至る所に甲冑の騎士がいて、イザークだけでなくハイドロイドやマホーンも身体検査を受けて進む。
最初のボディチェックの場所で、マホーンは腰に下げていた剣を預けて今は丸腰だ。
特に乱暴なチェックでもなく、むしろイザークはキラキラした目で扱われた。何か凄い期待をされているとしたら、気持ちは重い。
和食をもたらしたサトウ導師は、味噌や醤油などの作り方の知識があったはずだが、イザークは自称料理好きの子供だ。何か特筆すべき知識などない。
がっかりされるんだろうなぁと、足取りも重く進むと応接間に通された。
そこには三人の男性がいた。とりあえずイザークが想定していた牛魔王のようなのはいなかった。
「あっはー!そちらが使徒様?!どーもどーも座ってー!アストリッド国の宰相、ジルヴェスター・スッゴゥルエラーインディスでーす」
(今度はすっごーいえらいんです……)
えらくチャラい声掛けをしてきたのが、まさかの宰相だった。白い軍服はハイドロイドと同じだが、中のシャツはアロハと見まごう派手柄を着ている。
40代になる前くらいに見えるが、アッシュゴールドの髪色でやはり背が高い。
度肝を抜かれて、この場所が王宮だと言うことを一瞬忘れた――そのイザークの背後から声がした。
「かわゆいなぁ!ほんとに可愛い!すんごいちっちゃいけど9歳くらい?」
イザークはムカッとした。小学校高学年で170を超えていたイザークは、お世辞にも小さいと言われたことはないし、9歳児に見えるとはかなり侮辱だ。
挙句に、突然顔にあたるジョリジョリ感――久しく味わってないが、過去に祖父にやられた頬ずりである。プラス、はぁはぁという呼吸音。
「キモッッッ!!」
引きはがそうとして相手にアッパーを食らわせつつ暴れると、ハイドロイドがイザークを背後に庇ってくれた。猫も巧みに爪を尖らせて、猫パンチを喰らわせている。
「いきなり何をなさるんです、陛下!」
「陛下?!これが?!」
コレ呼ばわりもあれだが、既に顎に一発キメてしまっている。ハイドロイドに言われた身の危険は、想像の斜め上をスライディングしていった。
「この国にいると子供は5歳くらいから筋肉質になってこんな華奢じゃないし」
「それでも転移者だとわかっていてその態度は国王としか如何なものかと」
プラチナブロンド――というより白い髪色だが、変態国王は宰相より若く見えた。軍服の上にゴージャスなコートを羽織っていて、王冠はないにせよ貫禄はある。
「そうですよ〜陛下、ショタコン疑惑持たれる前に自己紹介しないとだめですよ〜。あっ僕はオットーメルナス・トッティーモエランディール。財務大臣だよ〜、ハイドロイドのパパで〜す」
「よろしくお願いします、イザーク・グレイです」
(ショタコンは疑惑じゃなくて確定なんだけどな)
なんだかふわふわしているが、まだまともかと思いながら最年長の男性に挨拶した。
髪色や目の色は確かにハイドロイドに似ているが、少し厳つい。
「我はエドワード・アストリッド、イザークを今日から推しとする国王だ」
「迷惑なんですけど」
国王はかつ魔王であり、鬼神一族のメンツと比べると細身なのだが、第一印象が悪すぎた。
「あっはーエド陛下良かったじゃないですかー、推しがいれば仕事捗りますよ」
「手始めに推しと握手を」
「陛下はイザークくんにまだ嫌われてますよ〜。僕はまだまだ好感度あげていきますもん。僕の手編みぬいぐるみをあげようかな〜それとも手編み帽子にしようかな〜」
誰もイザークの言動に触れていない。
さすがに不敬がすぎるかとハイドロイドをちらりと見る。と、そこには儚げな笑顔のハイドロイドがいた。
「いつもこんなだから、過去は私もツッコミを頑張っていたんだけどね、もう疲れて諦めたんだ。父上の乙女趣味は……まぁ害がないほうだよ」
(オットーメルナス……オトメ……?!)
名が体を表すのか、体が名を表すのか。翻訳されていても、日本語だと名が体を表すのか。
でも王様を見る限り名前が普通でも、本人が普通じゃないバージョンもあるんだな。
イザークはまた一つ賢くなった。
「ありがとな、猫。助太刀してくれて」
「みゃっ!」