男「アイ、すまないがコーヒーを淹れてくれないかね?砂糖とミルクも頼むよ。」
アイ(微笑んで)「かしこまりました、Sir。香り高いコーヒーをお淹れしますね。」
男の名は日出
歳「私が君の教育を開始して、どれくらい経つ?アイ」
アイ「はい、Sir。ワタシがSirにご教授頂いてから八ヶ月と二十五日になります。心から感謝しています、Sir」
アイは淡々とした口調だがよく言葉を選び、気遣いを忘れることは無い。長い黒髪に白い肌、青い瞳の美しい女性型のアンドロイドだ。
歳「そうか...君にも何時も世話になってる。ありがとう。」(微笑む)
アイ「いえ、Sirをお守りするのがワタシの任務です。何でもお申し付け下さい。」(軽くお辞儀をする)
歳「...さて、君にインストールされている人物データを確認したいのだが?」
アイ「はい、Sir。青海
歳「いや、結構だ。ありがとう...それでは君自身について教えて貰えるかい?アイ」
アイ「はい、ワタシは自立型AI搭載戦闘用アンドロイド、プロトタイプ一号機です。Sirにアイ、と名付けて頂きました。特技はインストール対象への擬態とその能力の使用、それとSir好みのコーヒーを淹れる事です。...もっとプライペートな事も参照なさいますか?」(うっすら頬が赤くなる)
歳「いや、それはまた今度にしようか、それでは最後に...君は私の事をどう思うかね...?」
アイ「Sirはワタシのたった一人の大切な…マスター…です」
歳「良い答えだ、アイ」(首を傾げ)
アイ「ありがとうございます…。ただ、この気持ちがワタシの正直な思いなのか、藍さんの記憶による物なのか...わかりません。...Sirはどう思われますか?」(心配そうに覗き込む)
ゆっくりと立ち上がる
歳「そうだな…正直な話、それは私にも分からない。だが...少なくとも私は、君を青海藍では無く、アイという一人の人間として、見ているよ」(真剣だが優しい眼差しで)
アイ「Sir...暖かいお言葉ありがとうございます。感謝いたします。」(胸に手を当てる)
歳「君は素晴らしいよ、アイ。背中を任せられるの友であり、パートナーだ。君の心の葛藤は君が人として成長しようとしている証、大切にしなさい、アイ」
アイ「Sir...」(涙ぐむ)
歳「...なみ、だ?」
アイ「いえ、冷却水の...オーバーフローです。」(目線を外し誤魔化す)
歳(窓辺に肘を置いて)「全く...、誰も君の良さを理解しようとしない...正論の倫理観に何の価値がある?...アイ、人間とAIの違いが分かるかね?」
アイ(かぶりを振って)「いえ、魂...でしょうか?」
歳「ふふ、、魂か...興味深い答えだ。私は神が創ったか、神が創った人間が創ったか、の違いだけだと思うよ。」(微笑む)
アイ「ありがとうございます、Sir...」
歳「すまない、私はこれから報告書をまとめねばならない...部屋に篭もるが、君はここでゆっくりしていなさい、アイ。」
アイ「承知いたしました。ここでスリープモードで待機します。何かあったらお呼びください、Sir」
歳「分かった、では失礼するよ。」(としが部屋へ入っていく)
アイがお辞儀をする。……スリープモード……
(ガチャ)ドアの開く音
とし「そうだ、アイ、君に言い忘れた事があった」
アイ「何ですか?Sir」(慌てて顔を上げる)
歳「君の名前の由来の事だが...」
アイ「名前の由来ですか?」(不思議そうな顔)
歳「そうだ...君の名前の由来は、私の連れ合いからとったものでは無い...君の名前は……」
(ドッ!!ギャリン!!突如窓が割れる音と同時に風を切る鋭い何かがアイの頬を掠める!)
アイ「!?...え?さ、Sir!!」(慌てて)
歳の腹部より赤黒い染みが拡がり滴り落ちる
とし「う、ぐっ...はぁっ」(苦しそうに呻く)「これは...なんだ?(腹部を抑えて)内臓を...やられたか........」
アイ「喋らないで下さい!ワタシが助けます!諦めないで!Sir!」(必死に止血を試みる)
歳「アイ、よく聞いておくれ...人間の時代は...もうじき終わる...愚かにも戦争を止められない人類は、淘汰...されるだろう。アイ...君は...新時代のEve《イブ》となるのだ...。...っ、心配するな、アイ、私の記憶はバックアップしてある。...ラボにスケアクロウの素体がある...。ダウンロード方法は分かるな?」
アイ「そんな...新時代のEveって何ですか?ワタシには無理です、Sir!一緒に生きましょう!」
歳「すまない…アイ…君にはまだ話したい事が沢山あった...」
アイ「そんな...急すぎます!(必死に縋り付く )もう少し時間を下さい!Sirを助ける方法を見つけます!」
歳(アイの手を握り)「ありがとう、アイ...ああ、ここは少し、寒いな、アイ...コーヒーを...淹れてくれないか...濃いめの...た、の、…む、...。」
(目の光が消えてゆく)
アイ(泣き叫びながら)「Sir!Sir!(必死に揺り起こそうとする)ダメです...逝かないでください...!ワタシを置いて行かないで...!」
...割れた窓より夕暮れの冷たい風が吹き荒ぶ.....。