抽選ガチャを行ってください 残り2人』

 いつの間にやら元黒板ディスプレイの残り人数があと二人になっているじゃないか。

 俺が必殺技を駆使している間に状況が進み過ぎだろ。

 そろそろ俺も動くべきか……スマホを手に取ろうとしたら声がかかる。

「松井くん」

 女の子の声にビックリして椅子からずり落ちてしまった。

 ガガガガガ!

 床から鉄の棒がでてきて、俺の座っていた椅子を貫いた。

「あ、う……あ、ありがとう、た、助かったよ」

「う、ううん、松井くんがスマホ触ってなかったから、まだ(ガチャを)引いてないのかなと思って」

 こ、声をかけられなかったら大怪我をしていたぞ。ありがとう、ええと、確か山田さん。

 肩口くらいの長さの黒髪で、猫のピンでとめておでこを出している。垂れ目のタヌキ顔? というのか、間違いなく美少女の部類に入る……と思う。

 クラス内人気投票でもトップ3に入るのだとか何とか。正直、よく分からん。

 声をかけられることになれていないことが幸いした。声をかけられるだけで椅子からずり落ちるとか我ながら酷いが、結果的にそれで助かったのだから何も言うまい。

 尻もちをついたまま黒板ディスプレイを見ると残り一人になっていた。速くガチャを引け、との圧なのだろうな。

 指示に従わないとやっちまうぞ、ってか。怖すぎるだろ。

 引くよ、引けばいいんだろ。

『「真理」物知りなイルカを取得しました』

 う、うわあ……分かってた。分かってたよ。モブ未満の俺には微妙過ぎるガチャ結果が相応しい。

 いや、まだ微妙だと決めつけるには早いだろ。物知りなイルカってやつがどんな性能なのか未だ不明なのだから。


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