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ペンギンループ
ペンギンループ
惣山沙樹
SF時間SF
2025年03月29日
公開日
7,481字
連載中
ペンギンSFアンソロジー参加作品。
弟がペンギンを拾ってきて兄と奮闘する話。

ペンギンループ

 バイトを終えてホッと一息。今日で三月一日になったが、まだまだ寒い夜だ。

 僕は兄の伊織いおりと一緒に暮らしている。今日の夕飯は兄の担当だ。それを心待ちにしつつも、兄の部屋に帰る前に一服したくなって、駅前の喫煙所に寄った。雨が降っていなくて良かった。ここは屋根がないから。

 タバコをダウンジャケットのポケットから取り出し、火をつけた。数時間ぶりの喫煙はやはり旨い。


「ふぅ……」


 灰を落とそうと、灰皿の方に目を向けた時だった。


「えっ?」


 灰皿の横に、ペンギンがちょこんと立っていた。僕のタバコの灰は地面にぼそっと落ちた。


「いやいやいや……なんで?」


 疲れてるのかな。僕は目をゴシゴシとこすった。しかし、目を開けると、やはりペンギンはそこにいた。


「君……迷子?」


 ペンギンは鳴かず動かず突っ立っており、つぶらな瞳を僕に向けてきた。僕は半分も吸っていないタバコを灰皿に放り込んで近付いた。


「どうしよう……」


 そっとお腹に触れてみた。意外とふわふわしていて柔らかかった。抱き上げると、すんなり僕の胸に収まった。僕はそのままペンギンを抱えて兄の待つマンションへと帰宅した。


「ただいま……」

「おう、しゅん、今日の夕飯は……って、えっ?」


 玄関まで出迎えにきてくれた兄は目を見開いた。


「瞬、それ……ペンギン?」

「うん……喫煙所にいてさ。拾ってきちゃった」

「おい……なんでそんな面倒なことするんだよ」

「だって放っておけなかったんだもん」


 兄はガシガシと髪をかいた。


「まあ、拾ってきちまったもんは仕方ないか。どうしたらいいんだ……風呂場連れて行くか?」

「そうだよね……」


 風呂場のタイルの上にペンギンを置いた。ペンギンは首を左右に振った。兄はスマホを取り出して何やら調べ始めた。しばらくして、兄は言った。


「こいつは……ケープペンギンか? 胸に一本黒い線あるし」

「あっ、それっぽいね」

「ワシントン条約で取引禁止だってよ……なんでそんなのが喫煙所にいるんだよ」

「僕にもわかんないよ。動物園から逃げ出したのかな?」

「動物園までかなり距離あるだろ」


 僕と兄は顔を見合わせ、同時にため息をついた。


「まあ……瞬、とりあえず夕飯食べるか?」

「うん。この子大人しいし、このまま風呂場に置いてて大丈夫そうだしね」


 リビングに行くと、ふんわりといい香りがしてきた。これは……クリームシチューだ。


「俺は先に食ったよ。今温め直すな」


 僕は椅子に座ってケープペンギンのことをスマホで調べ始めた。どうやら絶滅危惧種らしい。イワシやイカ、タコを食べるのだとか。


「兄さん、あの子お腹空いてないかなぁ」

「わかんねぇよ。どのみちうちにはやれるようなもんないし」

「だよねぇ」


 兄はテーブルの上にクリームシチューとロールパンを置いてくれた。ニンジンは星の形にくり抜いてあった。気分が乗った時はそうしてくれるのだ。


「ん……美味しい。ありがとう兄さん」

「おう。さて、あのペンギンどうするかだなぁ……」


 僕と兄が考えついたのは、動物園か警察か保健所。けれど、もう夜の十時を過ぎていた。僕は言った。


「警察なら開いてるけどさ、あの子を保護できるスペースないと思うし、やっぱり動物園が一番だと思うんだ」

「俺も同感。一晩だけ置いといて、朝になったら電話してみるか」


 夕飯を食べ終えて、ペンギンの様子を見に行った。ペンギンはぺちぺちと歩いており、僕を黒い瞳で見つめてきた。


「ふふっ……可愛いなぁ」


 父が苦手だったのでペットを飼ったことはなかったが、生き物は何でも好きだ。ふわふわだとなおよし。僕はしゃがんで、そっとペンギンの頭に触れた。


「よしよし……可愛いね、可愛いね」


 兄もやってきて、こんなことを言った。


「今日は風呂入れねぇな」

「そうだね。まあ、そんなに汗かいてないし。我慢できるよ」


 僕はジャージに着替えてベッドに寝転んだ。スマホを見ると、日付は変わって三月二日だ。少しして兄も入ってきて、腕枕をしてもらった。


「兄さん、あの子うちで飼っちゃダメかな……可愛いし」

「このマンションはペット禁止だ。それに、エサどうすんだよ。軽く調べたけど月に十万円以上かかるみたいだぞ」

「はぁ……そっかぁ。ずっと一緒にいられたらいいのになぁ」


 バイトで疲れていたのもあって、眠気はすぐにやってきた。兄の体温と匂い

を感じながら、意識を手放した。


 ぐわん……ぐわん……。


 頭の中がかき混ぜられるような奇妙な感覚に襲われ、僕ははっと目を開けた。

 僕は玄関に立っていて、腕の中にはペンギンがいた。


「へっ?」


 僕の正面には兄がいて、こめかみに手をあてていた。


「あれ? 俺……ベッドで寝てたよな?」

「僕もそのはずだけど……」


 兄はズボンのポケットからスマホを取り出した。


「三月一日……?」


 僕もスマホの画面を覗かせてもらった。確かに表示は三月一日の夜十時になっていた。


 ペンギンを風呂場に置き、僕も自分のスマホを見た。確かに三月一日だ。リビングに行くと、兄はテレビをつけていた。流れていたのはバラエティ番組だった。兄は言った。


「これ、金曜の番組だ……確かに今日は三月一日みたいだな」

「でも、僕たち寝たよね?」

「うん……ぐっすり朝まで寝た感覚ではあるな。起きた時、頭の中変な感じしたけど」

「僕もだよ」


 それから兄はキッチンへ行って鍋のフタを取った。


「クリームシチュー、残ってる……」

「じゃあ、僕たちって……」


 僕は兄にぴったりとくっついて手を握った。兄は震える声で言った。


「記憶あるまま、過去に戻ったみたいだな……」


 言葉にされてしまうと、肩がすくみあがった。それでも、兄と一緒だということは救いか。

 フェェェェェ!

 風呂場の方から音が聞こえてきて、僕はひっと小さく悲鳴をあげた。兄はきゅっと唇を結んで歩き出した。慌てて僕もその後を追った。


「おい……ペンギン……お前が何かしたのか……」


 兄が低い声で凄んだが、ペンギンはパタパタと羽を動かしただけだった。


「兄さん、まだそうと決まったわけじゃ」

「どう考えてもこいつのせいだろ、瞬がこいつと帰ってきたところからおかしくなってるんだから」


 仮にそうだとしても、ペンギンに酷いことをしてほしくない。


「兄さん、とにかくもう一度寝てみない? 一度きりかもしれないし」

「ああ……そうだな」

「それに僕、お腹空いてるみたい……」

「クリームシチューしかないけど、食うか?」

「うん……」


 また、星の形のニンジンが入ったクリームシチューを食べた。ペンギンはこわくて見に行けず、着替えてすぐベッドに入った。兄も来てくれて、僕はぎゅっと抱きついた。


「兄さん……僕たち、大丈夫だよね?」

「わかんねぇけど……とにかく寝よう」


 壁にかかっている時計の秒針の音がやけに大きく聞こえてきた。僕は兄の胸に耳をあて、鼓動を感じて気を紛らせた。そうして、眠りが訪れたのだが。

 ぐわん……ぐわん……。

 目を開けると、僕はペンギンを抱いて玄関に立っていた。


「兄さんっ!」

「クソっ……」


 僕は風呂場にペンギンを置いた。兄はテレビと鍋の中身を確認して舌打ちをした。


「また戻ったか」

「どうしよう、兄さん」

「絶対ペンギンのせいだって。瞬、元の所に返しに行こう」

「可哀想だけど、そうするしかないよね」


 僕がペンギンを抱きかかえ、兄がドアを開けようとしたのだが。


「なんだ……重い……」

「開かないの?」

「ダメだ、びくともしない」


 僕もドアに力を込めたが、巨人に押さえつけられたかのように重かった。ということは、僕たちは、過去にさかのぼっただけでなく、この部屋に閉じ込められたのだ。ここは九階。どうしたって窓からも出られなかった。


「兄さん、誰か呼んで外から開けてもらうとかは?」

「となると……父さんに電話しようか」


 実家はここから電車で一時間の距離。まだ間に合うだろう。兄が電話をかけたのだが、出ないようだった。続けてメッセージも送ったが、既読はつかなかった。


「瞬、片っ端から知り合いあたれ。俺もそうする」

「わかった」


 大学の友人、バイト先の仲間、いずれもダメだった。電話しても虚しくコール音が鳴るだけ。メッセージにも反応なし。兄の方が知人は多いので、僕より時間をかけていたのだが、無駄に終わった。


「瞬……とりあえず、状況を整理しようか」

「うん。僕たちは三月一日に戻ってる。部屋からは出れない。他の人とも連絡が取れない」

「いっそ警察か? こんな話信じてもらえるとは思えないけど」


 兄は電話をかけた。僕はすがるように手を組み合わせた。


「ダメだ……出ない」


 フェッ、フェッ、フェェェェェ!

 また、ペンギンが鳴いた。

 兄はスマホを乱雑に床に放り投げて風呂場に乗り込んだ。


「おいペンギン! 戻せ! 戻せよ!」

「兄さん、やめて!」


 僕は兄の胴体にしがみついた。そうでもしないと殴りかかりそうだったから。


「チッ……もうやけだ、酒飲むぞ酒」

「ええ……」


 兄は酒癖が悪い。あまり飲んでほしくないのだ。けれど、そうも言っていられない状況か。

 クリームシチューを食べる僕の目の前で、兄は缶ビールを直接ごくごくと飲んだ。兄は言った。


「ループしてる、ってことだよな」

「間違いないと思う。何か行動を変えないと。今日は寝ずに朝まで迎えてみる?」

「そうしてみよう」


 僕たちはトランプを取り出し、ダイニングテーブルで七並べを始めた。しかし、途中で兄が突っ伏して寝てしまった。揺り動かしたがダメだった。そして、僕も限界がきてしまい、椅子に座ったまま寝てしまった。

 ぐわん……ぐわん……。

 また、僕は玄関でペンギンを抱いていた。兄は絶叫した。


「あー! 何だよ! 何なんだよ!」

「兄さん、落ち着いてっ」


 ペンギンは呑気なものだ。風呂場に置くと歩き回り、時々小首を傾げた。


「瞬、試せることは全部試すぞ」

「そうだね。何とかこのループから抜けないと」


 そして、僕たちの挑戦が始まった。


 まず試みたのが部屋からの脱出だ。

 マンションのベランダからは、隣の部屋に移れる薄い壁があった。それはすぐに破れるはずなのに、体格の良い兄が体当たりしても弾き返されてしまった。

 そして、緊急時の避難ハシゴを使ってみようと鉄板に手をかけたのだが、二人がかりでやっても開かなかった。

 そうこうしているうちに気付いたのだが、ベランダから見下ろしても人が一人も歩いていなかった。車も走っていなかった。他の建物には電気がついておらず、すっかり静まり返っていた。

 兄はイライラと部屋をうろつきながらタバコを吸った。


「あーもう……どうすりゃいいんだよ……」

「僕、今日はシチュー食べないでみるね。違う行動してみよう」


 フェェェ、フェェェ……。

 またペンギンの鳴く声がした。僕は風呂場に行ってペンギンのお腹をつんつんとつついた。


「ねぇ……これは本当に君のせい? それとも他に何か原因があるのかな……」


 ペンギンは何も答えなかった。僕はふうっとため息をつき、冷蔵庫をあさった。お腹は空いているのだ。ゼリーがあったのでそれを食べた。僕は兄に尋ねた。


「ねえ、兄さん。ペンギンに何か食べさせてみない?」

「今日に限ってあまり食い物無いんだよな。ロールパンくらいだよ」


 ものは試しだ。僕はロールパンを千切ってペンギンの前にちらつかせてみた。しかし、嫌そうに顔をそむけてぺちぺちと離れてしまった。


「ダメか……」


 リビングに戻ると、兄がソファで寝ていた。


「兄さん、起きてよ兄さん」


 強めに一発殴ったが、兄は電池が切れた玩具のように静かだった。そして、僕はへなへなとその場に崩れ落ちた。強烈な眠気が襲ってきたのだ。

 それから……何度ループしたのかわからない。

 僕がペンギンを抱っこして玄関に立っており、兄が出迎えているというのは共通。そして、何をやっても朝まで我慢できずに寝てしまう。

 SNSのアカウントを作って助けを呼びかけることもしてみたが、まるで反応なし。とにかく色んな人をフォローしてみるのだが、返ってくることはないし、メッセージも無視、というか、そもそも見えているのだろうか。

 掲示板サイトに書き込みをしてみると、それ自体は反映され、他の人の新しい書き込みも読めるのだが、誰も構ってくれることはなかった。

 とうとう動画を作って投稿までしてみたが、再生数はゼロ。段々、僕も兄も消耗してきた。


「瞬……どうせ何やっても無駄だ。映画でも観るか」

「そうだね……」


 兄の趣味で、DVDは豊富に揃っていた。その中から、なるべく明るい内容のものを流すことにした。二人でソファに深く座り、ストーリーに没頭しようとしたのだが……。

 フェッ! フェッ! フェェェェェ!


「あー!」


 兄は叫んでキッチンに行き、包丁を取り出した。


「兄さん! 何するつもり!」

「殺す! あのペンギン殺す!」

「ダメだよ! もっと大変なことになったらどうするの!」


 とにかく兄を落ち着かせなければならない。僕は包丁を持った兄の手を握った。


「兄さん、何かいい手が浮かぶまで、いっそこの状況を楽しもう。ねっ?」

「うん……悪い。とりあえず映画観るか」


 僕は兄から包丁を取り上げて元の場所に戻した。そして、映画の続きを観ていたのだが、途中で眠ってしまった。

 何度かやっているうちに、僕たちが起きていられる限界は、深夜の一時くらいだということがわかってきた。

 巻き戻るのは、決まって三月一日の夜十時。そこからの三時間を繰り返しているのだ。

 僕も兄も、何かを試そうという気がなくなり、ベッドでゴロゴロと無為な時間を過ごしていた。

 一緒にいるのが兄でよかった。ちょっと短気なところもあるけど、僕の大好きな人だし、不安な時は何も言わなくても僕を抱きしめてくれた。


「ねぇ……兄さん」


 ベッドで横たわり、兄の髪を撫でながら、僕は語りかけた。


「なんだ……瞬」

「僕、ずっとこのままでもいいかも。諦めた方が気楽だよ」

「俺は嫌だよ。もう一度、考え直してみるか……」


 二人で一回目の行動を振り返った。僕がペンギンを連れて帰って。風呂場に置いて。クリームシチューを食べて。着替えて寝て。


「おい、瞬。思い出してきたぞ」

「何を?」

「瞬さ、ペンギンとずっと一緒にいたい、みたいなこと言わなかったか?」

「……言ったかも」

「お前のせいじゃねぇか!」


 兄は僕の頰をつねってきた。


「痛い痛いっ!」

「どうにかしろ、瞬!」

「僕だってわかんないんだってば!」

「瞬が元凶なら瞬を殺せば抜けられるか……?」

「なんでそう発想が物騒なのかな!」


 やられっぱなしは嫌だ。僕は兄の股間を膝で蹴った。


「ぐっ……」


 兄は青い顔をして一瞬ひるんだが、起き上がって拳をぶつけてきた。

 そこからはもうメチャクチャだった。兄弟喧嘩なら何度もしていたけど、その日が一番激しかったに違いない。僕は口の中が切れて鉄の味がしたし、兄の首や肩には僕の噛み痕がついた。


「はぁ、はぁ……瞬、一旦やめよう……」

「そうだね……」


 殴られた痛みで頭はチカチカするし、興奮して息も絶え絶えだ。ドサリとベッドに仰向けになり、兄と手を繋いだ。


「兄さん、ごめんね」

「ん……」


 そして、意識が途絶えた。


 ペンギンを抱いて玄関に立つ僕、正面に兄。また戻ってきた。身体の痛みはなく、兄に傷痕はなかった。兄が言った。


「昨日……って言っていいかわかんないけど、とにかくあの時はごめん」

「うん、いいって」


 風呂場にペンギンを連れて行き、頭を撫でた。僕はふと思いついた。


「ねえ、兄さん。この子のこと、楽しませてないよね。バスタブに水入れて泳がせるのはどうかな?」

「無駄だと思うけど、気晴らしにはなるか」


 十五分ほどして、水がたまった。慎重にペンギンを入れると、尻尾をプルプルさせて泳ぎ始めた。


「あはっ、兄さん、可愛いね」

「狭いだろうけどな」


 ペンギンは顔を水につけ、それから首をあげて震わせたので、僕と兄に水がかかった。


「冷たっ!」


 兄は飛び退いた。


「瞬、もういいんじゃねぇか? 水の中で粗相されても嫌だし」

「そうだね、終わろうか」


 ペンギンをタイルの上に戻すと、黒い眼差しをじいっと僕に向けてきた。すがるような思いで、僕はペンギンに話しかけた。


「あのさ……ペンギンくん。何でこうなったのか、わかんないけどさ。普通の家庭で君のことは飼えないんだ。ずっと一緒にはいられない。君だって、もっと広いところで泳ぎたいよね。何とかならないかな?」


 すると、ペンギンは鳴いた。

 フェッ! フェェェェェ! フェェェェェ! フェェェェェ!


「うるせぇなぁ……」


 兄は耳をふさいでしかめっ面をした。


「はぁ……とりあえずお腹空いたし、食べるよ僕」


 何回連続で食べたかわからないクリームシチュー。美味しいけれど、さすがに飽きてきた。終わってタバコを吸って、ベッドに転がった。洗い物を終えた兄も来た。


「瞬。このループ抜けたらどうするかとか、そういうの考えないか? 希望を捨てたらダメだと思う」

「まずはクリームシチュー以外のものを食べたいかな」

「ははっ、そうだな……」


 三月二日は土曜日。僕も兄も予定がない。どこかに遊びに行ってもいいかもしれない。それを口に出そうとしたのだが、睡魔が襲い、ぼんやりとしてしまった。

 そして……。


「瞬! 朝だ! 朝だぞ!」


 兄が僕を揺り動かしていた。カーテンは開け放たれ、まぶしい光が降り注いでいた。


「ほ、本当だ! あの子は?」


 慌てて風呂場に行くと、ペンギンはいなくなっていた。念の為に部屋中を探し回ったが、見つからなかった。


「瞬! ドア開くぞ! 出れる!」

「やったぁ!」


 僕と兄はぎゅっと抱きしめあった。


 それから、数時間後。僕たちは動物園に来ていた。


「えーと、ペンギン館はこの向こうだな……」


 兄がパンフレットを見ながら歩いているのに僕はついていった。小さな建物の中に入ると、ガラス越しにたくさんのペンギンがいるのが見えた。


「わあっ、いっぱいいるね、兄さん」

「ペンギンは群れで暮らす生き物だからな」


 広いプールの中を、空を飛ぶように泳ぎ回るペンギンたち。それはとても優雅で、目が釘付けになった。


「瞬……やっぱりペンギンは遠くから見るので十分だな」

「僕もそう思う」

「それでさ、見てて思ったんだけどさ」

「何?」

「ループから抜けられたのって、ペンギン泳がせたからじゃないか? だってほら、ひっくり返すと」

「どうなんだろう……わかんないね……」


 そして、フードコートに行ってラーメンを食べた。周りに他の人がいる、という状況にも安心できたし、とても美味しく頂いた。


「なぁ、瞬」

「何? 兄さん」

「もう二度と生き物連れて帰ってくるなよ」

「わかってるって。僕もあんな思いこりごり」


 最後に僕たちは土産物コーナーに行き、ケープペンギンのぬいぐるみを買ってもらった。あれは散々な経験だったけど、やっぱりペンギンは可愛いのだ。





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