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第2話 モンスター

「行くとするかね…」


腰に毛布を巻いた上半身裸で裸足の蛮族スタイルである俺は、早速玄関の扉をソーッと開けて外を覗き込んだ。

アパートの周りには何もいなさそうなので外に出てみる。


「こりゃひでーな」


俺が住むアパートは住宅街にあったのだが、そこら中の家が荒らされている。

壁を破壊されたり、窓を割られていたり、こう見ると俺が無事なのは奇跡だったのではないかと思ってくる。

あるいはモンスターにモンスターと間違われたか。


「さてと、とりあえずコンビニが近いか?いや、待てよ……物資ならそこら中にあるじゃないか」


俺は荒らされている家に目を向け、ニヤリと口を歪める。


「こんなことになったんだ、腐らせる前に有効活用してやろう」




そうして俺はそこら辺の荒らされている家にお邪魔していった。


ほとんどの家がモンスターに荒らされていたが、缶詰や調味料関係は破損しているもの以外は残っていた。


しばらく漁って、また次の家に入る。

窓ガラスを棍棒で割り、鍵を開けて入っていく。もう手慣れたものだ。

足の裏を怪我しないかと少し不安だったが、素足でガラスを踏んでも大丈夫だった。悪魔だからかステータスの防御の影響なのかは分からない。


中に入りキッチンまで行くと、そこには先客がいた。イノシシ並みのサイズがあるネズミだ。

大ネズミは俺を見ると一直線に向かってきた。俺はタイミングを合わせて、棍棒を叩き込む。


大ネズミはその打撃で動かなくなり、光に包まれていった。

すると光の真上にメニューと同じような半透明のポップアップが出てきた。


〔MP +10〕


「おいおい、いよいよゲームだな」


思わずそう呟くと、眺めていると光が完全に消えた。

そこには若干色が悪い肉のブロックが落ちていた。


「ええ…ネズミ肉か。まぁ今となっちゃ貴重な食料だけど」


俺はネズミ肉を掴んでアイテムボックスへ入れた。

初めてのモンスターを倒したが、なかなか冷静に対処できたような気がする。


しかしこの大ネズミ1体で10MPか。

まぁ分かりやすく雑魚だったからこんなものだとは思うが、さすがにしょぼいな。

一息ついた俺は、また使えそうなものを探し始めた。




「ふぅ、結構集まったな」


俺はアイテムボックス内の集めた戦利品を眺める。


ーーーーーーーー

〔水 2L: 42〕

〔麦茶 2L: 16〕

〔塩 1kg: 15〕

〔塩 小瓶: 32〕

〔醤油 大ボトル: 24〕

〔砂糖 1kg: 18〕

〔めんつゆ 大ボトル: 8〕

〔缶詰 鯖: 6〕

〔缶詰 焼き鳥: 6〕

〔缶詰 トマト: 2〕

〔カップ麺 醤油: 53〕

ーーーーーーーー


ふむふむ、しばらくは困らなそうだ。

他にもフライパンやら包丁やらも手に入れたので完璧だ。


「さて、とりあえずの食料は確保できたな」


アイテムボックスを閉じ、改めて周囲を見渡す。

辺りは静まり返っているが、いつモンスターが襲ってくるかわからない。

この姿になってから体が軽くなったような気はするが、戦闘経験が豊富にあるわけでもない。

慎重に動くに越したことはないだろう。


「次の問題は、安全な寝床と服…そうだ、服忘れてたな。一番重要なのに」


今はまだ日が出ているが、夜になれば視界も悪くなるし、モンスターの活動も活発になるかもしれない。

俺の見た目を考えると、避難所に行くのはリスクが高い。

となると、しばらくは身を隠せる場所を確保する必要がある。


「となると、適当な家を拠点にするのがいいか?」


俺のアパートは狭いし、元々の備蓄も大したことがない。

ここらの住宅街には一軒家も多いし、モンスターに襲われた家なら、住人が避難して無人になっている可能性が高い。


問題は、家主が帰ってきたときに俺が侵入者になってしまうことだが……いや、この状況じゃいくらでも言い訳は効くか。


「そうと決まれば、拠点探しと服探しかな」


毛布一枚の格好はやはり心もとない。

特に、大きく動くたびにズレ落ちそうになるのが厄介だ。

今のところは紐で固定しているが、さすがにこのままでは戦闘になった時に支障をきたしそうだ。


「まぁ、適当なクローゼットを漁らせてもらうとしよう」


そうして、俺は次の家へと向かった。




静かに玄関の扉を開け、中に入る。荒らされた形跡はあるが、家具は大丈夫そうだ。

慎重に足を踏み入れ、クローゼットのある部屋を探す。


「お、ここか?」


寝室らしき部屋に入り、タンスを開けてみる。

出てきたのは男性用のスウェットとTシャツ。サイズが合うかは微妙だが、裸よりはマシだろう。


「とりあえず着てみるか…小さいなぁ」


スウェットを引っ張り出し、袖を通してみる…が、ピチピチどころか肩の部分が裂けてしまった。


「くっそ…ダメか」


俺の体格では普通の服はサイズが足りない。

仕方なく、ゆとりのありそうなTシャツと短パンを選ぶ。これならギリギリ着られそうだ。


「ふぅ…何とか形にはなったか」


毛布よりはだいぶ動きやすい格好になり、少しだけ安心する。

他にも着れそうなものをいくつか持っていく。


「そういや、マットレスは持っていけるか?」


俺は寝室にあったマットレスを片手で持ち上げて、アイテムボックスに入れようとすると、スッとマットレスが消えた。


「へぇ、このサイズでも持ち上げられれば入れられるんだな」


ついでに掛け布団もアイテムボックスにぶち込むと、家を出た。

活動拠点を見つけるため、住宅街を歩く。

この辺りはそこら辺で見かける量産型の家しかなく、拠点にするには少し微妙だ。なんなら荒らされているしな。

いや、そういえば学校があったな。体育館なんてちょうどいいかもしれない。


俺は歩き出す。住宅街を抜け、目指すのは近くの学校。


「ただ、問題はモンスターがいるかどうかだな…」


これまでの様子を見る限り、モンスターたちはそこら中を荒らしまわっている。

人間が避難所として使うにはうってつけの学校が、無事であるとは考えにくい。


「まぁ、行ってみないことには分からんか」


俺は警戒しながら歩を進めた。

住宅街を抜けると、大通りに出る。信号機は点いておらず、放置された車が散乱している。


「荒れてんなぁ…」


車の窓ガラスは割れ、ボンネットには巨大な爪痕のようなものが残されている。すでに廃墟街のような様相だ。

人の姿は見えず、代わりに小さな影が動いているのが見えた。


「ぐぎゃぎゃ!」


(あれは…ゴブリンか)


ゴブリン、緑色の肌に小柄な体型、そして醜悪な顔。

ファンタジーでは定番の雑魚敵だが、まさか現実でも見かけることになるとは。

するとゴブリンと目が合った。ゴブリン俺のことをジッと見ると突然雄叫びを上げた。


「ぐぎゃあああ!!!」


その声はこの辺り一帯に響き渡った。そして遠方から大量のゴブリンが迫ってきているのが見えた。

20体以上はいるように見える。 


「ハハハ、楽しくなりそうだな」


不思議と恐怖は感じなかった。歓喜、下等な生物を蹂躙できるという歓喜があった。


ゴブリンたちは興奮した様子で武器を振り上げながら突進してくる。

中には棍棒や包丁を持っているものもいる。


「さて、どれほどのものか試させてもらおうか」


俺は棍棒を構え、迫りくるゴブリンの群れを迎え撃つ。最前列の一匹が跳びかかってきた。


「馬鹿が」


横薙ぎに振るった棍棒がゴブリンの顔面を捉え、鈍い音とともに頭蓋が砕ける。

ゴブリンは悲鳴を上げる間もなく光に包まれ、消滅した。


〔MP +15〕


「さっきのネズミよりは多いな」


残りのゴブリンたちは怯むことなく襲いかかってくる。

二匹目が包丁を振りかざしながら突進してくるのを見て、俺は咄嗟に手元に意識を集中させた。


「燃えろ」


ボウッ!


俺の手から赤黒い炎が噴き出し、ゴブリンに直撃して燃え上がる。

熱さに苦しみ悶えながら転げ回るゴブリン。すぐに光となり、消滅した。


〔MP +20〕


「ん、獲得MPが違うな。個体差があるのか」


すると今度は三匹が同時に襲いかかってくる。

だが、不思議と焦りはない。むしろ心の奥底からこみ上げてくるのは、戦いの愉悦。


「いいぞ…もっと楽しませろ!!」


俺は獰猛な笑みを浮かべ、迫るゴブリンたちに向かって再び棍棒を振りかぶった。

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