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第25話 駆除

ハルカと遠征の話をした2日後、ハルカから上尾にあるスーパーに囚われている人がいるらしいとの話があった。


俺が千里魔眼を使用して調べると、確かにいた。

だが、どうやら捕らえているのは人間のようだった。このショッピングモールにいた奴らと似たような連中だな。

囚われているのは女ばかりなので、そういうことだろう。


「人間を殺せるのか?」


「はい。殺します」


「遠征に参加するのは誰だ?」


「私、カイ、マナミ、カレン、タツヤ、ハルナ、マヤです」


7人…カイ,タツヤ,マナミ,カレン,マヤが近接で、ハルカ,ハルナが魔法か。眷属の中でも実力がある者たちだな。

相手は10人程度、俺が着いていって皆殺しにしてから眷属達に護衛を任せて俺だけ先に拠点に戻る、というのもありだが…経験にならないだろう。

何より、人殺しは早めに経験させておきたい。


「他のメンバーにはもう話をしたか?」


「はい。全員了承してくれました」


「そうか…作戦は?」


「夜ここを出発して、夜中に奇襲を仕掛けようと思います」


まぁ悪くない、暗視もあるし有利に行動できる。予定よりもだいぶ早いが、行かせても問題ないだろう。


「そうか。なら予定通り夜に出発しろ」


「はい!」


ハルカは力強く頷いた。彼女の目には迷いがなく、覚悟が決まっているように見える。


「装備は大丈夫か?」


「全員、ヒロキ様が置いてくれている魔晶石を使ってしっかり整えました。

マナミ、タツヤ、マヤは鉄の剣、カレンはメイス、カイは鉄の短剣。ハルナと私は魔法主体ですが、補助武器としてナイフがあります」


「問題ないか……あぁ、救助する者たちの眷属化はしておけよ」


「はい!」


ハルカが力強く返事をした。

そしてその日の夜、ハルカ達は出発した。








《ハルカ視点》

「夜はまだ冷えるなぁ」


「そうね、風もあるし」


カレンと他愛もない話をしながら、周囲を警戒して歩く。

目的地まではそこまで距離はない、このペースなら1時間もせずにたどり着く。

すると、タツヤがふと思い出したかのように喋り出す。


「そういえば、あの金属蜘蛛?の脚美味かったな。量は多すぎたけど」


「そうね。でっかいカニって感じだったわ。しかもあの金属の殻、武器にできるんでしょ?良いとこだらけよね」


「フフフ、ヒロキ様武器作るのにハマってたね。夢中になってて素敵だったなぁ」


マヤがそう呟く。私も時々見ていたけど一つのことに熱中している姿は確かに素敵だった。

するとマナミが鼻をヒクヒクと動かして、警戒しだした。


「ん、獣臭いな。なんかいる」


「ギギー」


マナミがそう言うと、カイが跳び上がって周囲を確認する。

そしてモンスターのいる方向を指差した。


「進行方向にいないなら無視しよっか」


「そうね」「ギギ」


そう言ってまた歩き出した。


しばらく歩き、目的地のスーパーに到着した。全員で物陰から観察する。

スーパーの周囲にはバリケードがあり、2人ほど屋根に見張りがいるのが見える。だが談笑してばかりで、かなり甘い。


「……カイ。あの見張り、お願いして良い?」


「ギギ!」


任せろ!と言わんばかりにサムズアップして見せる。

そして短剣を構えて脚に風を纏わせた、カイのスキルの疾風脚だ。

とてつもない速さで走り、高く跳び上がって屋根に乗っかり、2人の見張りが声をあげる前に斬り裂いて殺した。

カイはこちらに手を降っている。


「…それじゃ、行こうか」

「おう」「はいよ」


バリケードを跳躍強化で跳び越え、物音を立てないようにスーパーの裏口へと移動する。カイも私達と合流した。


「鍵かかってるわね」

「ギギ」


カイが鍵を手渡してくる。


「見張りが持ってたか。気が利くね、カイ」

「ギッ!」


カイがピースをする。表情が変わらない分ジェスチャーでアピールするのが妙に愛らしい。

あまり音を立てないように鍵を開ける。


「中に入ったら迅速に殺していくわよ。囚われている人はなるべく傷付けない、だけど人質にとられたら私達優先、良いわね?」

「はいよ」「了解」「ギギ」


全員頷いたのを見て、中に入った。

どうやら中の連中は、"お楽しみ"の最中だったみたいだ。


「……ちっ、ゴミどもが…」


私は奥の様子を見て、思わず吐き捨てた。

商品棚が押し退けられ、中央の広いスペースに十数人の女たちが"楽しみやすいように"紐で拘束されている。

その周りには10人ほどの男たち、ここの支配者気取りの連中が酒を飲みながら談笑していた。

ほとんどが半裸で、武器すら身につけていない。


まずハルナが光の剣を出現させて操り、2人を斬り裂いた。

私は水圧上昇で魔力を放出して、大量の水を出現させて操り、集まっていた3人を包み込んだ。

水の中で溺れている3人は身動きも取れないまま死んでいく。

近接組も各々の武器で殺していっている。それほど時間もかからずに駆除は終わった。


「…終わったわね」


私は周囲を見渡し、男たちの動かなくなった死体を確認する。

床には血が広がり、異様な静けさが場を支配していた。


「カイ、タツヤは外に出てモンスターの警戒をしてくれる?」


「了解」「ギギ!」


タツヤとカイは外に出ていく。

私は、拘束されていた女たちに目を向けた。


「大丈夫ですか?」


怯えた目でこちらを見る彼女たち。

だが私たちの姿が普通でないことに気づくと、何人かが身を強張らせた。


「だ、大丈夫…」


一人の女性が震えながら答える。


「あなたたちは…?」


「私たちは…悪魔です。助けに来ました」


「悪魔……?」


「ええ。とりあえず拘束を解きますね」


私はそう言いながら、拘束を解いていった。

中には衰弱している者もいるが、皆無事だったのが不幸中の幸いだ。私は暖かいお湯を創ってあげて、それを彼女達の体に包みこませて洗っていく。

ついでに使い終わったお湯で床の血を集めて外に捨てると、アイテムボックスから全員に下着と衣服、靴を渡す。


「これ着てください」


「あ、ありがとうございます…」


彼女達はいそいそと着替えていく。


(どうにか眷属化まで持っていきたいけど、どういう風に話を進めようかな…)


考えていると彼女達が着替え終わったので、話しかけた。


「それでなんですけど、あなた達はこれからどうしたいですか?」


「どうしたい…?」


「はい。分かっているとは思いますが、外は化け物だらけの世界になってしまいました。

このまま生き延びるには、それ相応の力が必要です。

私たちは拠点を持っていますし、安全も確保されています。

でも、それでも生き抜く力は必要なんです」


そう言うと、女性たちは顔を見合わせ、不安そうな表情を浮かべた。


「……でも、戦うなんて…私たち、そんなこと…」


「もちろん、無理にとは言いません。でも、もしあなたたちが"力を持ちたい"と思うのなら、私たちはそれを与えられます」


「力を……?」


「"眷属化"といって、私と契約すれば、あなたたちは今よりも強くなります。

それに、私たちが力を鍛える方法も教えます」


私はできるだけ優しく、しかし真剣に語りかける。


「もちろん、強制ではありません。でも、私たちは"家族"として支え合っています。あなた達も、家族になりませんか?

そして、あなた達を弄んできたような人間たちを、私たちと一緒に殺しませんか?」


そう言うと、彼女達が縋るような表情を浮かべていく。


「……生きたいです」


最初に口を開いたのは、長い黒髪の女性だった。

震える声だったが、その瞳には強い意志が宿っている。


「私…ただ怯えているのはもう嫌です。もし、もし力を手に入れられるなら……欲しいです」


「私は…殺すために…」


「私もお願いします……!」


次々と手を挙げる女性たち。

私は小さく頷いて、眷属化の説明を始める。


「まず眷属化の説明をしますね。まず私の眷属となることでハーフデーモンという種族になります。

そして私に危害を加えることができなくなり、私の命令に逆らえなくなります。

それと、あなた達が獲得したMPの10%を自動で徴収するようになります。

ステータスにある攻撃と魔法、そして身体能力が上昇します。あと暗視と排泄をしないというのもあります」


私は赤い魔法陣を床に出現させた。


「その条件を聞いたうえで、私の眷属になりたい人はこの魔法陣の上に立ってください」


そう言うと続々と歩いてきて、全員が魔法陣の上に立った。

そして姿が変化していく。肌は灰色に、頭からは捻れた黒い角が生え、瞳は金色へと変わった。


「す、凄いです!!」

「力が溢れてきます…!」

「あぁ、最高の気分…」


(す、凄いハイテンションね。私もこうだったのかな)


ちょっと引きながらも、落ち着くまで待った。

少し経って落ち着き、私達はここを出発した。


「それじゃあ行きましょうか」


「「「はい!」」」


「ハハハ。すげーテンションだ」「ギギ」


「さ、帰るまでが遠征ですよ〜」


カレンがそんなことを言いながら、私達は拠点に帰っていった。







《??視点》

小型ビルの屋上から、全身鎧に身に纏った男が、その様子を眺めていた。


「悪魔が人助け……?どういうことだ…?」


その男の顔には困惑の表情を浮かべていた。


「まぁ、様子見で良いか…?」


そう呟くと、青白く光る魔法陣を出現させて、そこに入り消えていった。




《ヒロキ視点》

心配性のヒロキはいつでも駆けつけられるのように、ショッピングモールの屋上駐車場で千里魔眼を使い見守っていた。

そして、この鎧の男も発見していた。


「なんだ、こいつ?」


そう呟きながら、ヒロキの顔には困惑の表情が浮かんでいた。鎧の男が魔法陣に入って消えていく。


「なんだ、こいつ?」


再度同じことを呟きながらも、眷属達が出発したので見守りを続行した。

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