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第36話 ご褒美

どうも、モノノキです。

今回若干の性的描写があります。ご注意ください。

_________




「ああ…懐かしい、生きている感覚だ」


老人…いや、もう老人とは呼べない男はしっかりとした足取りでその場を踏みしめる。

背筋は伸び、まるで数十年前に戻ったかのように力強さを取り戻していた。


「これは…すごいな。まるで若い頃に戻ったようだ…というか戻ったのか」


腕を回し、軽く拳を握りしめながら、男は自分の変化を確かめている。

その様子を見ていた周囲の者たちも、驚きと興味の入り混じった表情を浮かべていた。


「おいおい、本当に若返りやがったぞ…」

「これ、すごくねぇか?」

「私もシワが出てきたら頼もうかな…」

「何言ってんだお前」


「これは…非戦闘員だけじゃなく、もう老い先短いと思っていた者たちにとっても希望になるな」


サツキが腕を組みながら感心したように言い、ワタルも満足そうに頷く。

俺は元老人に声をかける。


「調子はどうだ?」


「調子は良い…良すぎるぐらいだ。私の名前は一条イサムだ、お前は?」


「佐藤ヒロキだ」


「そうか…役立たずのゴミのまま死ぬ運命だった私を救ってくれて、感謝する」


そう言ってイサムは頭を下げた。するとソウスケが喋り出した。


「一条イサムぅ…?おいおい、どんな偶然だよ。虚骨流の師範じゃねぇか」


「…貴様の蛮行は記憶に残っているぞ、亜門ソウスケ。今までよくぞ生き残れたものだ」


「ったく、昔のことをいつまでも言いやがってよ」


ソウスケは頭をガシガシと掻きながらもニヤリと笑う。

一方のイサムも険しい表情を崩さず、鋭い目でソウスケを睨みつけていた。


「まさか、こんな形でお前と再会するとはな」


「まったくだぜ。てっきりあんたはとっくにくたばってるもんだと思ってたが…」


「フン、貴様はいくらかマシな性格になったらしい」


「もう俺も71だからな。逆に何も変わってないあんたにビックリだぜ」


二人の間に張り詰める空気に、周囲の者たちがやや緊張した様子を見せる。

ヤヨイが楽しげに口を挟んだ。


「ウ~ン、心地の良い緊張感です。お二人は知り合いだったんですか?」


「昔、武術の基本をこの人に教わっててな。一度喧嘩でやり合って引き分けてから会ってなかったんだが…」


「むしろ、あの時期のお前と会いたい武術家なんぞいなかっただろうよ。下手を打てば再起不能にさせられるのだからな」


「馬鹿言うんじゃねぇ。俺が徹底的にヤッたのはどうしようもねぇクズだけだ。真っ当な武術家には…まぁそこまでやってねぇよ」


「昔はやんちゃしてたんですねぇ」


言い淀むソウスケを見て、ヤヨイがしみじみと呟く。


「まぁ、そういう時代だったからな。にしても全盛期のあんたと行動できるのは心強いぜ」


「フン…」


イサムは鼻を鳴らしつつ、改めて体の調子を確かめるように拳を握りしめた。

その様子を見て、ワタルが頷きながら喋り出す。


「想像以上ですね。意欲的などは関係なく、ご老人にはハーフデーモンになって頂きましょうか。ヒロキさんに頼めばよろしいですかね?」


「いや、ハーフデーモンも眷属化は使えるからな。何だったらイサムに頼めば良い」


「ふむ…そうだな。せっかくこの力を得たのだ。ならば、役立てるのが筋というものだろう」


「頼もしいですね。それではイサムさんには早速、ご老人方の眷属化をお願いします」


「分かった」


ワタルが頼むと、イサムは去っていった。


「では、話を戻しますね」


ワタルが場を仕切り直す。


「今後の方針として、まず非戦闘員の育成、そしてこの仮拠点の整備。

まぁやることは山積みなのですが、それと並行してここにいる実力者の方々にやって頂きたいことが1つありまして」


「なんだ?」


「それは、人類に害しか与えない人間達の排除ですね」


「ほう…」


ワタルの言葉に場が静まり、空気が一変する。


「害しか与えない人間ってのは、具体的にどういう連中を指す?」


俺が尋ねると、ワタルは淡々と答えた。


「略奪、殺害、強姦を平気で行うゴミ共のことです。

とは言ってもそういうゴミ共もモンスターに殺されているので数は少ないのですが…

まずこの辺りで一番数が多いのが、所沢で群れてる犯罪者共です。

刑務所に収監されていた奴らが群れて行動しているのですが、どうやらある程度レベルを上げてスキルも獲得しているらしく、避難所に訪れては物資を脅し取って女性を攫っているようですね」


「所沢か…俺だったら20分,30分で行けるだろうが、攫われているやつもいるからな」


「あぁ、それだったら」


サツキはそう言うと、スキルの書を取り出して渡してきた。

それは"転移扉"という、このスキルを獲得してから一度行ったことがある場所に繋がる扉を30秒かけて出現させるスキルだった。

出現させている途中や出来上がった扉の片方どちらかを壊したら機能しなくなる。


「なんだ、どこでも◯アか」


「ああ。少し性能が落ちたどこでもド◯だ。それがあれば被害者の移動も楽に出来るだろう」


「ふむ…俺が貰っていいのか?」


「ああ。むしろ優秀な移動手段を持っているヒロキが最適だ。それと、他にもこのスキルを持っているのが何人かいるからな」


「そうか。なら遠慮なく使わせてもらおう」


俺は転移扉のスキルの書を使用して獲得した。頭にスキルの情報が流れ込んでくる。


「問題ないな。まだ昼過ぎだし、早いところ行ってしまうか。ここに扉を出現させるから準備はそっちに頼むぞ」


「了解しました。それじゃあ、所沢の件はヒロキさんにお願いします。

後は所沢の犯罪者集団ほど組織化されていませんが、各地に散らばる無法者どもですね。

避難民の物資を奪う浮浪者崩れや、力を持ったことで横暴になった元一般人、さらには少人数の盗賊団のような連中もいます。

これらは今後グループになり、我々八咫烏の障害となりえる可能性がありますので迅速に排除したいところです」


「へぇ、場所の目星はついてるんですか?」


ヤヨイが楽しそうに問いかける。


「目星というか、場所は完全に把握しています」


「何だよ。だったらさっさとヤッちまおうぜ。早けりゃ早いほど良いだろ」


「そうですね。では近場の方から…」


そうして無法者を排除しにいくことになった。とは言ってもここの戦力を減らしすぎてもいけないので、とりあえず行動するのはヤヨイ、ソウスケ、俺だけだ。


俺は飛び上がるために外に出ると、サクラが待っていた。


「あっ、ヒロキ様!ボク今日で避難民救助の任務から外れたんですよぅ!」


「ほう。そうなのか」


「はい!なので、そのぅ…」


サクラが照れくさそうにする。


「ああ。ご褒美だろう?今日は無理そうだから、明日だな」


「…! はい!」


「ん、お前たちはどこを拠点にするんだ?」


「元自衛隊の人達はあそこのビルですねぇ」


そう言って、ほぼ隣と言っていい位置にあるビルを指差した。


「ふむ、お前はどうするんだ?うちで寝泊まりしたいならしてもいいが」


「いいんですかぁ!」


「ああ。中に入ってお前と同じハーフデーモンに声をかけろ。それと、お前の同僚のやつらにも話通しておけよ」


「はーい!」


サクラは元気よく返事すると、となりのビルへ走っていった。


「さてと、行くかな」


俺は跳躍強化で跳び上がって、飛行強化を使い翼を羽ばたかせた。





10分後…

所沢の上空を飛び回り、犯罪者組織の拠点を発見した。

ショッピングモールがそのまま犯罪者共の根城になっているようだ。

やはりショッピングモールは拠点にしやすいようだな。


俺は少し離れた場所から千里魔眼を使い確認する。

屋上と駐車場には武器を手にした見張りが何人も巡回している。

建物の地下駐車場には攫われたと思しき若い女性たち十数人がバリケードに囲まれて閉じ込められているのが見えた。

だが健康状態は良さそうに見える。楽しめるように管理はしっかりしているようだ。

中には80人程度の人間がいる。中にいる連中も飢えてる様子がないのでしっかり食料は確保しているようだな。


だが女で楽しんでいるやつが何人かいる。

改心していれば使えた奴らだろうに、もったいない。

俺は竜擬きを使用する。体が黒い泥のような物に包まれた。

そして黒い泥が消えると、灰色だった肌は赤黒い鱗で覆われ、手には黒く鋭い爪が生えていた。

顔も竜のように変化している…はずだ。ズボンと靴は何故か消えている。


「グォグォ…グ?」


む、喋れん。この姿だと喋れないのか。まぁ良い。

俺は跳び上がって翼を羽ばたかせようとすると、出来なかった。


(翼が無い…!?)


俺は即座に両足に衝撃軽減で魔力を集中させて、跳び上がった勢いのまま、駐車場に着地した。

幸いにも無事着地できた。


「な、なんだこいつ!!」


「モンスターだぁ!!」


突然の現れた俺に、駐車場にいた見張りの男たちが一斉に武器を構える。

俺は一気に距離を詰めて、爪で切り裂いた。首を積極的に狙って次々と仕留めていく。


〔MP +645〕〔MP +221〕〔MP +440〕…


(まぁ悪くはないが、戦斧の方が楽だな)


戦斧だったら体のどこかに当ててしまえば良いだけだしな。

すると続々と中から増援が出てきた。仲の良い人間が殺されたからか怒りをあらわにしている者もいる。


「んな! マサキ…てめぇ!!」


「ぶっ殺せ!!」


時々俺の体に剣などの武器が当たるも効果が無い。鱗の防御性能は中々に良いようだ。

そもそもステータスが高いのもあるだろうが。

しばらく殺していくと、増援が来なくなった。

千里魔眼を使うと何人か逃げているのが見えたので、すぐに追いかけて殺していった。


ショッピングモールの中も千里魔眼でザッと探したが見当たらなかったので、地下駐車場に降りる。

バリケードの場所まで行くと、1人の男がバリケードの前で剣を構えてこちらを睨みつけていた。


「あークッソ、絶対勝てねぇ…」


(ふむ?女性達を守っているのか?)


俺は足を止め、目の前の男をじっくり観察する。

痩せ気味の体型に、戦闘慣れしていない構え。

それでも剣を握る手は震えておらず、逃げることなく俺を睨みつけている。

俺は竜擬きを使い、再び黒い泥が体を覆う。そして元の姿に戻った。

男は変化した俺の姿に驚いている。


「おいおい、次はなんだよ…」


「お前は何故そこの女性達を守っている?」


「…!? 喋るのかよ。女を守るのに理由なんぞいるか?」


「他の連中は女性を使って遊んでいたようだが?」


「あれは…」「そ、その人は悪い人じゃないです!」


1人の女性がそう叫んだ。


「たくさんご飯も持ってきてくれて、私達には手を出さなかったし!」

「むしろ酷いことしてきた奴を殺したりしてくれて…」


次々と男を庇うようなことを言っていく。


「…そうか。それじゃあ、お前は俺の眷属になれ」


「眷属…?」


「ああ…」


俺は眷属化のメリットとデメリットを説明して魔法陣を展開する。


「この魔法陣の上に立てば眷属になる」


「やるしかねぇか…」


男が魔法陣の上に立つと、肌が灰色になり黒く捻れた角が生えて瞳が金色に変化した。


「…スゲェ、なんだこれ」


「ふむ…『お前のこの拠点での役割とやってきたことを話せ』」


「…!? 俺はここのまとめ役だった。

モンスターに対抗して生き残るためにも同じ犯罪者だった奴らをまとめあげる必要があると判断した。


まず他の奴らを何とか説得して、人数を用意して他の避難所を脅し、女と物資を奪い取った。


女は他の人間をここに縛りつけるための報酬で使った。

俺だけは女達に何もせずに優しく接して、それとなく見張りが多いことを伝えて逃げ出さないようにした。


女へ過剰に乱暴した奴は他の人間を使って抑えつけさせて俺が殺した。


それで俺がここのリーダーであることを印象付けさせて、対抗心を薄くした。


あんたが他の奴らを殺していくのを見て逃げようとしたが、女達への罪悪感ができて、逃がしてやろうとした。


思っていたよりもあんたが早くて、女達を守ろうとした。以上だ」


男は絶望した表情で俺を見つめる。俺は女性達の方へ顔を向ける。


「まず、お前らが慰み者になった原因がこいつ。

打算があったとはいえ、優しくしていたのは事実。

最後に守ろうとした意思も本物だ。

さぁ、こいつをどうする?」


「……ころします」


表情が抜け落ちたような1人の女性が前に出てきた。先ほどこの男のことを庇っていた女性の1人だ。

他にも次々とバリケードで使われていたものを手に持って男の前に移動する。

そして女性たちによる復讐が始まった。


「貴方だけは信じてたのに…!!このっ!このぉぉ!!」


「死ね!!死ねぇ!!」


「なんでお前なんかに…!!」


女性達が血で塗れていく。

男からは強い恐怖が伝わってくる。そして、事切れる直前に後悔が伝わってきた。


(ふむ…頭が回るやつだったようだが、選択肢を間違えたな)


しかし、信じていた人間から裏切りにより生じる激情は凄まじいものだ。

女性達は事切れた様子の男を見ると、展開されていた赤い魔法陣の方へ何か縋るように歩いていく。


「おい!お前達も眷属化の説明を聞いていたから発動するぞ!」


そう言うが、次々と魔法陣の上に立っていき、ハーフデーモンに変化していった。

女性達は吹っ切れたような顔をしていた。


「ハァ〜…頭がスッキリした」


「まぁ、あのゴミを殺せただけいっか」


「他の奴らはこのお方が殺して…そういえば名前はなんて言うんですか?」


「…まぁいい、佐藤ヒロキだ。これから新都心にある拠点に行くぞ」


俺は拠点のビルのフロントを想像しながら魔力を放出して転移扉を創り出していく。

そして転移扉が出来上がり開くと、無事フロントと繋がった。


「さぁ、入れ」


「「「はい!」」」


フロントへ行くと、ワタルと他数人が待機していた。


「…早いですね。全員眷属にしたんですか?」


「ああ。こいつらの意思だ。それじゃあ、色々頼むぞ」


「ええ。分かりました」


そうして女性達を引き渡した。

俺は首を鳴らしながら2階へ上がると、廊下にサクラがいた。


「あれ!早かったですねぇ」


「ああ。他の人達と話したか?」


「はい!良い人たちばかりで、マットレスまで用意してもらっちゃいました」


「そうか。それじゃあ、来い」


「…お疲れじゃないです?」


そう言いながらもサクラは分かりやすく期待していて、欲情が伝わってくる。


「大丈夫だ。ここじゃ何だし、もう少し上の階に行こうか」


「はい…♡」


サクラと共に6階まで上がっていった。

適当に広い部屋に入り、ブルーシートを敷いて、上にマットレスを置いた。

そして俺は人化のスキルを使った。全身が光に包まれる。

光が収まると、細身になり身長が縮んだのが分かる。

相変わらず灰色の肌だが、山羊頭だったのも人の顔になったようだ。

ハーフデーモンのような姿になったようだな。


「どうだ?始めて人化を使ったんだが」


「し、信じられないぐらいカッコいいです…♡」


人間だった頃は平凡な顔だったが、変わったみたいだな。

俺はマットレスの上に座り、太ももをポンポンと叩く。


「サクラ、おいで」


「は、はいぃ♡」


サクラが俺の上に跨って座り、向かい合わせになる。

そして顔を近付けて、見つめ合いながらキスをした。

キスをして少し経つと、強く抱きしめ合い、唇を押しのけて舌を入れる。

お互いの舌が絡み合い、お互いに快感を与え合う。

いやらしい音が部屋に響く。


満足して口を離すと、サクラは荒くなった呼吸を整えた。


「これで、終わりじゃないですよね…♡」


「まさか。これからだよ、サクラ」


そうしてサクラを服を脱がしていった。

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