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第八話:稲川淳二の怪談ナイトの夜2

 一年後、私は再び「稲川淳二の怪談ナイト」のチケットを取るのに成功。勇んで参加したのであった。

 確かこの時に、物販コーナーで『生き人形』のDVDを購入している。


 それはさておき、その日も大いに怖くて盛り上がり、私は大満足して帰宅した。

 風呂に入っても、去年のように電球が切れて停電する事もない。

 ああやっぱり偶然だったんだなと安堵して、旦那に稲川淳二の語りの素晴らしさを熱く語ってから寝た。


 ここから先は旦那の体験である。


 深夜2時頃、旦那は何かの音で目が覚めた。どこからか小さく電子音が聞こえる。


 ……ピ、ピ、ピ、ピ……


 無視しようかとも思っても、耳障りな音なので気になる。旦那は起き上がって耳を澄ませて、あれ? と思った。音は隣室から聞こえる。隣の和室は、タンスや本棚に嫁のパソコンや本などでごちゃごちゃしているが、音が出る物などは無いはずだ。


 嫁は隣で熟睡しているので、仕方なく旦那は起き上がって隣の部屋に行ってみた。

 深夜だけども、街灯や隣のマンションの明かりで電気を点けなくても薄明るい。


 ……ピ、ピ、ピ、ピ……


 ずっと聞こえてくる電子音の方に近づいた旦那は、本棚の上の方に置かれた小さな目覚まし時計が鳴っているのに気が付いた。

 何だ、これだったのかと思い手に取って裏のスイッチを操作して音を止めた。

 どうしてこれが急に? とは不思議に思ったけども、まあ何かの拍子でスイッチが入ったのだろうと納得して布団に戻った。


 翌朝、旦那からその話を聞いた私は「ええ?」と驚いた。

 あの目覚まし時計は、形が気に入っていたので置き物として飾っているだけでずっと使っていない。そもそも電池が入っていない筈?

 急いで隣の部屋から目覚まし時計を持ってきてみると、時計の背後に何やら茶色い汚れがついている。


 嫌な予感がしつつ、電池を入れる場所の蓋をこじ開けてみると、中から放置された電池から滲み出た電解液でサビてガチガチになった電池が転がり出て、思わず悲鳴を上げてしまったのであった……。


 これ以来、「稲川淳二の怪談ナイト」に参加すると何か怪現象に遭遇する! と信じている。

 この年以来縁が無いのが残念だけども。

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