午前の授業を終え、昼休みになった。私の学校は学食が評判で、お弁当を持ってくる人はごくわずか。眞白もその一人だった。
「あ、悠真は弁当なのか。飯食ったら、また話そうな!」
学食に誘うつもりだったのか、春人と仁が声をかけてきた。私が弁当の包みを持っているのに気づくと、そう言って教室を出ていった。
眞白は私の時と同じように、一人で食べるのだろうか。それが気になって、弁当を選んだという理由もある。
眞白はカバンから弁当を取り出すと、周りをキョロキョロと見回した。いつも、眞白以外はグループで食べているが、
「ねえねえ、よかったら一緒に食べない?」
眞白は席が二つ離れた、千尋に声をかけた。今となっては
「え……? う、うん、いいよ」
まさか、千尋も眞白に声をかけられるとは思わなかったのだろう。驚いた顔でそう言うと、眞白の席までやってきた。
そして眞白は、私にも一緒にご飯を食べようと声をかけてきた。
***
「なんか、今日の桜庭さん雰囲気が全然違うね」
「えっ!? ど、どんなところが!?」
昨日までの眞白と違いすぎていないか、眞白自身も気にかけているのだろう。食い気味に、そう千尋に問いかけた。
「アハハ、そういうところとか。今まで大きい声とか聞いたこと無かったもん」
「そ、そうだよね。ちょっと今までは大人しくしてたっていうか……っていうか、名字じゃなくて眞白って呼んでくれたらいいよ。私も千尋って呼んでいい?」
「もちろん。——実はね、眞白ちゃんいつも一人でお昼食べてたじゃない? 誘ってみようかって
沙耶とは、千尋の仲の良い友だちだ。私もこの二人のことは気になっていた。勇気を出して声をかけていれば、こんな簡単に近づけたんだ……
「どうしたの悠真? 神妙な顔しちゃって」
ふいに眞白が問いかけてきた。
「い、いや、なんでもないよ。なんか、良い瞬間に立ち会えたなって」
「ハハハ、なにそれ。なんだか先生みたい。——わ、私も悠真くんって呼んでいいかな?」
「もちろん。俺も千尋、眞白って呼ぶようにするよ。よかったら、これからも一緒にお昼ご飯食べようよ」
無邪気に喜ぶ眞白とは対照的に、千尋は顔を真赤にさせていた。
***
「えーっ!! なになに? あんたたち、悠真とご飯食べてたの?」
学食から帰ってきた彩奈が大声で言った。そう言われた千尋はタジタジになったが、眞白はケロッとしている。
「私も明日からお弁当にしてもらおうかな。明日香もそうする?」
彩奈は隣にいる明日香にそう言った。
「そうしなよ。私たち明日からも一緒に食べるから、彩奈も一緒に食べればいいじゃん」
ま、眞白……いくらなんでもそれはキャラが違いすぎる……早めに、私の正体を明かすべきだったか……
「桜庭……あんた、ちょっと今日おかしいよね? もしかして、悠真に気に入られようと思って、キャラ変とか考えてんの?」
彩奈が苛立ちをあらわにした。きっと、名前を呼び捨てられたことも気に入らないのだろう。
「ちょ、ちょっと、眞白いいか? 話がある」
私は眞白を連れて、中庭へと向かった。