村の入口で、俺と助けた女性が立ち止まる。
古びた木造の門があり、両脇には簡素な見張り台。その上には槍を持った二人の兵士が警戒の目を光らせていた。
「誰だ! ここは村人以外、無闇に立ち入ることは許されない!」
当然の反応だろう。
俺の姿は剣士オルバ=レグルス。全身を鋼鉄のプレートアーマーに包み、大剣を背負った屈強な戦士の姿だ。
確かに、見た目だけならただの冒険者には見えないかもしれない。
「待ってください! この方は、私を魔物から助けてくれたんです!」
女性が俺を庇うように叫ぶ。
すると、兵士たちは驚いたように顔を見合わせた。
「何? シーラ、無事だったのか!?」
「うん、彼が……」
どうやら彼女の名前はシーラらしい。
兵士たちは慌てて門を開けると、俺たちはすんなりと村の中へと迎え入れられた。
村の中は意外と活気に満ちていた。
木造の家々が並び、通りには露店や行商人が賑わっている。しかし、どこかピリピリとした空気も感じられた。
「あなたのお名前を聞いても?」
村の広場へと案内されると、シーラが改めて尋ねてきた。
「俺の名前か……そうだな」
この世界では、俺は「トーリ=オニギス」だが、今の姿はオルバ=レグルス。
だったら——
「俺はオルバだ。単なる流れの冒険者だよ」
正体を明かすつもりはないが、オルバとして名を名乗るのは問題ないはずだ。
すると、シーラの顔が驚きで強張る。
「オルバ……? まさか、《轟雷のオルバ》のことですか?」
「……は?」
何それ。俺はそんな異名を持っていた記憶はない。
しかし、周囲の村人たちも彼女の言葉に反応し、ざわざわと騒ぎ始めた。
「まさか、本当に《轟雷のオルバ》が来たのか?」
「噂では雷の如き速さで敵を斬る剣士と聞いたが……」
——なんか勝手に伝説になってない!?
いやいや、俺はただのネトゲプレイヤーで、オルバは俺が作ったキャラの一人のはずだ。
それがどうして、異世界で伝説になってるんだよ。
村長との対面にて
このまま話を進めても埒が明かないので、俺はシーラの案内で村長の家へと向かった。
村長の家は広場の奥にあるやや大きめの建物で、中に入ると温かみのある雰囲気だった。
「村長、連れてきました」
「おお、おお……なんと、本当にオルバ殿か」
中にいたのは白髪の老人。
杖をついているが、その目には鋭い知性が宿っていた。
「村長、俺のことを知っているのか?」
「ええ、もちろんですとも。《轟雷のオルバ》の名は、すでに各地の冒険者や兵士の間で語られていますからな」
「は、はぁ……」
さっぱり意味が分からない。
俺は異世界に来たばかりで、そんな名が轟くはずがないのに。
「一体どういうことなのか、詳しく聞かせてくれないか?」
村長はゆっくりと頷くと、話し始めた。
《轟雷のオルバ》の伝説
「数ヶ月前から、世界各地で《轟雷のオルバ》の目撃情報が相次いでいます」
「俺が……?」
「剣を振るえば雷鳴が轟き、いかなる敵も一刀両断。正義を貫き、悪を討つ剣士——それが《轟雷のオルバ》なのです」
いやいや、そんなチート設定した覚えないぞ!?
でも待てよ……もしかして、これはゲームの中の記録なのか?
俺がネトゲでオルバを使って戦った記憶が、この世界に反映されている——?
「まさか……」
それなら、俺が使っていた他のキャラクターたちも、何らかの形でこの世界に影響を及ぼしている可能性がある。
すると——
ゴゴゴゴゴ……!
突如、村の外で地響きが響いた。
「何だ!?」
外へ飛び出すと、村の門の前に巨大な影が現れていた。
そこにいたのは、一体のオーガだった。
全身を岩のような筋肉で覆い、棍棒を持って暴れている。
「な、なんでこんなところに……!」
兵士たちが怯える中、俺はゆっくりと大剣を引き抜いた。
「……ふむ、ちょうどいい」
オルバの名が本当に通じるかどうか、試してみるか。
オーガが咆哮し、俺に向かって突進してくる。
俺は一瞬のうちに踏み込んだ。
ズバァッッ!!!
一閃。
オーガの身体が真っ二つになり、そのまま地に崩れ落ちた。
「…………」
村人も兵士も、誰もが息を飲む。
「これが……本物の《轟雷のオルバ》……!」
村長が震える声で呟いた。
「いや、俺は——」
弁解しようとしたが、その時にはもう遅かった。
「村を救ってくださり、ありがとうございます!!」
村人たちが俺の前にひれ伏し、感謝の言葉を叫んでいた。
俺はただ、オルバとしての力を試したかっただけなんだが——
これ、完全に「伝説の英雄」ルートに入っちまったな……!?
――――――――――
次回予告
予想外に伝説の英雄扱いをされるオルバ(トーリ)。
しかし、彼の正体を知る者が動き出す——!?
次回、「謎の追跡者! 現れるもう一人のキャラ」