バイトを終えてホッと一息。今日で三月一日になったが、まだまだ寒い夜だ。
僕は兄の
タバコをダウンジャケットのポケットから取り出し、火をつけた。数時間ぶりの喫煙はやはり旨い。
「ふぅ……」
灰を落とそうと、灰皿の方に目を向けた時だった。
「えっ?」
灰皿の横に、ペンギンがちょこんと立っていた。僕のタバコの灰は地面にぼそっと落ちた。
「いやいやいや……なんで?」
疲れてるのかな。僕は目をゴシゴシとこすった。しかし、目を開けると、やはりペンギンはそこにいた。
「君……迷子?」
ペンギンは鳴かず動かず突っ立っており、つぶらな瞳を僕に向けてきた。僕は半分も吸っていないタバコを灰皿に放り込んで近付いた。
「どうしよう……」
そっとお腹に触れてみた。意外とふわふわしていて柔らかかった。抱き上げると、すんなり僕の胸に収まった。僕はそのままペンギンを抱えて兄の待つマンションへと帰宅した。
「ただいま……」
「おう、
玄関まで出迎えにきてくれた兄は目を見開いた。
「瞬、それ……ペンギン?」
「うん……喫煙所にいてさ。拾ってきちゃった」
「おい……なんでそんな面倒なことするんだよ」
「だって放っておけなかったんだもん」
兄はガシガシと髪をかいた。
「まあ、拾ってきちまったもんは仕方ないか。どうしたらいいんだ……風呂場連れて行くか?」
「そうだよね……」
風呂場のタイルの上にペンギンを置いた。ペンギンは首を左右に振った。兄はスマホを取り出して何やら調べ始めた。しばらくして、兄は言った。
「こいつは……ケープペンギンか? 胸に一本黒い線あるし」
「あっ、それっぽいね」
「ワシントン条約で取引禁止だってよ……なんでそんなのが喫煙所にいるんだよ」
「僕にもわかんないよ。動物園から逃げ出したのかな?」
「動物園までかなり距離あるだろ」
僕と兄は顔を見合わせ、同時にため息をついた。
「まあ……瞬、とりあえず夕飯食べるか?」
「うん。この子大人しいし、このまま風呂場に置いてて大丈夫そうだしね」
リビングに行くと、ふんわりといい香りがしてきた。これは……クリームシチューだ。
「俺は先に食ったよ。今温め直すな」
僕は椅子に座ってケープペンギンのことをスマホで調べ始めた。どうやら絶滅危惧種らしい。イワシやイカ、タコを食べるのだとか。
「兄さん、あの子お腹空いてないかなぁ」
「わかんねぇよ。どのみちうちにはやれるようなもんないし」
「だよねぇ」
兄はテーブルの上にクリームシチューとロールパンを置いてくれた。ニンジンは星の形にくり抜いてあった。気分が乗った時はそうしてくれるのだ。
「ん……美味しい。ありがとう兄さん」
「おう。さて、あのペンギンどうするかだなぁ……」
僕と兄が考えついたのは、動物園か警察か保健所。けれど、もう夜の十時を過ぎていた。僕は言った。
「警察なら開いてるけどさ、あの子を保護できるスペースないと思うし、やっぱり動物園が一番だと思うんだ」
「俺も同感。一晩だけ置いといて、朝になったら電話してみるか」
夕飯を食べ終えて、ペンギンの様子を見に行った。ペンギンはぺちぺちと歩いており、僕を黒い瞳で見つめてきた。
「ふふっ……可愛いなぁ」
父が苦手だったのでペットを飼ったことはなかったが、生き物は何でも好きだ。ふわふわだとなおよし。僕はしゃがんで、そっとペンギンの頭に触れた。
「よしよし……可愛いね、可愛いね」
兄もやってきて、こんなことを言った。
「今日は風呂入れねぇな」
「そうだね。まあ、そんなに汗かいてないし。我慢できるよ」
僕はジャージに着替えてベッドに寝転んだ。スマホを見ると、日付は変わって三月二日だ。少しして兄も入ってきて、腕枕をしてもらった。
「兄さん、あの子うちで飼っちゃダメかな……可愛いし」
「このマンションはペット禁止だ。それに、エサどうすんだよ。軽く調べたけど月に十万円以上かかるみたいだぞ」
「はぁ……そっかぁ。ずっと一緒にいられたらいいのになぁ」
バイトで疲れていたのもあって、眠気はすぐにやってきた。兄の体温と匂い
を感じながら、意識を手放した。
ぐわん……ぐわん……。
頭の中がかき混ぜられるような奇妙な感覚に襲われ、僕ははっと目を開けた。
僕は玄関に立っていて、腕の中にはペンギンがいた。
「へっ?」
僕の正面には兄がいて、こめかみに手をあてていた。
「あれ? 俺……ベッドで寝てたよな?」
「僕もそのはずだけど……」
兄はズボンのポケットからスマホを取り出した。
「三月一日……?」
僕もスマホの画面を覗かせてもらった。確かに表示は三月一日の夜十時になっていた。
ペンギンを風呂場に置き、僕も自分のスマホを見た。確かに三月一日だ。リビングに行くと、兄はテレビをつけていた。流れていたのはバラエティ番組だった。兄は言った。
「これ、金曜の番組だ……確かに今日は三月一日みたいだな」
「でも、僕たち寝たよね?」
「うん……ぐっすり朝まで寝た感覚ではあるな。起きた時、頭の中変な感じしたけど」
「僕もだよ」
それから兄はキッチンへ行って鍋のフタを取った。
「クリームシチュー、残ってる……」
「じゃあ、僕たちって……」
僕は兄にぴったりとくっついて手を握った。兄は震える声で言った。
「記憶あるまま、過去に戻ったみたいだな……」
言葉にされてしまうと、肩がすくみあがった。それでも、兄と一緒だということは救いか。
フェェェェェ!
風呂場の方から音が聞こえてきて、僕はひっと小さく悲鳴をあげた。兄はきゅっと唇を結んで歩き出した。慌てて僕もその後を追った。
「おい……ペンギン……お前が何かしたのか……」
兄が低い声で凄んだが、ペンギンはパタパタと羽を動かしただけだった。
「兄さん、まだそうと決まったわけじゃ」
「どう考えてもこいつのせいだろ、瞬がこいつと帰ってきたところからおかしくなってるんだから」
仮にそうだとしても、ペンギンに酷いことをしてほしくない。
「兄さん、とにかくもう一度寝てみない? 一度きりかもしれないし」
「ああ……そうだな」
「それに僕、お腹空いてるみたい……」
「クリームシチューしかないけど、食うか?」
「うん……」
また、星の形のニンジンが入ったクリームシチューを食べた。ペンギンはこわくて見に行けず、着替えてすぐベッドに入った。兄も来てくれて、僕はぎゅっと抱きついた。
「兄さん……僕たち、大丈夫だよね?」
「わかんねぇけど……とにかく寝よう」
壁にかかっている時計の秒針の音がやけに大きく聞こえてきた。僕は兄の胸に耳をあて、鼓動を感じて気を紛らせた。そうして、眠りが訪れたのだが。
ぐわん……ぐわん……。
目を開けると、僕はペンギンを抱いて玄関に立っていた。
「兄さんっ!」
「クソっ……」
僕は風呂場にペンギンを置いた。兄はテレビと鍋の中身を確認して舌打ちをした。
「また戻ったか」
「どうしよう、兄さん」
「絶対ペンギンのせいだって。瞬、元の所に返しに行こう」
「可哀想だけど、そうするしかないよね」
僕がペンギンを抱きかかえ、兄がドアを開けようとしたのだが。
「なんだ……重い……」
「開かないの?」
「ダメだ、びくともしない」
僕もドアに力を込めたが、巨人に押さえつけられたかのように重かった。ということは、僕たちは、過去にさかのぼっただけでなく、この部屋に閉じ込められたのだ。ここは九階。どうしたって窓からも出られなかった。
「兄さん、誰か呼んで外から開けてもらうとかは?」
「となると……父さんに電話しようか」
実家はここから電車で一時間の距離。まだ間に合うだろう。兄が電話をかけたのだが、出ないようだった。続けてメッセージも送ったが、既読はつかなかった。
「瞬、片っ端から知り合いあたれ。俺もそうする」
「わかった」
大学の友人、バイト先の仲間、いずれもダメだった。電話しても虚しくコール音が鳴るだけ。メッセージにも反応なし。兄の方が知人は多いので、僕より時間をかけていたのだが、無駄に終わった。
「瞬……とりあえず、状況を整理しようか」
「うん。僕たちは三月一日に戻ってる。部屋からは出れない。他の人とも連絡が取れない」
「いっそ警察か? こんな話信じてもらえるとは思えないけど」
兄は電話をかけた。僕はすがるように手を組み合わせた。
「ダメだ……出ない」
フェッ、フェッ、フェェェェェ!
また、ペンギンが鳴いた。
兄はスマホを乱雑に床に放り投げて風呂場に乗り込んだ。
「おいペンギン! 戻せ! 戻せよ!」
「兄さん、やめて!」
僕は兄の胴体にしがみついた。そうでもしないと殴りかかりそうだったから。
「チッ……もうやけだ、酒飲むぞ酒」
「ええ……」
兄は酒癖が悪い。あまり飲んでほしくないのだ。けれど、そうも言っていられない状況か。
クリームシチューを食べる僕の目の前で、兄は缶ビールを直接ごくごくと飲んだ。兄は言った。
「ループしてる、ってことだよな」
「間違いないと思う。何か行動を変えないと。今日は寝ずに朝まで迎えてみる?」
「そうしてみよう」
僕たちはトランプを取り出し、ダイニングテーブルで七並べを始めた。しかし、途中で兄が突っ伏して寝てしまった。揺り動かしたがダメだった。そして、僕も限界がきてしまい、椅子に座ったまま寝てしまった。
ぐわん……ぐわん……。
また、僕は玄関でペンギンを抱いていた。兄は絶叫した。
「あー! 何だよ! 何なんだよ!」
「兄さん、落ち着いてっ」
ペンギンは呑気なものだ。風呂場に置くと歩き回り、時々小首を傾げた。
「瞬、試せることは全部試すぞ」
「そうだね。何とかこのループから抜けないと」
そして、僕たちの挑戦が始まった。
まず試みたのが部屋からの脱出だ。
マンションのベランダからは、隣の部屋に移れる薄い壁があった。それはすぐに破れるはずなのに、体格の良い兄が体当たりしても弾き返されてしまった。
そして、緊急時の避難ハシゴを使ってみようと鉄板に手をかけたのだが、二人がかりでやっても開かなかった。
そうこうしているうちに気付いたのだが、ベランダから見下ろしても人が一人も歩いていなかった。車も走っていなかった。他の建物には電気がついておらず、すっかり静まり返っていた。
兄はイライラと部屋をうろつきながらタバコを吸った。
「あーもう……どうすりゃいいんだよ……」
「僕、今日はシチュー食べないでみるね。違う行動してみよう」
フェェェ、フェェェ……。
またペンギンの鳴く声がした。僕は風呂場に行ってペンギンのお腹をつんつんとつついた。
「ねぇ……これは本当に君のせい? それとも他に何か原因があるのかな……」
ペンギンは何も答えなかった。僕はふうっとため息をつき、冷蔵庫をあさった。お腹は空いているのだ。ゼリーがあったのでそれを食べた。僕は兄に尋ねた。
「ねえ、兄さん。ペンギンに何か食べさせてみない?」
「今日に限ってあまり食い物無いんだよな。ロールパンくらいだよ」
ものは試しだ。僕はロールパンを千切ってペンギンの前にちらつかせてみた。しかし、嫌そうに顔をそむけてぺちぺちと離れてしまった。
「ダメか……」
リビングに戻ると、兄がソファで寝ていた。
「兄さん、起きてよ兄さん」
強めに一発殴ったが、兄は電池が切れた玩具のように静かだった。そして、僕はへなへなとその場に崩れ落ちた。強烈な眠気が襲ってきたのだ。
それから……何度ループしたのかわからない。
僕がペンギンを抱っこして玄関に立っており、兄が出迎えているというのは共通。そして、何をやっても朝まで我慢できずに寝てしまう。
SNSのアカウントを作って助けを呼びかけることもしてみたが、まるで反応なし。とにかく色んな人をフォローしてみるのだが、返ってくることはないし、メッセージも無視、というか、そもそも見えているのだろうか。
掲示板サイトに書き込みをしてみると、それ自体は反映され、他の人の新しい書き込みも読めるのだが、誰も構ってくれることはなかった。
とうとう動画を作って投稿までしてみたが、再生数はゼロ。段々、僕も兄も消耗してきた。
「瞬……どうせ何やっても無駄だ。映画でも観るか」
「そうだね……」
兄の趣味で、DVDは豊富に揃っていた。その中から、なるべく明るい内容のものを流すことにした。二人でソファに深く座り、ストーリーに没頭しようとしたのだが……。
フェッ! フェッ! フェェェェェ!
「あー!」
兄は叫んでキッチンに行き、包丁を取り出した。
「兄さん! 何するつもり!」
「殺す! あのペンギン殺す!」
「ダメだよ! もっと大変なことになったらどうするの!」
とにかく兄を落ち着かせなければならない。僕は包丁を持った兄の手を握った。
「兄さん、何かいい手が浮かぶまで、いっそこの状況を楽しもう。ねっ?」
「うん……悪い。とりあえず映画観るか」
僕は兄から包丁を取り上げて元の場所に戻した。そして、映画の続きを観ていたのだが、途中で眠ってしまった。
何度かやっているうちに、僕たちが起きていられる限界は、深夜の一時くらいだということがわかってきた。
巻き戻るのは、決まって三月一日の夜十時。そこからの三時間を繰り返しているのだ。
僕も兄も、何かを試そうという気がなくなり、ベッドでゴロゴロと無為な時間を過ごしていた。
一緒にいるのが兄でよかった。ちょっと短気なところもあるけど、僕の大好きな人だし、不安な時は何も言わなくても僕を抱きしめてくれた。
「ねぇ……兄さん」
ベッドで横たわり、兄の髪を撫でながら、僕は語りかけた。
「なんだ……瞬」
「僕、ずっとこのままでもいいかも。諦めた方が気楽だよ」
「俺は嫌だよ。もう一度、考え直してみるか……」
二人で一回目の行動を振り返った。僕がペンギンを連れて帰って。風呂場に置いて。クリームシチューを食べて。着替えて寝て。
「おい、瞬。思い出してきたぞ」
「何を?」
「瞬さ、ペンギンとずっと一緒にいたい、みたいなこと言わなかったか?」
「……言ったかも」
「お前のせいじゃねぇか!」
兄は僕の頰をつねってきた。
「痛い痛いっ!」
「どうにかしろ、瞬!」
「僕だってわかんないんだってば!」
「瞬が元凶なら瞬を殺せば抜けられるか……?」
「なんでそう発想が物騒なのかな!」
やられっぱなしは嫌だ。僕は兄の股間を膝で蹴った。
「ぐっ……」
兄は青い顔をして一瞬ひるんだが、起き上がって拳をぶつけてきた。
そこからはもうメチャクチャだった。兄弟喧嘩なら何度もしていたけど、その日が一番激しかったに違いない。僕は口の中が切れて鉄の味がしたし、兄の首や肩には僕の噛み痕がついた。
「はぁ、はぁ……瞬、一旦やめよう……」
「そうだね……」
殴られた痛みで頭はチカチカするし、興奮して息も絶え絶えだ。ドサリとベッドに仰向けになり、兄と手を繋いだ。
「兄さん、ごめんね」
「ん……」
そして、意識が途絶えた。
ペンギンを抱いて玄関に立つ僕、正面に兄。また戻ってきた。身体の痛みはなく、兄に傷痕はなかった。兄が言った。
「昨日……って言っていいかわかんないけど、とにかくあの時はごめん」
「うん、いいって」
風呂場にペンギンを連れて行き、頭を撫でた。僕はふと思いついた。
「ねえ、兄さん。この子のこと、楽しませてないよね。バスタブに水入れて泳がせるのはどうかな?」
「無駄だと思うけど、気晴らしにはなるか」
十五分ほどして、水がたまった。慎重にペンギンを入れると、尻尾をプルプルさせて泳ぎ始めた。
「あはっ、兄さん、可愛いね」
「狭いだろうけどな」
ペンギンは顔を水につけ、それから首をあげて震わせたので、僕と兄に水がかかった。
「冷たっ!」
兄は飛び退いた。
「瞬、もういいんじゃねぇか? 水の中で粗相されても嫌だし」
「そうだね、終わろうか」
ペンギンをタイルの上に戻すと、黒い眼差しをじいっと僕に向けてきた。すがるような思いで、僕はペンギンに話しかけた。
「あのさ……ペンギンくん。何でこうなったのか、わかんないけどさ。普通の家庭で君のことは飼えないんだ。ずっと一緒にはいられない。君だって、もっと広いところで泳ぎたいよね。何とかならないかな?」
すると、ペンギンは鳴いた。
フェッ! フェェェェェ! フェェェェェ! フェェェェェ!
「うるせぇなぁ……」
兄は耳をふさいでしかめっ面をした。
「はぁ……とりあえずお腹空いたし、食べるよ僕」
何回連続で食べたかわからないクリームシチュー。美味しいけれど、さすがに飽きてきた。終わってタバコを吸って、ベッドに転がった。洗い物を終えた兄も来た。
「瞬。このループ抜けたらどうするかとか、そういうの考えないか? 希望を捨てたらダメだと思う」
「まずはクリームシチュー以外のものを食べたいかな」
「ははっ、そうだな……」
三月二日は土曜日。僕も兄も予定がない。どこかに遊びに行ってもいいかもしれない。それを口に出そうとしたのだが、睡魔が襲い、ぼんやりとしてしまった。
そして……。
「瞬! 朝だ! 朝だぞ!」
兄が僕を揺り動かしていた。カーテンは開け放たれ、まぶしい光が降り注いでいた。
「ほ、本当だ! あの子は?」
慌てて風呂場に行くと、ペンギンはいなくなっていた。念の為に部屋中を探し回ったが、見つからなかった。
「瞬! ドア開くぞ! 出れる!」
「やったぁ!」
僕と兄はぎゅっと抱きしめあった。
それから、数時間後。僕たちは動物園に来ていた。
「えーと、ペンギン館はこの向こうだな……」
兄がパンフレットを見ながら歩いているのに僕はついていった。小さな建物の中に入ると、ガラス越しにたくさんのペンギンがいるのが見えた。
「わあっ、いっぱいいるね、兄さん」
「ペンギンは群れで暮らす生き物だからな」
広いプールの中を、空を飛ぶように泳ぎ回るペンギンたち。それはとても優雅で、目が釘付けになった。
「瞬……やっぱりペンギンは遠くから見るので十分だな」
「僕もそう思う」
「それでさ、見てて思ったんだけどさ」
「何?」
「ループから抜けられたのって、ペンギン泳がせたからじゃないか? だってほら、ひっくり返すと」
「どうなんだろう……わかんないね……」
そして、フードコートに行ってラーメンを食べた。周りに他の人がいる、という状況にも安心できたし、とても美味しく頂いた。
「なぁ、瞬」
「何? 兄さん」
「もう二度と生き物連れて帰ってくるなよ」
「わかってるって。僕もあんな思いこりごり」
最後に僕たちは土産物コーナーに行き、ケープペンギンのぬいぐるみを買ってもらった。あれは散々な経験だったけど、やっぱりペンギンは可愛いのだ。