「お前……本気でここに泊まる気か?」
俺は思わずオーレリアを見上げた。
「ええ、当然じゃない?」
紅い瞳を妖しく輝かせながら、彼女はまるで当然のように俺の部屋に上がり込もうとしていた。
まあ、ここは村が用意してくれた宿で、部屋自体は広い。
しかし——
「……さすがに、男女が同じ部屋で寝るのはまずいだろ」
俺がそう言うと、オーレリアはクスリと笑った。
「なぁに、怖いの? それとも……私が何かすると思ってる?」
「する気満々のやつが言うセリフじゃねぇよ!!」
なんなんだこいつは! もともと俺のキャラのはずなのに、こうも独自の思考を持って動かれると、なんかすごい違和感がある。
(いや、これはこれで面白いんだけどな……)
結局、俺はソファで寝ることになった。
オーレリアは優雅にベッドを使い、まるで城の姫のように寛いでいる。
「ふふ……夢の中でまた会いましょうね、オルバ」
だから俺の名前はトーリだっての!
ツッコミを入れつつも、俺は眠気に負け、ゆっくりと意識を手放した。
翌朝、まだ日が昇りきらない頃だった。
俺は微かな物音で目を覚ました。
(……誰かいる)
眠気を振り払いながら、そっと窓際へと視線を移す。
すると、そこには黒い影が佇んでいた。
「……お前、何者だ?」
俺が声をかけると、影は静かに振り向く。
「——久しいな、《轟雷のオルバ》よ」
その声は低く、しかしどこか芝居がかった響きを持っていた。
影がゆっくりと月明かりの下へと進み出る。
黒いロングコートに、顔を隠す白い仮面。
俺には見覚えがあった。
「ヘンリー=メルゼット……か?」
「ふふ……その名を呼ぶとは、やはり貴様は本物のようだな」
ヘンリー=メルゼット——俺が作ったキャラの一人で、仮面を被った謎多き戦士。
変幻自在な戦闘スタイルを持ち、仮面の奥に隠された素顔は誰も知らない。
(まさか、こいつまでこの世界にいるとはな……)
ヘンリーはゆっくりと俺に歩み寄ると、静かに手を伸ばした。
「貴様に問おう。貴様は本当に——《轟雷のオルバ》なのか?」
「……お前が思っているオルバとは違うかもしれねぇが、俺がオルバであることに変わりはない」
俺がそう答えると、ヘンリーは小さく笑った。
「ならば、力を見せてもらおう」
次の瞬間——
シュン!
ヘンリーの姿が消えた。
(速い——!?)
気づいた時には、奴の短剣が俺の喉元に迫っていた。
ガキィィィン!
間一髪、俺は大剣を振るい、奴の攻撃を弾く。
「ほう……やるではないか」
ヘンリーは一歩下がり、仮面の奥で微笑んだように見えた。
「おいおい、いきなり斬りかかってくるのかよ」
「これが私の流儀だ」
……まぁ、こいつらしいっちゃこいつらしい。
エタクロ時代も、ヘンリーは仲間でありながら「本当に信用できるか」を確かめるために、戦いを挑んでくることが多かった。
なら、こっちも応えてやるまでだ。
ヘンリーが再び消え、次の瞬間には俺の背後に現れる。
(クソッ、速い!)
奴の短剣が俺の脇腹を狙うが——
「……読めてるぜ!」
俺はすかさず回転し、大剣の柄で奴を弾き飛ばす。
「フッ……さすがは《轟雷のオルバ》」
ヘンリーは軽やかに地面に着地し、再び構えを取った。
(こいつ……本気で戦う気かよ)
俺が迷っていると——
「……そこまでにしておきなさい」
静かな声が響いた。
気づけば、オーレリアがすでに俺たちの間に立っていた。
「……吸血鬼か。なるほど、貴様はもう仲間を見つけていたか」
ヘンリーは短剣を下ろし、静かに仮面を撫でた。
「私も、貴様の正体を確認できた。それで十分だ」
「おい、勝手に納得して終わらせるなよ」
「フフ……戦いはまたの機会にしよう」
ヘンリーはそう言うと、マントを翻し、夜の闇へと溶けるように姿を消した。
「……相変わらず、掴みどころのない奴だな」
俺はため息をつきながら、大剣を肩に担ぐ。
「ふふ……でも、良かったじゃない?」
オーレリアが微笑む。
「また一人、仲間が見つかったのだから」
「……そうだな」
ヘンリーが敵ではないことは分かった。
だが、奴には奴の目的があるはず。
そして、まだ他にも俺のキャラたちがどこかにいる。
(次は……誰に会えるのか)
そんなことを考えながら、俺は再び村の宿へと戻った。
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次回予告
次に現れるのは天才魔法使いエレン=クルガー!?
彼がもたらすのは、予想もしない新たな脅威だった——!
次回、「魔法都市の影! エレン=クルガーの警告」