「ん…」
目を覚ますと、俺はマットレスの上で眠っていた。
上半身を起こして自分の体を見ると、老剣士から受けた傷が完治していた。
俺は若干ボーッとしながらメニューを開いて所持MPを確認する。
〔所持MP 2802361〕
(…とんでもない数だな。1000体以上は倒したのか?)
そんなことを考えながらレベルを20まで上げた。120万は使ったな。
そしてレベル20になるとこのような通知が表示された。
〔1000000MPを使用して上級悪魔に進化できます。進化しますか?〕
〔はい〕〔いいえ〕
(進化…か)
しない理由もないので"はい"を選択する。
その瞬間、全身を突き刺すような激痛が襲った。
「ぐっっ…」
(そうだった…!)
骨が軋み、筋肉が引き裂かれるような感覚が全身を駆け巡る。
アップデートのときも痛みが襲ってきたことをすっかり忘れていた。しかも痛みにいくらか慣れてきたからか意識を失うこともない。
筋肉からプチプチと気色の悪い音が聞こえ、骨からはメキメキと軋むような音が聞こえる。
するとハルカが大部屋に入ってきた。
「ヒロキ様!お目覚めでしたか!」
「あぁ…」
「お怪我の方は……何か身体中から音が…?」
「レベルを上げたら進化することになった。終わるまで横になっているから、サツキが来たらそう伝えてくれ」
「分かりました!他の者にも伝えてきますね!」
ハルカはそう言って小走りで去っていった。
全身に感じる痛みを堪えながら、俺はひたすら進化の過程に耐え続ける。
(くっそ…意識を失わないからよりキツいな)
筋繊維が張り裂け、骨格が変化し、魔力が激しく動く。全身から蒸気のようなものが立ち上り、部屋の中に濃密な魔力が満ちていくのがわかる。
すると、ハルカが再び部屋に入ってきた。手には大量の焼かれている肉がある大皿を持っている。
「わ!凄いですね…お肉持ってきたんですけど、食べれますか?」
「ああ…口に運んでくれるか?」
「分かりました!」
ハルカがフォークに肉を刺して俺の口に運んでくる。咀嚼すると肉汁が溢れ出て、口の中が旨味で満ちる。
これはオーク肉だな、塩と胡椒で味付けされた物だがなかなかに美味い。
「うまいな…」
俺は痛みに耐えながらも、ゆっくりと肉を噛み締める。
「よかったです!焼肉のタレもあるのでどうぞ!」
ハルカは嬉しそうに微笑みながら、次の肉を焼肉のタレ浸して口に運んでくる。
肉を食いながら、俺は自分の体が変わっていくのを感じた。
肉を食べていると全身の痛みが徐々に引いていき、代わりに力が体中に満ちていく感覚があった。
やがて、部屋に満ちていた濃密な魔力が俺の中に吸収され、部屋の空気が静かになる。
前回と比べてだいぶ短かったな。
「ヒロキ様…終わりました?」
「ああ…終わったみたいだ」
俺はゆっくりと立ち上がった。視界が鮮明になり、体が軽く、そして強靭になったのを感じる。
「何か…細くなりましたね。筋肉が萎んだ…?いや…」
「筋肉がより密になって、引き締まったようだな」
俺は自分の腕を見下ろし、軽く拳を握る。
見た目は以前より引き締まっているが、内側から湧き上がる力は段違いだ。
俺はメニューからステータスを開く。
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〔Lv.1〕次のレベルまで500000MP
〔名前:佐藤ヒロキ〕
〔種族:上級悪魔〕
〔攻撃:G-〕〔防御:G-〕〔俊敏:G-〕〔魔法:G-〕
〔種族スキル〕
[眷属化][契約][千里魔眼][魔境生成]
〔スキル〕
[火炎魔法Lv.1][影の鬼Lv.1][竜の息Lv.5]
[鑑定魔眼Lv.1][人化][竜擬き]
〔ユニークスキル〕
[鬼の身体][剣鬼の斬撃]
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む、レベルが1になって能力値も初期化されてるな。
新しい種族スキルの魔境生成は、魔素が集まりやすい場所を作るスキルだな。若干危険な気がする。
火炎魔法は火魔法が強化されたスキルで、火力と範囲が出しやすくなったみたいだ。
影の鬼は小鬼の代わりに鬼が出てくるようになったスキルだ。
小鬼よりも大きくガタイの良い鬼が出てくる、それも今までと同じ魔力量でだ。なかなか凶悪なすきるになったな。
剣鬼の斬撃は、魔力を消費して刃物から強力な斬撃を放つスキルのようだ。
「どうでした?」
「ん、色々と強化されたようだ。影の小鬼も影の鬼となって強化されたな。これでお前達の訓練も捗るぞ」
「え"…」