「……いやいや、なんか話がデカくなりすぎてないか?」
オーガを倒してからというもの、村の人々は俺を完全に英雄扱いし始めた。
ご馳走は振る舞われるわ、村の女性たちはやたらと世話を焼いてくれるわ、子供たちには「オルバお兄ちゃんすげー!」とか言われるわで、正直気まずい。
「おい、俺はただの流れの冒険者だって何度も言ってるだろ?」
「ははは、謙虚ですな! さすがは伝説の英雄オルバ殿!」
だから違ぇっての!!
どうやら俺がどれだけ否定しても、この村では「轟雷のオルバ」は実在し、まさに俺こそがその本人だと確定してしまったらしい。
「まぁ、今更否定してもしょうがないか……」
とりあえず、異世界で生きていくためにはある程度の名声も必要だし、適当に流しつつ情報を集めることにするか。
しかし、そんな考えが吹き飛ぶ出来事が起こる。
夜の訪問者
その夜、村で用意された宿に泊まっていると、窓の外に人影を感じた。
(……誰かいる)
気配を殺しながらゆっくりと窓に近づき、そっと外を見る。
そこには黒いローブを纏った人物が立っていた。
フードが深く被られていて顔は見えないが、その身のこなしからして、素人ではないことが分かる。
(刺客か? それとも……)
俺は無音で窓を開け、素早く屋根へと飛び移った。
相手もそれに気づいたのか、すぐに動き出す。
「……っ!」
相手の動きは俊敏だった。
屋根から屋根へと飛び移りながら、俺の視線を避けつつ逃げようとする。
「待て!」
俺は大剣を背負ったまま追跡を開始した。
しかし、相手の速度は異常なほど速い。
(こいつ、ただの人間じゃないな……!)
そう確信した瞬間、相手が突如立ち止まった。
「……フフッ、やっぱり本物なのね」
フードをゆっくりと下ろすと、そこに現れたのは——
美しい銀髪と紅い瞳を持つ、妖艶な美女だった。
「吸血鬼……?」
彼女の特徴を見て、すぐにピンときた。
「あなたは……《紅の月》のオーレリア=エヴァンロード?」
すると、彼女はクスリと微笑んだ。
「ええ、そうよ。まさか本当に《轟雷のオルバ》がこの世界に現れるなんてね」
新たなる事実
オーレリア=エヴァンロード。
俺がエタクロで育成していた最凶の吸血鬼キャラの一人だ。
彼女は美貌とカリスマを持つ吸血鬼の女王で、強力な魔法と超人的な身体能力を兼ね備えていた。
(ってことは……他のキャラも存在してるってことか?)
俺は慎重に言葉を選びながら尋ねる。
「お前、俺のことを知っているのか?」
「当然じゃない。あなたは《轟雷のオルバ》……私が何度も戦い、時には共闘した相手よ」
(やっぱり、ゲームでの出来事がこの世界では実際に起こっていたということか?)
もしそうなら、俺が操作していたキャラたちは皆、それぞれの人生を歩んでいる可能性がある。
「なら、聞かせてもらおうか。お前がここに来た理由を」
オーレリアはゆっくりと近づき、妖艶な笑みを浮かべた。
「あなたに、会いたかったからよ」
「……は?」
まさかの直球発言に、一瞬思考が止まる。
「……冗談よ。でも、あなたが本物かどうか、確かめる必要があったのは本当」
「それで、俺が本物かどうかの結論は?」
オーレリアは一瞬考える素振りを見せ、それからニヤリと笑った。
「本物……でしょうね。少なくとも、今のところは」
(なんだその不穏な言い方……)
敵か、味方か
「さて、オルバ……いえ、あなたの本当の名前は?」
「……トーリ=オニギスだ」
ここまで来たら、下手に誤魔化すよりも正直に話した方がいいだろう。
「トーリ、ね……面白い」
オーレリアは満足そうに頷いた。
「私はしばらく、あなたの動向を見させてもらうわ」
「……ってことは、ついてくるってことか?」
「当然でしょう? 今さら放っておけるわけないじゃない」
「はぁ……」
なんだか勝手に話が進んでいる気がするが、彼女が味方になってくれるなら心強い。
しかし——
(こいつがいるってことは、他のキャラもどこかにいるってことだよな)
オーレリアは俺が作った最強キャラの一人。
ならば、他のキャラもすでにこの世界のどこかで生きている可能性が高い。
(オルバ、エレン、ヘンリー、ギャベル……)
果たして彼らは、この世界で何をしているのか?
そして——
俺は、どうやって彼らと再会すればいいのか?
そんなことを考えていると、オーレリアがクスリと笑った。
「あなた、何か企んでるでしょ?」
「いや、別に」
「ふふっ……ま、いいわ。それより、そろそろ村に戻らない?」
「そうだな……って、お前、どこに泊まるつもりだ?」
オーレリアは艶やかに微笑み——
「あなたの部屋、空いてるわよね?」
「いやいやいや!!」
思わず全力でツッコんだ。
―――――――――
次回予告
オーレリアと共に行動することになったトーリ(オルバ)。
しかし、新たなキャラが動き出し、彼らの前に立ちはだかる——!?
次回、「仮面の使者! ヘンリー=メルゼットの影」