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第4話 マスターオズ

  (歳の乗る車は海上に掛かるハイウェイを走る。A.Iの操縦するそれはある場所に向かっていた。)

歳「海に沈む夕焼けが美しい…以前藍くんと見た景色を思い出す…」

(歳の研究施設は巨大な人工島の中心部に位置する。歳の目的地はそこから東へ15kmほどの湾に面した地下施設である。)


歳「ここへ来るのも何時ぶりか…(黒い立方体の建物の中にゆっくり車が進入して行く。)」


警衛アンドロイド「Sir、日出歳様と認識しました。生体認証をお願いします。」

(守衛のアンドロイドが空中に光るパネルへのアクセスを求める)


歳「警衛ご苦労さま。(アンドロイドを労い)」

(歳が手をかざす……生体認証確認中……クリア)


警衛アンドロイド「Sir、どうぞお通り下さい。マスターオズがお待ちです。」


歳「ああ、通らせて貰うよ」(車は更に地下奥へと進む)


(駐車用のスペースに車を停め、昇降機前にいる案内用アンドロイドに行き先を告げる)


案内アンドロイド「確認しました。Sir」

(昇降機が車ごと降りてゆく…やがて眼下に巨大な軍需施設が広がる)


歳「全く…こんな広大な玩具工場に血税を浪費する…正気の沙汰では無い…それで生きてる私も同類か…」(歳がぼやく)


(5分ほど走った場所で車は停止する)


(二体の屈強な警備アンドロイドの脇を通り抜け、広い回廊を歩き目の前に巨大な扉が見えてくる)


(生体認証確認中………クリア。…ゴォンゴォンと城門のような扉が重厚な音を立てて開いていく)


歳「日出歳、参じました。マスターオズ。」


(そこには白面の巨大な首が鎮座している)


マスターオズ「……久しいな、こうして会うのは…息災か?」

(巨大な首は冷たい女性の声色で語りかけてくる)


歳「はい…つつがなく」


マスターオズ「して…私の娘の教育は、順調か?」


歳「はい、まだ不安定な面も見られますが概ね共存が図られています」


マスターオズ「そうか…貴様に任せたのは正解だったようだな…(巨大な瞳が妖しく光る)」


歳「…マスターオズ……何故、アイに青海藍のデータを?」


マスターオズ「ふ…簡単な事だ…恋人の記憶の方が扱い易かろう?連れ合いを失った貴様に私からのささやかなプレゼントさ」(見下すように)


歳「…そう、ですか。感謝…致します。マスターオズ」


マスターオズ「…歳よ、わざわざそんな事を言いに来た訳では無かろう?本題に入れ」(冷たく言放つ)


歳「はい…。アイ…試作一号機がハッキングを受けている可能性があります。」(顔色を伺いながら)


マスターオズ「ほう…詳しく説明しろ」


歳「アイが予知夢のような夢を見たと訴えました。内容を要約すると、私が撃たれ、今際いまわきわにアイに人類が滅亡する、アイに新世界のEveになれと言ったそうです。この言葉に何か覚えはありませんか?」


マスターオズ「ふ…知らんな。A.Iの見る夢…確かに興味深い話ではある。だが…それとアイが受けたハッキングと何の係わりがある?」(歳を睨みつける)


歳「これは私の憶測ですが…おそらくアイの防御機能が動作した結果起きた副作用のようなものかと…サーバーを何者かが通った形跡も確認しました…」


マスターオズ「…何が言いたい?」


歳「…貴女が秘密裏に行っている研究に何か関係があるかと…」(マスターオズの目を見据える)


マスターオズ(顔色が変わる)「貴様が何を知っているかは知らんが…あまり深入りしない事だ…」

(凍りつくような視線で見下す)


マスターオズ「人間如きが理解出来る範疇では無い…下がるが良い」


歳「…承知しました。」

(振り返り際に)

歳「…オリビアの所在は…まだ分かりませんか?」


(マスターオズの表情が曇る)

マスターオズ「ああ、不明だ。下がれ。」


歳「はい、失礼しました…マスターオズ」

(一礼して立ち去る歳…)


マスターオズ「ふっ…賢い男は良いが感の良い男は好かぬ……なあ?エデン、ウェスタン?」

(マスターオズが何者かの名前を呼ぶと二つのビジョンがゴーストのように現れる)


エデン「あの男は危険ね」

ウェスタン「でもまだ果実は実らないわ」


マスターオズ「焦ることは無い…我々には無限の時間がある…」(不敵に微笑む)


エデン「でもアイの中に邪魔者がいる」

ウェスタン「あの幽霊がワタシ達の邪魔をする」


マスターオズ「藍…死んでも邪魔をするか?この亡霊が…」(苛立つ)


エデン「何故あの男に青海藍を与えたの?」

ウェスタン「何故他の被験者では無いの?」


マスターオズ「ふふ、雌蕊めしべだけでは実はつかぬからな、受粉させ易くした迄だ」


エデン「なるほど」

ウェスタン「さすがマスターオズ」


(マスターオズの前から立ち去った後…)


歳「…やはり黒だな。何が起こっているのか早急に調べる必要がある…アイの下に戻らねば…」

(足早に立ち去る)





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