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第10話 ショッピングモール

色々と検証が終わった俺は、千里魔眼を使ってショッピングモールを見ていた。

そこはまだ物資がかなり残っていてる…が、そこには反社のような連中が巣食っていた。

他の一般人を奴隷のように扱っているので、ろくでもない連中なのは間違いないだろう。


救いにいって眷属を増やすチャンスだが、人質として扱われたら面倒だな。

ふむ、そうだな。モンスターに偽装して襲いかかってみるか?山羊頭だとバレる可能性があるから何か、ボロ布を被って行ってみるか。






【反社視点】


この、力こそが正義の世界になったのは、後ろめたいことを平気でしていた俺達にとっては最高の世界だった。


好みの女がいれば好きに犯して、自分よりも弱い一般人は奴隷のように扱った。


逆らったやつは殺してモンスターの餌にしてやったし、それを見せつけたら逆らうやつは次第にいなくなった。


ここには食料も豊富にあったし、最高の世界だった。そう、最高の世界だったんだ。あの化け物が来るまでは…


「グォォォオオオオ!!!」


そいつは、ボロ布を頭に被った灰色の肌をした化け物だった。

鈍い音が響くたびに、一人、また一人と仲間が血飛沫を上げて倒れていく。


「う、うあああっ!!」


「何なんだよこいつは!? 魔法も効かねーしよ!!」


俺たちは武器を手に応戦しようとした。だが、そいつの圧倒的な力の前では何の意味もなかった。


黒い根が蠢く戦斧が振り下ろされるたび、逃げ惑う仲間がなすすべもなく殺されていく。


「く、くそ……お前ら! 取り囲んで叩き潰せ!!」


指示を出した瞬間、化け物が蝙蝠のような大きな翼を広げた。


バサァッ!!


「な、飛びやがった!!」


誰かが叫ぶ。しかし、そいつはただ静かに俺たちを見下ろしていた。

それだけで理解できた。コイツは、俺たちとは生きる次元が違う。


「グォォォオオ!!!」


化け物が低い唸り声を上げると、気づけば影のような小さい化け物が俺たちの体にしがみついていた。


「や、やめろ…離せ!!」


「ぎゃあああああ!!!」


仲間の悲鳴が響く。

化け物は動けない仲間を一人一人殺していっている。


「に、逃げるぞ!! こんなの相手にしてられるか!!!」


必死に逃げようとすると、首を掴まれた。

そして床に投げられて倒れ、化け物は斧を振り上げる。


(あ、終わった…)


最後にそう思った瞬間、俺の視界は真っ赤に染まった





【ヒロキ視点】

静まり返ったショッピングモールで千里魔眼を使う、もう反社の仲間はいないようだ。俺はボロ布を外して一息つく。


「ふぅ、慣れないことしたな。だが上手くいって良かった」


しかし、人でもMPを獲得できるとは驚いたな。モンスターポイントとは何だったのか。

ろくにレベルを上げていない連中で助かった。だいぶ楽に殺せた。


その辺に転がる無数の死体を眺めて、ようやく気付く。


(そうか。俺は、人を殺したのか)


モンスターを殺す感覚で殺していた

俺は血に塗れた戦斧を見下ろす。根が若干激しく蠢いているように見える、まるでまだ獲物を求めているようだった。


「…何とも思わないもんだな」



ーーーーーーーー



俺はモールの奥へと進み、奴隷のように扱われていた人間たちの元へ向かった。

そして服売り場の前で足を止める。入口を塞ぐように無造作に積まれた棚や箱。

中にいる奴らを逃がさないための簡易的な檻だな。


「…さて、と」


俺は塞がれていた障害物を払いのける。崩れた棚の音が響くと、内側から怯えた息遣いが聞こえた。


薄暗い店内、隅に縮こまる十数人の人影。

大半が女で、男が3人ぐらいだな。汚れた服を身にまとい、怯えた目でこちらを見つめている。


「…俺は元人間の悪魔だ。助けに来た」


そう言うと、彼女たちはしばらく動かなかった。まるで、何を信じていいのか分からないとでも言うように。

俺は血に濡れた戦斧をアイテムボックスに仕舞う。


「お前達を監禁していた連中は全員始末した。お前達には2つ選択肢がある。

1つ、俺に着いてきて俺の眷属になること。

2つ、俺の支援もなく他の避難所に行くことだ」


彼女達は真剣に耳を傾ける。


「1つ目は俺の支配下になることは間違いないが、奴らほどの性根は腐ってない。

物資も十分にあるし、ある程度の生活は約束する。もちろん物資集めなどで働いてもらうことになるがね。

2つ目は自力で避難所に行くことだ。ここからだと大宮の避難所が一番近いな。まぁ道中はモンスターもいるだろうしオススメはしない。

5分間だけ時間をやる、質問があれば言え」


すると気弱そうなエルフの男性が話しかけてくる。


「あの、眷属になるとどうなるのでしょうか」


「ああ、ハーフデーモンという種族になって攻撃と魔法、それに身体能力が上昇する。

ついでに排泄もしなくなるし、暗視という暗くても物が見えるようになる。

デメリットは俺の命令に逆らえなくなる事と、危害を加えることが出来なくなること。

そして獲得したMPの10%を自動で徴収する。以上だ」


俺の説明が終わると、服売り場に沈黙が広がった。


皆、真剣な表情で考え込んでいる。


当然だろう。これまで自由を奪われてきた人間が、新たな支配者のもとに行くか、それとも命懸けで自由を求めるかを迫られているのだから。


数秒後、一人の女性が口を開いた。


「…もし、眷属になったら、私たちは戦わなければいけませんか?」


「ああ、そうなるだろうな。分かっているとは思うが、前とは違う世界と言っても過言ではない。

生きる力を身につけることも大事だと、俺は思う」


「……」


女性は黙り込んだが、俺の言葉をしっかりと受け止めたようだった。

やがて、一人の獣人の男が立ち上がった。


「…俺は、眷属になります」


「ほう」


「正直、もう何もかも嫌になった。でも…死ぬのはごめんだ」


「いいだろう」


俺は床に赤黒い魔法陣を展開し、眷属にする準備を整える。


「他にはいないか?」


そう問いかけると、次々に人が立ち上がり、魔法陣の上に歩み寄ってきた。

ふむ、全員だな。まぁ実質生きるか死ぬかの2択だからな。


「…よし、決まりだな。では魔法陣の上に立て」


ゾロゾロと歩いていき、魔法陣の上に立つと、灰色の肌に金色の瞳、捻れた角が生えたハーフデーモンへと変化していく。


「うおおお…!!力が湧いてくるぞ!」


「凄い…!何でもできそう…あっははは!!」


例のごとくハイテンションになった。落ち着くまでしばらく待つことにした。



5分後……

落ち着いた眷属達に命令をする。


「よし、それじゃあ最初の任務だ。このショッピングモールにある物資を片っ端から回収するぞ。服も食料も日用品も全部だ」



「「「はい!!」」」


…相変わらずの忠誠心凄くなるんだな。まぁ良いだろう。

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