目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第44話 上級悪魔

進化が無事終わった俺はハルカに礼を言って、一階のフロントに向かった。どうやら俺が眠ってからしばらく経っていたようで、もう日が昇り朝になっていた。

フロントに行くと、そこには数人の眷属がいて、サツキとゼノデウスが喋っていた。

サツキが俺に気が付いて声をかけてくる。


「ヒロキ!無事だったか、調子は?」


「見ての通り絶好調だ」


「そうか、それなら良かった…以前よりも力が増しているように見えるな。レベルいくつで進化した?」


「20だな。進化する際にも100万MPを使用した」


「なるほどな……あっちのモンスターはどうだった?」


「数も多いし、一個体の強さも中々だったな」


「そうか…」


サツキは腕を組みながら俺をじっくりと見つめる。


「進化したことでどのような変化があった?」


「全体的に力が上昇したのを感じるな。魔力量も増えてるだろう」


「ふむ…そうか」


「そういえば、お前をあそこまで傷付けたのはどんなやつなんだ?」


ゼノデウスがニヤニヤと笑みを浮かべながら聞いてくる。


「刀使いの歳老いたゴブリンだった。知性を獲得していたな。

技量も性格も、まるで刀術の達人のようなやつだったよ」


「ほう…良い経験が出来たようだな」


「ああ……そうだ、魔境生成という魔素が集まりやすい場所を作るスキルを手に入れたのだが、どのように使うんだ?これは」


「…それは悪魔が下界に魔界の環境を作るためのやつだな」


「魔界の環境を作る……?悪魔専用の領域みたいなものか?」


「その認識でいい。魔境を展開すれば魔素が濃くなり、通常よりも魔物が発生しやすくなる。さらにお前自身の力も上がるはずだ」


ゼノデウスは頷きながら続ける。


「使うなら場所を選べよ?この辺りで使ったら厄介なことになる」


「そうだな…サツキも平原に行ってレベルを上げに行くか?何ならソウスケとか俺の眷属達も連れて」


「ふむ…そうだな。防衛に支障が出ない範囲で選抜してくる」


そう言ってサツキは去っていった。


俺は最初に眷属にした者達と、レベルが10を越えている者達を集めた。


「ヒロキ様、平原でのモンスター達はどうでしたか?」


人化を使ったハーフデーモンの姿のカイが聞いてくる。


「手強かったし、数も多かった。お前も人化切っておいた方がいいぞ」


「わかりました!」


そう言ってカイの体に光が包まれると、虫人の姿になった。

それを見たサクラはワクワクとした表情をする。


「わぁ!カッコいいですねぇ。戦隊物に出てくる敵みたいです!」


「ギギ!」


カイが腕を組んでサクラを見下すようなポーズをする。


「とは言っても私達全員がそうじゃない?」


「あはは!確かにそうですね!」


カレンは周りにいる皆を見ながらそう言うと、サクラはケラケラと笑う。


「となると、ヒロキ様が悪の総帥ですかね」


レンがニヤリと笑みを浮かべ、俺を見る。


「フッ、目標は世界征服といくか」


「ははは!ヒロキ様が言うとマジっぽいっすよ!」


タツヤが笑いながら指摘してくる。


「そういえば、皆さんと一緒に戦うのは初めてですね。足手まといにならないようにしないと」


「つってもサクラもレベル11なんだろ?大丈夫だと思うけどな」


「そうですかね?」


少し弱気なサクラにマナミが肩を叩いて励ます。

そんなこんなで雑談しながら待っていると、サツキ達がやってきた。

サツキ,ソウスケ,イサムの見慣れた顔と、他十数人の戦闘員もやってきた。前にサクラが一緒に行動していたマサノリやユウトなんかもいる。

戦技を扱える者たちだな。


「ヤヨイとマリンは留守番か?」


「ああ。あまり戦力を減らすのも良くないからな」


「そうだな。イサムは、大丈夫か?まだレベルも1だろう?」


「それが聞いてくれよヒロキよぉ」


待ってましたと言わんばかりにソウスケが喋り出す。


「このジジイ、ハーフデーモンになった夜からこそこそ抜け出してモンスター狩りでレベル上げてたんだぜぇ?」


「フン、お前に先を越されているのも不快だからな」


「嘘つけよ。どうせ久しぶりに動けるようになったから昂ったんだろ?なぁ」


ソウスケはニヤニヤとした顔をイサムに向け、図星だったのかイサムは顔を背けて黙る。


「それじゃ、転移扉出すぞ?」


「ああ。…注目!!」


サツキがそう叫ぶと、皆の目線がサツキに向く。

それを確認したサツキは頷きながら喋り出す。


「一応言っておくが、今回相手にするモンスターは生半可な相手じゃないし、数も多い。

当たり前だが、皆油断しないように」


「「「了解」」」 「「「はい!」」」


返事したのを聞くと、俺は転移扉を創り出していく。

そして出来上がると、扉を開けて通った。他の者たちも続々と扉を通っていく。

転移扉を抜けた先は、中心付近からは少し離れた場所だ。

どこまでも続く草原に、気持ちのいい風が吹き抜ける。


「中心はあっちだな」


そう言って俺は中心に向かい、歩き出した。

少し歩くと地面が荒れていき、離れた場所に大量のモンスターたちが争っているのが見えてくる。あれはリザードマンの群れとオークとゴブリンの群れが争っているみたいだな。


リザードマンは防具こそ付けていないが、鉄製らしき武器を持っている。

オークとゴブリンはまた鉄のフル装備だな。

だがリザードマンも街で見かけるような個体ではなく、筋肉が発達していてデカい。

そして口から時々炎を放っているのが見える。


「なるほど、装備も…こりゃ油断できねーな。お前ら戦技積極的に使えよ!」


ソウスケが他の者に対してそう言った。各々武器を構える。

モンスター達も俺達に気が付いて争うのをやめた。


「魔法を放て!!」


サツキがそう言うと、魔法を使える者たちが次々と魔法を放つ。


そうして、モンスター達との戦いが始まった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?