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第二話:オルバの名が響く時


 村の入口で、俺と助けた女性が立ち止まる。

 古びた木造の門があり、両脇には簡素な見張り台。その上には槍を持った二人の兵士が警戒の目を光らせていた。


「誰だ! ここは村人以外、無闇に立ち入ることは許されない!」


 当然の反応だろう。

 俺の姿は剣士オルバ=レグルス。全身を鋼鉄のプレートアーマーに包み、大剣を背負った屈強な戦士の姿だ。


 確かに、見た目だけならただの冒険者には見えないかもしれない。


「待ってください! この方は、私を魔物から助けてくれたんです!」


 女性が俺を庇うように叫ぶ。

 すると、兵士たちは驚いたように顔を見合わせた。


「何? シーラ、無事だったのか!?」

「うん、彼が……」


 どうやら彼女の名前はシーラらしい。

 兵士たちは慌てて門を開けると、俺たちはすんなりと村の中へと迎え入れられた。


 村の中は意外と活気に満ちていた。

 木造の家々が並び、通りには露店や行商人が賑わっている。しかし、どこかピリピリとした空気も感じられた。


 「あなたのお名前を聞いても?」


 村の広場へと案内されると、シーラが改めて尋ねてきた。


 「俺の名前か……そうだな」


 この世界では、俺は「トーリ=オニギス」だが、今の姿はオルバ=レグルス。

 だったら——


 「俺はオルバだ。単なる流れの冒険者だよ」


 正体を明かすつもりはないが、オルバとして名を名乗るのは問題ないはずだ。

 すると、シーラの顔が驚きで強張る。


「オルバ……? まさか、《轟雷のオルバ》のことですか?」

「……は?」


 何それ。俺はそんな異名を持っていた記憶はない。

 しかし、周囲の村人たちも彼女の言葉に反応し、ざわざわと騒ぎ始めた。


「まさか、本当に《轟雷のオルバ》が来たのか?」

「噂では雷の如き速さで敵を斬る剣士と聞いたが……」


 ——なんか勝手に伝説になってない!?


 いやいや、俺はただのネトゲプレイヤーで、オルバは俺が作ったキャラの一人のはずだ。

 それがどうして、異世界で伝説になってるんだよ。


 村長との対面にて

 このまま話を進めても埒が明かないので、俺はシーラの案内で村長の家へと向かった。

 村長の家は広場の奥にあるやや大きめの建物で、中に入ると温かみのある雰囲気だった。


「村長、連れてきました」

「おお、おお……なんと、本当にオルバ殿か」


 中にいたのは白髪の老人。

 杖をついているが、その目には鋭い知性が宿っていた。


「村長、俺のことを知っているのか?」

「ええ、もちろんですとも。《轟雷のオルバ》の名は、すでに各地の冒険者や兵士の間で語られていますからな」


「は、はぁ……」


 さっぱり意味が分からない。

 俺は異世界に来たばかりで、そんな名が轟くはずがないのに。


「一体どういうことなのか、詳しく聞かせてくれないか?」


 村長はゆっくりと頷くと、話し始めた。



 《轟雷のオルバ》の伝説



「数ヶ月前から、世界各地で《轟雷のオルバ》の目撃情報が相次いでいます」

「俺が……?」

「剣を振るえば雷鳴が轟き、いかなる敵も一刀両断。正義を貫き、悪を討つ剣士——それが《轟雷のオルバ》なのです」


 いやいや、そんなチート設定した覚えないぞ!?

 でも待てよ……もしかして、これはゲームの中の記録なのか?


 俺がネトゲでオルバを使って戦った記憶が、この世界に反映されている——?


「まさか……」


 それなら、俺が使っていた他のキャラクターたちも、何らかの形でこの世界に影響を及ぼしている可能性がある。


 すると——


 ゴゴゴゴゴ……!

 突如、村の外で地響きが響いた。


「何だ!?」


 外へ飛び出すと、村の門の前に巨大な影が現れていた。



 そこにいたのは、一体のオーガだった。

 全身を岩のような筋肉で覆い、棍棒を持って暴れている。


「な、なんでこんなところに……!」


 兵士たちが怯える中、俺はゆっくりと大剣を引き抜いた。


「……ふむ、ちょうどいい」


 オルバの名が本当に通じるかどうか、試してみるか。

 オーガが咆哮し、俺に向かって突進してくる。


 俺は一瞬のうちに踏み込んだ。

 ズバァッッ!!!


 一閃。

 オーガの身体が真っ二つになり、そのまま地に崩れ落ちた。


「…………」


 村人も兵士も、誰もが息を飲む。


「これが……本物の《轟雷のオルバ》……!」


 村長が震える声で呟いた。


「いや、俺は——」


 弁解しようとしたが、その時にはもう遅かった。


「村を救ってくださり、ありがとうございます!!」


 村人たちが俺の前にひれ伏し、感謝の言葉を叫んでいた。

 俺はただ、オルバとしての力を試したかっただけなんだが——


 これ、完全に「伝説の英雄」ルートに入っちまったな……!?



――――――――――


次回予告


予想外に伝説の英雄扱いをされるオルバ(トーリ)。

しかし、彼の正体を知る者が動き出す——!?


次回、「謎の追跡者! 現れるもう一人のキャラ」

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