目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第13話 強敵

「下等生物が…」


それが戦闘再開の合図となった。

サイクロプスは強く踏み込んで、その巨体から考えられないようなスピードで迫ってきてストレートを放ってきた。

俺は横にステップして避ける。サイクロプスは間髪を入れずこちらを振り返って前蹴りをしてきた。

それを戦斧の柄で受け止める。


「ぐっっ…」


サイクロプスの蹴りの衝撃が腕に重くのしかかる。

戦斧の柄越しとはいえ、まともに受けるとまずい。

俺はどうにか受け流して戦斧を振るが、奴が後ろに飛び避けた。


(こいつ、見た目に反して動きが速いな…戦斧じゃ当たらん)


俺は黒樹の戦斧をしまって棍棒を取り出した。

サイクロプスはまた強く踏み込んで殴りかかってくる、それを避けると奴の顔に手を向けて炎を放った。


サイクロプスは素早く顔を背け、その場から離れようとする。俺はその隙を逃さず頭に棍棒を振り下ろして叩きつけた。

奴は少し仰け反るがすぐに間合いを取る。


(やはり硬い…)


手応えはあったが、決定打にはならない。サイクロプスは頭を振りながら体勢を立て直し、鋭い目でこちらを睨みつける。

怒りの唸り声を上げると、奴は地面を踏み締め、再び突進してきた。

身構えると、サイクロプスは急に止まって地面を蹴った。


(フェイント…!)


アスファルトの破片が飛び散り、腕で目を守り視界が遮られる。その一瞬の隙を突き、サイクロプスが拳を振り上げるのが見えた。

俺は反射的に横へ跳ぶ。直後、奴の拳が地面を砕いた。奴は拳を引き抜くと、さらに間合いを詰めてくる。


俺は影へ多めに魔力を送る。サイクロプスはまた前蹴りをしてきた。それはもう見たことがある行動だ。俺は最小限の動きで避けて近寄り頭に棍棒を振り下ろす。


奴は少しよろめいた、追撃をしようとすると、奴はニヤリと笑みを浮かべ左手で殴ってきた。

反射的に右腕で防ごうとするが、受け止めきれずに吹っ飛んで転がされる。


(…やられた。賢いなこいつ)


転がりながらも体制を立て直す。右腕の骨から痛みを感じる、ヒビでも入ったか。

サイクロプスはまた迫ってきているが、俺の影から20体ほどの影小鬼が這い出てきているのを見て足を止める。


「奴の周囲に散らばって攻撃しろ!」


そう命令すると広がりながら散開し、サイクロプスを囲んだ。俺はまた影に魔力を送る。

サイクロプスは襲いかかってくる影小鬼たちを1体1体倒していく。俺は棍棒をしまって黒樹の戦斧を取り出した。

そしてまた影から大量に影小鬼が出てきて同じように命令する。


俺は翼を広げて飛び上がり、小さい炎の球体を創る。

そして影小鬼の対応に追われているサイクロプスに放った。

サイクロプスに着弾すると全身に燃え広がった。


「グォォオオオオオオ!!」


奴は苛立ったのか両腕を振り上げて地面に叩き付けた。空気を震わせるような轟音と共に地面に亀裂が広がってクレーターが出来上がる。


そしてサイクロプスは自慢の脚で飛び上がった。ここまで迫ってくる奴のジャンプ力に驚きながらも、俺は翼を羽ばたかせて後ろへ少し移動する。


サイクロプスの手は空を切り、呆然とした顔をしている。それを見た俺は満面の笑みを浮かべて、両手で戦斧を振り上げた。


「空中では移動できないよな」


俺はそう言いながら、全力で戦斧を振り下ろした。

サイクロプスは腕で頭を守り、何とか生き残ろうとするが、腕ごと全身を真っ二つに斬り裂いた。


サイクロプスの死体が地面に落ち、光に包まれていく。


〔MP +10000〕

〔ユニークモンスター"格闘鬼"を討伐しました。ユニークスキル"鬼の身体"を獲得します〕


「…知らない情報だらけだ」


そのスキルの情報が頭に流れ込んでくる、それは鬼の身体能力と強靭さを手に入れるスキルだった。

俺はサイクロプスのドロップ品が無いか降りて見に行く。

そこには黒く大きな宝石がある黄金の指輪があった。


「おぉ、悪くないな」


手に取って右手の人さし指にはめ込んだ。サイズはピッタリだ。俺は周囲を警戒しながら他のドロップ品を回収していった。




《ショッピングモール》

俺は映画館の入口へ戻った。ハルカが出迎える。


「おかえ…怪我してるじゃないですか!ハルナ!」


「は、はい!」


ハルカに座らされ、ハルナが光魔法を使い俺の傷を治していく。


「凄い音がしてましたけど、何と戦ってたんですか?」


「…4mぐらいはありそうな一つ目の巨人だったな、たぶんサイクロプスだろう」


「そんなのが……まだいるんですかね」


「いや、おそらくあれと同レベルのサイクロプスはいないだろう。あれはユニークモンスターという特殊なモンスターだったらしい」


「なるほど」


俺は座りながら千里魔眼を使い、ショッピングモールの中を移動させて、何もいないのを確認したあと上空に視界を移動させた。周囲を見渡すと何もいなかった。


「…少し眠る、しばらくは何も現れないだろうが、何かあったら起こしてくれ。各々しっかり休憩するようにな」


「はい!」


そうして俺は眠りについた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?