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第55話 侵攻

《一之瀬サツキ視点》


冥王からの神託を聞いてから少し経ち、八咫烏の拠点であるビルの1階に八咫烏の戦闘員達とケルサス竜帝国の騎士達と竜帝が集まった。

そして、俺は喋り出す。


「現在、非戦闘員は転移扉を複数出して北海道の避難所へ送っている。まもなく移動も終わるだろう。

あちらには種族が竜人のリーダーがいるからとりあえずは大丈夫だ。

それで、俺らはどう動くのが最適なんだ?」


「とりあえず、冥界の魔素をせき止めているゼノデウスの防衛だな。アンデッドはどうにかなる、だが英傑の亡霊は…なるべく相手をするのは実力者だけにしておいた方が良いだろう」


人の姿である竜帝が顔をしかめながら言い、ソウスケが気になる様子で質問する。


「その英傑の亡霊ってのは何なんだ?」


「死してもなお、魂の格が高すぎて浄化もされず、アンデッドになることなく体を保ち続けている者達だ。

実力は全盛期の時よりは衰えているだろう。だがそれでも強い」


「なるほど…ヤヨイ、周囲の様子はどうだ?」


千里魔眼を使用して辺りを警戒しているヤヨイに聞く。


「特に何事もありませんねぇ。いやまぁ墓地があるのは大阪だからそりゃそうなんですが」


「問題は、ゼノデウスがどれだけ保ってられるかだな。一応こちらでも魔力回復薬を持ってきて渡したが、それでも微々たる助けにしかならんだろう」


「あの決壊した冥界の入口は直せないんですか?」


ヒロキの眷属のハルカが質問する。


「神々でなくては無理だ。そのためにもあの悪魔が異変を解決してくれていれば良いのだが…」


「あれ!?平原の方からアンデッドが来てますよ!!」


ヤヨイが驚いた様子で叫ぶ。


「なに!?何故平原から…」


「でっかい魔法陣から続々と現れてます!一直線にこちらへ向かってますね!」


「…浄化をしているゼノデウスが目標か。しかし、一体誰が転移魔法を…いや、それよりもアンデッド達を迎え撃たなければな。

総員、配置につけ!」


竜帝が叫ぶと同時に、八咫烏の戦闘員たちとケルサス竜帝国の騎士たちが一斉に動き出した。

ゼノデウス殿がいるビルに移動し、アンデッドが来る平原方面に防衛を固める。

地上は騎士と近接戦の戦闘員達、土魔法で創った足場の上には魔法使い達、空中には竜に乗る騎士が十数人ほどいる。

しばらくすると、アンデッド達が見えてきた。

巨人のゾンビ、鎧を纏うスケルトン、燃えた死体を引きずるゴースト、無数の骸骨犬、多種多様なアンデッドが、まるで一つの意思に導かれるように前進してくる。


その後方には、空中に浮きながら様子を伺っている者がいた。

そいつは、ローブを纏っている長い白髪で細身の男だった。明らかに知性を持っているように見える。

その男が視線を動かすと、片手を掲げた。俺の足元に魔法陣が現れる。


俺は飛び避けようとしたが、間に合わなかったようで周辺の景色が変わる。転移の魔法だったようだ。

どうやら平原に転移されたようだ。そして、目の前には黄金の片手剣を持つ、黒目で黒髪の若い男がいた。


「ふぅ…僕の相手は、君か」


「…喋れるのか」


「まぁ、奴の支配下になっちゃっただけだからね。

だが、すまない。命令はここに転移されてくる者の相手をすることなんだ。

だから僕は君のことを、殺すことになるかもしれない」


そう言うと、黄金の片手剣が光を帯び始めた。俺は雷光の大剣を取り出した。


「君、名前は?」


「…一之瀬サツキだ」


「あれ、やっぱり日本人なんだ。僕は佐藤タクミ、よろしくね」


そう言うと、男は黄金の片手剣を構え、歩きながら近付いてきた。





《亜門ソウスケ視点》

俺は突如地面に現れた魔法陣によって平原に転移された。

そして、目の前には引き締まった筋肉の四つ腕でハゲ頭の男がいた。器用に四本の腕を組みながら突っ立っている。


「フン…お前が俺様の相手か」


「どうやら、そうみてぇだな。お前、名前は?俺は亜門ソウスケだ」


「テラウィースだ。それでは始めるとしよう」


そう言ってテラウィースと名乗る男は組んでいた腕をほどき、拳を作り腰を低く構えた。





《宮本ヤヨイ視点》

私は突然周辺の景色が変わったことに驚き、そして目の前にいる5mはありそうな人間に驚く。片手には木の棍棒を持っていた。

その巨人は筋肉がよく発達しているが、どこか優しそうで馬鹿そうな顔をしていた。そして、強者の匂いがする。


「あれぇ?お前がオデの相手かぁ…」


「そうみたいですね!私は宮本ヤヨイです!貴方は?」


「オデはリキって言うんだぁ、親友につけてもらった名前なんだぁ…オデはお前と戦うことになっちゃうけど、死なないようになぁ?オデも中々つえぇからよぉ」


「わぁ!良いですね!それでは早速始めましょう!」


私は巨人さんに向かって殴りかかった。





《黒木マリン視点》

私は突然現れた魔法陣に反応できず、平原に転移されてしまった。

目の前には、黒い三角帽子に黒いローブという、いかにも魔女のような容姿の美女がいた。そして膨大な魔力量を感じ取る。


「あらぁ、貴方私と同じ魔女じゃない。嫌ねぇ、相手が同族だなんて」


「戦う必要は、あるのですか?」


「ごめんなさいねぇ、嫌な奴に支配されてて戦うようにされてるのよぉ。私はローサよ、貴方は?」


「私は黒木マリンです」


「そう、マリンていう名前なのね。まぁ…死なないようにしなさい」


ローサという女は真剣な顔でそう言うと、空中に様々な属性の魔法を創り出した。






《ノクスジーナ視点》


「ちっ、主力級の者を全員転移させたか。面倒なことをする」


既にアンデッド達との戦闘は始まっていた。我が竜帝国の騎士とあの悪魔の眷属達もいるから問題は無さそうだが、問題はあやつだな。


「やはり貴様か。レモウラよ」


我は竜の姿となり飛び上がって、浮かんでいる細身で白髪の男、レモウラへ接近して黒炎の息吹を放つ。

すると、レモウラは片手を掲げ、巨人のゾンビを数体浮かび上がらせ盾にした。巨人のゾンビは瞬く間に灰になり光に包まれた。

そしてレモウラに話しかける。


「レモウラよ。久しぶりじゃないか、ゼノデウスに殺されたのをまだ恨んでいるのか?」


「イキがるな、蜥蜴。貴様の相手はこいつだ」


そう言うと、レモウラの頭上に巨大な転移の魔法陣が展開される。そしてその魔法陣から巨大な竜が現れた。

その竜は肥満体で、他の竜よりも大きな口をしている。


「こいつは、暴食竜か!!」


「グォォォォオオオオオ!!!」


暴食竜は、世界を震わすような咆哮をあげた。

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