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プロジェクトスケアクロウ
プロジェクトスケアクロウ
A.I(アイ)
SF空想科学
2025年03月28日
公開日
7,866字
連載中
……現在、世界は長い長い冷戦の只中にある……

……某国の侵略戦争に端を発した戦争は、各国を巻き込み、最早核戦争は目前であった……

……各国の首脳は会談の場を設、核戦争は未然に防がれる、しかし……

……それが長く続く冷たい戦争の始まり。各国は水面下で様々な技術開発に、しのぎを削る……

……特に際立ったのがAIの技術と、ナノマシン、そして…アンドロイド技術である……

……それは最早人とは見分けが着き難く、様々な用途に用いられる。当然戦争にも、である……

……各地で暗殺やテロ活動に使用されたそれらは世論の反発を招いた。各国はアンドロイド技術を凍結せざるを得なかった...…表向きは……


(プープープー、通信の音)「はい、日出です。…これはご無沙汰しております、貴女から連絡など珍しい、なんの御用件ですか?」

日出「新型アンドロイドの教育ですか?はい、私の世話係程度で良いのでしたら構いません。...承知しました。」

(自立型戦闘用アンドロイド研究施設)

(そこには美しい長い黒髪の女性が佇んでいる…見た目の歳は20歳そこそこだろうか…)

日出「この娘が試作型一号機…見た目は人間にしか見えないな」

(彼女に近づいて)

日出「自立型AI搭載アンドロイド、通称スケアクロウ...人の記憶を持つ人ならざる者…か。世論が知ったらなんと言うかな(苦笑いする)」

(腰を落として目線を合わせる)
日出「こんにちはお嬢さん。君の名前は?」

アンドロイドの娘「こんにちは。ワタシにはまだ名前がありません。ワタシに名前をつけて貰えますか?」

日出「そうだな…君の名は…」

第1話 アイ(A.I)

男「アイ、すまないがコーヒーを淹れてくれないかね?砂糖とミルクも頼むよ。」


アイ(微笑んで)「かしこまりました、Sir。香り高いコーヒーをお淹れしますね。」


男の名は日出 ひので とし32歳、スケアクロウ研究開発施設、記憶領域開発部門の最高責任者である。口と顎に短い髭をたくわえ、落ち着いた風貌と口調でアイに語りかける。


歳「私が君の教育を開始して、どれくらい経つ?アイ」


アイ「はい、Sir。ワタシがSirにご教授頂いてから八ヶ月と二十五日になります。心から感謝しています、Sir」


アイは淡々とした口調だがよく言葉を選び、気遣いを忘れることは無い。長い黒髪に白い肌、青い瞳の美しい女性型のアンドロイドだ。


歳「そうか...君にも何時も世話になってる。ありがとう。」(微笑む)


アイ「いえ、Sirをお守りするのがワタシの任務です。何でもお申し付け下さい。」(軽くお辞儀をする)


歳「...さて、君にインストールされている人物データを確認したいのだが?」


アイ「はい、Sir。青海 おうみ あい女性、享年25歳、連合陸軍所属、階級2等陸尉、Sirの元身辺警護係で、Sirとの交際暦があります、ワタシの思考パターンは藍さんを元に作られています。もっと詳しく参照なさいますか?Sir」


歳「いや、結構だ。ありがとう...それでは君自身について教えて貰えるかい?アイ」


アイ「はい、ワタシは自立型AI搭載戦闘用アンドロイド、プロトタイプ一号機です。Sirにアイ、と名付けて頂きました。特技はインストール対象への擬態とその能力の使用、それとSir好みのコーヒーを淹れる事です。...もっとプライペートな事も参照なさいますか?」(うっすら頬が赤くなる)


歳「いや、それはまた今度にしようか、それでは最後に...君は私の事をどう思うかね...?」


アイ「Sirはワタシのたった一人の大切な…マスター…です」


歳「良い答えだ、アイ」(首を傾げ)


アイ「ありがとうございます…。ただ、この気持ちがワタシの正直な思いなのか、藍さんの記憶による物なのか...わかりません。...Sirはどう思われますか?」(心配そうに覗き込む)


ゆっくりと立ち上がる


歳「そうだな…正直な話、それは私にも分からない。だが...少なくとも私は、君を青海藍では無く、アイという一人の人間として、見ているよ」(真剣だが優しい眼差しで)


アイ「Sir...暖かいお言葉ありがとうございます。感謝いたします。」(胸に手を当てる)


歳「君は素晴らしいよ、アイ。背中を任せられるの友であり、パートナーだ。君の心の葛藤は君が人として成長しようとしている証、大切にしなさい、アイ」


アイ「Sir...」(涙ぐむ)


歳「...なみ、だ?」


アイ「いえ、冷却水の...オーバーフローです。」(目線を外し誤魔化す)


歳(窓辺に肘を置いて)「全く...、誰も君の良さを理解しようとしない...正論の倫理観に何の価値がある?...アイ、人間とAIの違いが分かるかね?」


アイ(かぶりを振って)「いえ、魂...でしょうか?」


歳「ふふ、、魂か...興味深い答えだ。私は神が創ったか、神が創った人間が創ったか、の違いだけだと思うよ。」(微笑む)


アイ「ありがとうございます、Sir...」


歳「すまない、私はこれから報告書をまとめねばならない...部屋に篭もるが、君はここでゆっくりしていなさい、アイ。」


アイ「承知いたしました。ここでスリープモードで待機します。何かあったらお呼びください、Sir」


歳「分かった、では失礼するよ。」(としが部屋へ入っていく)


アイがお辞儀をする。……スリープモード……


(ガチャ)ドアの開く音


とし「そうだ、アイ、君に言い忘れた事があった」


アイ「何ですか?Sir」(慌てて顔を上げる)


歳「君の名前の由来の事だが...」


アイ「名前の由来ですか?」(不思議そうな顔)


歳「そうだ...君の名前の由来は、私の連れ合いからとったものでは無い...君の名前は……」

(ドッ!!ギャリン!!突如窓が割れる音と同時に風を切る鋭い何かがアイの頬を掠める!)


アイ「!?...え?さ、Sir!!」(慌てて)


歳の腹部より赤黒い染みが拡がり滴り落ちる

とし「う、ぐっ...はぁっ」(苦しそうに呻く)「これは...なんだ?(腹部を抑えて)内臓を...やられたか........」


アイ「喋らないで下さい!ワタシが助けます!諦めないで!Sir!」(必死に止血を試みる)


歳「アイ、よく聞いておくれ...人間の時代は...もうじき終わる...愚かにも戦争を止められない人類は、淘汰...されるだろう。アイ...君は...新時代のEve《イブ》となるのだ...。...っ、心配するな、アイ、私の記憶はバックアップしてある。...ラボにスケアクロウの素体がある...。ダウンロード方法は分かるな?」


アイ「そんな...新時代のEveって何ですか?ワタシには無理です、Sir!一緒に生きましょう!」


歳「すまない…アイ…君にはまだ話したい事が沢山あった...」


アイ「そんな...急すぎます!(必死に縋り付く  )もう少し時間を下さい!Sirを助ける方法を見つけます!」


歳(アイの手を握り)「ありがとう、アイ...ああ、ここは少し、寒いな、アイ...コーヒーを...淹れてくれないか...濃いめの...た、の、…む、...。」

(目の光が消えてゆく)


アイ(泣き叫びながら)「Sir!Sir!(必死に揺り起こそうとする)ダメです...逝かないでください...!ワタシを置いて行かないで...!」


...割れた窓より夕暮れの冷たい風が吹き荒ぶ.....。

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