目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第29話 戦技の使い方

しばらくサツキやマサノリと談笑しつつ、情報交換をした。

まず正体不明の鎧の男について話したが、自衛隊の方では確認されていないらしい。

ただ、大阪で出現した広大な墓地から現れた無数のアンデッドが謎の光によって大幅に消滅させられたという出来事があったらしく、その辺との繋がりも調べたいと言っていた。

すると、サツキが気になった様子で口を開く。


「しかし、もし異世界人だったとして俺たちと接触しない理由が分からないな」


「まぁ、単純に信用しきっていないとか?俺が見たときも眷属達を観察しているような感じだったしな」


「確かにそれもありそうだなぁ、何より話してみなきゃ何も分からねーが」


マサノリはそう言うと、何か思い出したかのような顔をする。


「そうだ!前に言ってた集合拠点の話が進んだんだよ!」


「ん、そうなのか」


「そういえば、ヒロキにも話してたんだったか。

大宮避難所にもあったような大規模な襲撃が他の避難所でも起きたら対応が厳しいからな。何より、ガソリンは有限だ。有り余っているうちに動いておきたい」


「ふむ。仮拠点はどこに決まったんだ?」


「ここにするという話もあったんだが、埼玉県周辺の県からも集まる予定だからな。かなりの人数になる。

結局さいたま新都心周辺に固まることになることになった」


なるほど、確かにあそこだったら使える建物も多そうだ。何より平原にも近い。

するとマサノリが頭を掻いて喋る。


「というか、あれだ。もう遠方から人連れて新都心に向かって来てる隊員もいるんだわ。もしかしたら想定してるよりも多く来るかもしれん」


「場所取りは早めに行ったほうが良さそうだな。それよりも、非戦闘員の仕事も考えておいた方が良いんじゃないか?大宮避難所の連中も暇なやつが大半だと聞いたぞ」


「そうだよなぁ、どうしたもんかね」


マサノリは腕を組みながらため息をつく。


「ザッと思い付くのは料理やら掃除やらの雑用かね。なるべく暇なやつが出来ないようにしないとなぁ」


「そうだな。それと、治安維持か」


「うわ、面倒くせぇ…」


「戦闘員がその辺を歩いているだけでも、ある程度の効果はあるだろう。

頻繁に騒ぎを起こす者と犯罪行為をした者は追放、ひどい場合は粛清だな。

それを我々が公言してしまえば良い。それを拒否したものは集合拠点から出ていってもらう」


サツキが表情を変えずにそう言った。

こいつは何気に白黒ハッキリしているな。


「まっ、そうなるわな。ただでさえ団結が必要だってのに混乱のもとになっちまう奴なんて害悪でしかねぇ」


「ああ。集合拠点はせめてもの安らぎの地としたいからな」


俺は腕を組みながら頷く。

現状、避難所は各地に点在していて統制が取れているとは言い難い。

もし本格的に集約するなら、最低限のルールを決め、秩序を維持する必要があるだろう。


「まぁその辺の面倒なことは自衛隊に任せる」


「ハッハッハ。そうはいかねぇぞヒロキ。仙人の爺さんや春日部にいる鬼、お前さんなんかの強力な人材を腐らせる訳にゃいかねぇからな」


「そうだな。実を言うと、我々は自衛隊という名を捨てようと思ってな」


「何?そうなのか」


「ああ。八咫烏という名にしようと思っている」


「くはは!それはまた日本人が好きそうな名だ。悪くない」


「ああ。名前は完全に俺達の趣味だ」


マサノリがクツクツと笑って言う。


「なるほどな。それで、具体的にどういう組織にするつもりなんだ?」


「基本的には戦闘員、生産者、技術者の三つの役割に分ける予定だ。

戦闘員は対モンスター、対人の戦闘要員

生産者は名前の通り生産関係全般

技術者はインフラ関係を担当する。

他にも細々な役割ができると思う。

ヒロキやその眷属達は戦闘員、何よりヒロキは幹部として八咫烏に迎え入れたい」


「なるほどな…幹部とは言うが、何をやらせるんだ?」


「単純にまとめ役だな。人が増えれば自ずとトラブルも増えるのは間違いないだろうからな」


「ヒロキならいるだけでも効果があるだろうよ」


「暴力装置みたいなものか、まぁ良いだろう。トップは誰なんだ?」


そう言うとサツキが若干顔を歪めた。


「不本意ながら俺だ。もう1人のやつに押し付け…任せようかと思ったんだが、実力者の"人間"がトップに付いたほうが組織として受け入れられやすいと聞かなくてな」


「ということは、そいつは魔人なのか?」


魔人とは、モンスターに近しい姿に進化した者の総称だ。俺やカイも魔人だな。


「そうだ。人狼という種族でな、まぁ狼人間だ。ヒロキの眷属にはいるのか?」


「ああ。カイってやつが虫人という種族でな。人型の虫って感じなんだが、喋ることもできない難儀な種族だ。その分俊敏はとんでもなく高いんだが」


「ほう。それならちょうど良い」


サツキはそう言うと、虚空に手を伸ばしてスキルの書を取り出した。


「なんだそれは?」


「人化という人に変化できるスキルだ。人の間は若干ステータスが下がってしまうのだが、自由に変化できるから中々良いスキルだと思うぞ」


「良いのか?そんなものを貰っても」


「俺も戦技を教えてもらったから良いんだ。何よりこれはあと2つ持っている」


「…それなら良いか。だが貰ってばかりでも何か癪だ、サツキは近接系か?」


「む?そうだが、別にいらんぞ?」


それを聞きながら俺は1つのスキルの書を取り出した。そしてサツキに渡す。

サツキは頭にスキルの情報が流れてきたのか驚いている。


「…!! これは…」


「良いものだろう?俺には合わないからな。やるよ」


「いいのか?これは、レア物だろう」


「だろうな。まぁ人間が使った方が"面白い"だろうよ」


「…そうか。感謝する」


サツキはそう言うと、目の前でスキルの書を使用した。

そして人化のスキルの書を渡してきたのでアイテムボックスにしまった。

話が一段落するとマサノリは戦技を教えに行き、サツキも練習しに行った。



するとサクラが近寄ってきた。例のごとく欲情しているようだ。


「話終わりましたかぁ?」


「ああ。良いのか?他の奴らに教えなくて」


「他にも教えられる人いますし、何ならそこまで難しいことでも無いですからねぇ。

それよりもヒロキさまぁ、僕頑張ってるんですよぅ?進路上にある障害物をゴーレムくんでどかしたり、モンスターをゴーレムくんで倒したりして」


「ほう、偉いじゃないか」


「そうなんです!だから、少しだけご褒美くれませんかぁ?」


サクラが媚びた声で頼んでくる。

まぁ、こいつも俺のために頑張ってるわけだしな。


「いいぞ」


「はぁ、やっぱりだめ…良いんですかぁ!?」


「ああ。着いてこい」


俺が歩き出すと、サクラは慌てて着いてくる。

屋上駐車場から降りていき、少し離れた男子トイレまでやってきた。


「うわぁ、トイレでなんて…凄くえっちですねぇ」


「サクラ、口を開けろ」


「? はぁーい」


サクラが口を開けると、指を突っ込んだ。

困惑しているサクラをよそに、"快楽強化"で指先に魔力を集中させて、舌を強く押して擦った。


「ん"ん"ん"!?♡♡」


サクラは背中を何度もビクつかせる。

俺が指を引き抜き、荒い呼吸をしているサクラの耳元で囁く。


「サクラ、全部脱げ。汚れるぞ」


「ふぁい♡ひろきさま♡♡」





15分後…

腕にしがみついているサクラと共に屋上駐車場に向かって歩いていた。


「ヒロキ様!凄いですねあれ!戦技ですか?!」


「ああ。良かっただろう?」


「はい!物凄く!」


サクラは目を輝かせてそう言う。


「ふむ、サクラ『自分を慰めるために戦技を使用するな』」


「え、えー!?何でですか!?」


「ははは。合流したときの"ご褒美"が薄れるたらつまらないだろ?」


「ムム…確かにそれはそうですね。まぁ、あともう少しで合流だしいっか」




その後、1人で慰めているときの物足りなさにサクラは嘆いていたとか…

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?