「皆さん、おはようございます。本当に突然なんだけど、今日からこのクラスで一緒に勉強することになった東雲悠真くんです。——じゃ、東雲くん挨拶してくれる?」
「は、はい。隣町から越してきた東雲悠真です。今日からよろしくお願いします」
私はペコリと頭を下げると、教室内に大きな拍手が起きた。顔を上げると藤崎彩奈が私に向かって手を振っている。
肝心の桜庭眞白は……
女子の中で唯一、私のことを見ていなかった。その視線は窓の外の校庭に注がれている。
「じゃ、東雲くん、一番後ろの空いてる席を使ってくれるかな。桜庭さん! 何かあったらフォローしてあげてね」
「分かりました!」
大きな声で返事をした眞白に、教室がざわついた。そう、私は大きな声なんて出したことが無かったからだ。ちなみに眞白の隣の席になったのも、渋い声のオジサンに言っておいたからだ。
「今日からよろしく」
私は席につくと、眞白に向かって言った。眞白は笑顔で「こちらこそ」と返してきた。
私が眞白だった時とは違って、ルーメア人の眞白は前髪を上げていた。自分の顔に自信がない私は、極力顔を前髪で隠していたのだ。大きな
だが何故だろう、表情のせいだろうか。
今日の眞白が幾分、可愛く見えるのは。
眞白に落ち着きが無いのが気になっていたが、授業が始まってからもそれは変わらなかった。相変わらず、辺りをキョロキョロと見回している。
そ、そうか……
ルーメア人の眞白にとって、今日が初めての高校生活なんだ。いや、高校生活どころか、地球で初めて生活する日になる。見るもの全てが新鮮に見えているのだろう。
出来ればすぐにでも、自分の正体を眞白に明かしたい。だが、どのタイミングでそれを打ち明けようか……そんなことを考えている間に、休憩時間のチャイムが鳴ってしまった。
***
肝心の眞白は、休憩時間に入るとすぐに教室を出ていった。まだ見ていない場所の探検にでも行くのだろうか。
「オッス! 俺、
「な、なんだよ、勝手に俺の紹介まですんなよ! 俺のことは仁って呼んでくれたらいいから!」
せっ、瀬戸くんと一ノ瀬くんが挨拶に来てくれた! 瀬戸くんはチャラい感じに見えるけど、すごく優しい人だと思ってる。私にも時々声をかけてくれていた、数少ない男子だ。
「よ、よろしく。お……俺のことも、悠真って呼んでくれたら大丈夫だから」
「えー、ホントに!? じゃ、私も悠真って呼んじゃっていい? 私のことは、彩奈で大丈夫だから!」
いつの間にか、彩奈と明日香も近くにまで来ていた。それよりもまず、男言葉に慣れないと……
「それにしても、悠真って超イケメンだよな! 悠真が来るまでは、俺が一番の長身で一番のイケメンだったのにさ」
「何言ってんのよ、春人。身長は確かに一番だったけど、イケメンは違うっしょ」
彩奈はそう言ってケタケタと笑う。
「ところで、悠真はスポーツはしないのか? テニスだけで言っても、それだけの背があれば、サーブを練習するだけで良いところまでいけると思うぜ」
仁は私をテニス部に入れたいのだろうか。そういえばオジサンには「どのスポーツも全てプロ級で」とお願いをしていた。でも、これ以上目立つのはもう沢山だ。
「ハハハ、スポーツはあんまりやらないんだ。嫌いではないんだけどね」
「そっか……それだけの背があるのに勿体ないな。そうだ、とりあえずLINEだけ交換しとこうぜ」
仁がスマホを取り出すと、春人や彩奈たちも「俺も」「私も」とスマホを取り出した。
「じゃ、私もお願い!」
いつの間にか教室に帰ってきていた眞白も、その輪に加わった。
「——うわっ! それいつのスマホなのよ。メーカーもどこのかよくわかんないし」
眞白のスマホを見て、彩奈が笑った。
お母さんが、リサイクルショップで買ってくれたスマホだ。私はこの古いスマホを見られるのが恥ずかしくて、いつも学校では出さなかった。
「お前さあ……そういうこと言うなよ。俺だってつい最近だぞ、この最新型になったのは。——そうだ、眞白。ついでだから俺とも交換しとこうぜ」
春人はそう言って、眞白とLINEの交換を始めた。