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第3話「私の手下達」

 闘技大会とは、最強の能力者を決める戦いだ。


 ルールは大会によって細部は異なるが、大きくは。それだけである。


 野蛮なためルールを厳正化し、競技に落とし込もうという動きも活発だ。あと数年もすれば、どの能力が最も優遇されるか分かるだろう。

 しかしそれは今ではない。現在の闘技大会はコロッセウムを少しだけマイルドにしたようなものだ。


 その闘技大会をオリンピックの種目にしようという、とち狂った計画がなされているのである。


 そしてそれを推し進めているのが我らが日本である。ドン引きだね。


 勿論我らが首相にも考えがあってのことだ。

 それはひとえに、世界最強と呼ばれる能力者が日本人だからである。


 世界最強は伊達ではない。それこそ、個人にして軍事力に加えても問題ないほどのワイルドカードである。

 我らが首相は、オリンピックという世界の注目が集まる場で、正式に誰が最強かを諸国に示したいのだろう。


 噂ではオリンピックの開催国まで日本に変更しようともしているらしい。何とも頼もしい首相だ。ちょび髭がさぞ似合うだろう。


「で、予行演習かな。学生を対象に闘技大会を開催。十字岳人は学校代表として精進することになるらしいね」


 とある繁華街のビルの一室。景気の良い革張りの椅子に座りクスクスと笑う。

 私こと時巡優子は楽しくてしょうがないのだが、目の前に立つ少女にとっては違うらしい。随分と呆れた顔だ。


「これも全て『コレクター』。あなたの仕業でしょうに」


『コレクター』というのは私の別名だ。

 能力者を収集しているために付いた異名だが、気に入ったので自らそう名乗ることにした。


 そして少女は私の直属の部下である時枝ときえだ真希絵まきえ。白髪がコンプレックスの中学生だ。

 彼女は中学生なので、手下としては出来ることも少なく、期待もしていない。ただ回復能力があるため手元に置いているだけだ。ああ、私に依存させるための練習台でもあったか。


 でも依存については失敗だと思う。信用を得るにはこちらの情報をある程度開示する必要があろうが、私は名前どころか姿さえ見せていないのだ。


 今の私の姿は、分身体を成長させ、更に顔を黒のベールで完全に覆い隠してしまっている。変声機も使っているので、町でばったり出くわしても私だと認識できないはずだ。


「しかし、かの組織にもある程度干渉出来ることが分かった。これは中々使えそうな情報じゃないかな?」

「なるほど、確かにそうですね」


 真希絵は何も考えていなさそうな顔で頷いた。策略を任すのは無理だと確信する。


「ところで」と私は言い、彼女が抱えているファイルを指差した。

 真希絵はハッとして、大きな声で言った。


「そうだ、報告書を預かっていたんです。どうぞ『コレクター』」

「うん、君に渡したということは、結果には期待できなさそうだね」


 ファイルを捲る。やはり田辺たなべだ。真希絵に渡せばとりあえずは怒られないで済むから、「やあ、これを『コレクター』殿に渡しておいてくれたまえ」「はい、分かりました」そして「ああ、忙しい忙しい」と足早に去っていく情景が目に浮かぶ。


 私は田辺の処分を考えながら内容を確認した。

 内容は、いつもの『真世界』への嫌がらせについてだった。

 今回は積荷を襲ったが、予想以上の抵抗に遭い、奪取に失敗。どころか積荷の中身さえ分からない状況だったらしい。


「なんて書いてあるんですか?」

「君は知らなくて良いよ。向こうで連立方程式と戦ってなさい」


 ぶうたれる真希絵を適当にいなし、報告書を読み進める。


「ううん……?」


 まさか虚偽の報告ではあるまいな。

 そう思ってしまうほど、相手の警戒が厳重だった。


 前情報は、安物の食料品だった。

 とはいえ嫌がらせしまくっていたので、護衛があることは想定内。


 失敗しても問題ない。だからこそ田辺に任せたのだが、何とも妙だ。配役をミスったか?


(いや、配役を変えたとしても、多くの戦力は割かないか。なるべくしてなった結果。情報戦での敗北だな)


 そういう点では田辺はよくやったほうだ。

 トラックを横転させたとあるし、警察の介入は免れない筈。

 決定的な物はなくとも、捜査資料を覗けばある程度は推察できるか?


(……いや、無理か)


 事前情報は完全に隠されていたのだ。既に情報は抹消されていると考えて良いだろう。


 尋常な方法では迷宮入りは不可避だ。

 だがこの世界は尋常ではなく、こういった事態への備えも私には用意がある。


 ポケットから携帯電話を取り出す。

 ワンコールきっかりで、相手が応答した。


「やあ、館長。悪いんだけど、を持ち出したいんだ」


 さて『真世界』の皆さん。君たちは超能力者への備えは万全かな?




 *




「実技試験って何やるのかな」


 桜は全ての花を落とし、緑の葉を蓄え始めたころ。


 クラスでの各々の立ち位置も決まり、話す相手も固定化され始めた。

 華の呟きに鋭利な顔立ちの男、立花たちばな零次れいじが自慢の青毛を整えながら答えた。


「ほとんど体力測定と先輩は言っていたね」

「何それ、優子とか超有利じゃない?」

「有利? 不利だろう時巡の能力じゃ」


 私の能力は運動向きじゃない。だから零次の疑問は最もだ。視線が刺さる。煽った華は「むふふ」と笑うだけで説明する気はないようだ。それと能力込みならお前がトップだろ。


 ……ともかく。能力科では中間試験に通常の筆記試験に加え、超能力も試験内容に加わる。

 個々で大きく異なるものを画一に評価できるのかは疑問だが、まあ抜かりはない。


 私は本を閉じ言った。


「明日になれば分かるよ。というか、実技より筆記でしょ、特に華は」


 華は「ガーン」と効果音を口にしてショックを表現していた。

 零次は苦笑いを浮かべ言った。


「確かに。時巡と、岳人は問題ないだろうけど」


 私たちは4人グループ。

 私、華、零次、そして十字岳人。


 話題を振られた岳人は「そうだな」と一言だけ言い、読書に戻っていった。


 私たちは基本的にこんな感じだ。

 華と零次が話し、私と岳人が時たま反応する。


 私と(多分岳人は)良いのだろうが、華と零次は楽しいのだろうか。


(まあ、気にする必要もないか)


 所詮は仮初の関係。

 崩れたところで、困ることもない。


「優子ぉ、勉強会開こうよぅ」

「……実技は明日だけど、筆記は来週だったか。ま、土日を挟んだ分中学よりは成長してるね」


 私は了承の意を伝え、男子2人に言った。


「君たちも参加しなさい。土曜と日曜どっちが良い?」

「強制なんだね。願ってもないから構わないけど。どちらも空いてるから君たちの予定に合わせるよ」

「優子さんアザッス! 頼りにしてマス! 私は土曜バイトなんで日曜でお願いしまッス!」


 全員の視線が岳人に刺さる。

 彼は苦い顔をして言った。


「俺は行かないぞ」

「良し、零次。氷漬けにしてでも連れてきなさい」

「了解、女王様。岳人、覚悟してもらうよ」


 時たまこういうことが起こる。

 口では嫌がっても、何だかんだで彼は来る。


(何だかんだで楽しいのかな? それとも、私がいるからだったり)


 流石にそれは自意識過剰か。


 そして時は流れ勉強会――の前に実技試験である。


 グラウンドには50mを示す白線が引かれている。

 つまりは徒競走だ。


「よーしよーし、頑張るぞ」

「靴まで脱いで、本気だね、華」


 華は竜に変身できる。

 部分的にでも変身すれば、人間を大きく上回る身体能力を得ることができるのだ。


「優子もさ、試験なんだし本気出しなよ?」

「えー」


 別に隠している訳じゃないが、そんなことに労力を割きたくない。


「えー、じゃないよ。闘技大会にも有利になるかもじゃん?」

「華が居る以上無理でしょ、闘技大会は。いや、でも……」


 ある程度進めて、能力者の情報を得る機会に出来るかな?


「よし、じゃあ一番は私が貰うね」

「言ったね。負けず嫌いの優子が悔しがるところ、見られちゃうな」


 さて、この世界には超能力が実在するが、しかし同時にエネルギーの保存則も存在するのである。

 即ち超能力というエンジンの他に、超能力用のガソリンもまた存在する。


 そしてそのガソリンは体中を巡り、時に髪色などの体質を変え、身体能力を上昇させる。


 私と華が横に並び、共に合図を待つ。


 ところで私は能力を2つ持つ。即ち――


 合図と共に、地面が類まれなる脚力によって爆発した。


 ――私のエネルギーは常人の2倍。ドラゴンにだって劣らない脚力を持つのだ!


 50mだ。勝負は一瞬だった。

 お互いに地面を削りながら、ようやく停止する。


 誰かが呟いた。


「う、そ……」


 その後、どっ、と歓声が沸く。


 私はその歓声に、大いに気分を良くした。


「ふふふ、何だい華。その苦そうな顔は」

「いや、勝てると思ってたから。……悔しぃー!」


 運動なら勝てるという自負があったのだろう。

 珍しく、華の顔から笑顔が消えていた。


 ただエネルギーが多かっただけなら負けていただろう。

 私は人よりも、この力の扱いに長けている自負もあった。


 私には異世界の記憶がある。

 この世界に満ちる、超能力を使う力が状態を知っているのだ。


 それがアドバンテージ。

 ないことを経験しているために、より精緻に力を感じ取れる。


 力のコントロール能力。

 これが勝負の明暗を分けたと言って良いだろう。


 さて、次の種目は何だろうか。できればパワー系じゃなければ良いのだけれど。




 *




 時巡優子は十字岳人の学友である――という客観的な視点に異存はない。


(個人的な)監視対象である時巡に対し、優れたポジションであると言えよう。

 それが時巡が目論んでいたことで無ければ更に良かった。


(未だ理由も正体も分からずか)


 内心でぼやいてみたものの、たかが一か月では尻尾を出すこともあるまい。

 だから休日の誘いに乗るのも仕方がないことである。


 呼び鈴がけたたましく鳴った。


 教材は一式揃っている。小テストの結果からして、俺と時巡は教える側になるだろう。


 となれば話す機会は限られてくるが……。


(……別に話す必要はない)


 首を振り、益体もない思考を振り払う。

 扉を開け訪問者に顔を見せた。


 氷結系能力者特有の青髪が、目元まで掛かった男。人に鋭利なイメージを持たせるであろうそいつは、狐のように目元を釣りあげて笑っていた。


「んじゃ、行こうか」

「……ああ」


 どこに、とは言わない。

 言葉が必要ない程度には、繰り返したやりとりなのである。


 俺と立花零次という学友は、それだけの関係を構築してしまっているということだ。


 部屋を出た後、そういえば場所は何処なのかを聞いていなかった。いや、断ったのだから当たり前なのだが。


「今日は時巡の家でやるんだとさ」


 時巡の家。

 それは、願ってもないことだった。


 調査対象の家となれば、より多くの情報が得られるだろう。


「へぇー。へぇ~」

「……何だ」


 俺の反応に何を思ったか、零次はニヤニヤと笑っていた。


「何だよ」

「べっつにぃ?」


 そうして何故か居心地の悪いまま歩き続け、時巡の家へと着いた。


 住宅地にある、建売の家だ。特段変わったところはない。


 零次がインターホンを鳴らし、ややあってから、扉の隙間から二つの顔が縦に並んだ。


「来たね」

「待ってたよぉ?」

「いやいや、何それ。どう反応すればいいの」


 言うまでもなく、時巡優子と小鳥遊たかなしはなである。

 ケタケタと笑う三人に、思わずため息が漏れる。どうにもこのノリにはついていけない。


「どうぞごゆっくり」

「お邪魔します」

「お邪魔しまぁす。いやあ、女の子の部屋に招待されるなんて男冥利に尽きるな岳人」

「は? キモ。つうか通さないから、リビングだからね」

「残念だったねぇ、岳人くん」

「何で俺なんだ」


 ……残念だったのは、否定できないが。何せ情報の宝庫はそちらだからだ。


 通されたリビングには既に勉強道具が広げられていた。

 それと同じくらいのお菓子が並べられていたのは目をつむることにする。


 既に順応していた零次が、紙コップにコーラを注ぎながら言った。


「リビング占領してって良いの?」

「良いよ。しばらく帰ってこないからね」


 机に向かってからは、意外にも全員が真面目にノートへと向き合った。

 シャーペンの芯が走る音に、度々質問が響く。


 今も小鳥遊が時巡に質問していた。


「この因数分解意味わからないんだけど……優子さぁーん?」


 時巡はピタリと動きを止めていた。小鳥遊の話も聞いていないように思われる。


 小鳥遊が肩に触れると、大げさに肩を震わせて「あ」と声を上げた。


「寝てた?」

「寝てない。ただちょっと、ぼうっとしてただけ」


 小鳥遊は普段と異なり、それ以上追及しなかった。

 俺の目から見ても、時巡が悲しみをこらえているように見えたからだ。




 *




『コレクター』が収集した特異な能力者集団『ミュージアム』。


 彼らはあくまで。やるべきことはなく、己を維持していれば良い。


 ただ、もしも彼らが動くとすれば。それは常人には達成不可能な、第一級の密命を帯びたときである。


 展示No.8。ホークアイには為すべき使命があった。


 今彼は人気のない廃工場に蹲っている。

 足元には微量ながら血だまりが出来ていた。


 カツン、とわざとらしく、ヒールの音を彼の目前で鳴らせた。


 ホークアイは素早く視線を上げると、険しかった視線をいくらか和らげた。


「『コレクター』ですか?」


『コレクター』と呼ばれた覆面の女、つまり私はいくらか驚いた。私は口にする。


「君ともあろう者が、これほど接近しても気がつかず、まして布程度で私を識別できないなんてね。何があったんだい?」


 ホークアイの能力は千里眼。

 どれほどの距離があろうと視認し、視野を絞ればプランクトンすら視認できる。


 だがその程度ならば『コレクター』が収集するほどの能力には当たらない。

 彼の真価は、追跡能力にあった。


 彼は共感覚の持ち主だ。

 匂いを視覚として捕らえることが出来る。嗅覚は人並みでもリンクした視覚は別格。

 故に彼は警察犬が捕らえられない臭いを捕まえ、地の果てまでも追い詰める。


 その彼が、既知の匂いすら分からないとは何事だ。


「俺は現場に残った匂いをそれぞれ確認し、1つの不明な匂いを探り当てました。幸い、匂いが消えきる前でしたので、その匂いを追跡しました」

「その匂いの正体は1人の女でした」

「そいつは男の家に潜り込んでいるようでした。しかしその男の背後には何もなさそうでしたので、そのまま奪うつもりでした」

「ですが男が抵抗を示し、しかし予想通りの素人でしたので、撃破は容易でした。しかし」


 ホークアイは明らかに言い淀んだ。だが意を決したように続けた。


「女が、女が今まで閉じていた目を見開いたのです」


 声は震えていた。勇猛で、屈強なホークアイが、ただ1人の女に怯えている。

 しかしホークアイは言葉を続けた。


「すると、俺の世界は一変しました。俺の超能力が消失したのです」


 そう言い終えると、ホークアイはうなだれた。


 私は静かに驚愕した。

 彼の態度にも勿論だが、その女の能力にである。


「能力の抹消。なるほど、とんでもないジョーカーを隠し持っていたらしいね」


 しかもホークアイの言葉が確かなら、見るだけで効果がある。

 バロールやメドゥーサのような、神話の中の特異能力だ。


「とりあえず、住所と顔写真を――」

「既に用意してあります」

「……用意良いね。流石だよ」


 男の方は、金のツンツンヘヤーが特徴だが、ホークアイの報告通りなら気にしなくても良いだろう。一応過去は洗う必要があるだろうが。


 そして女は、目を閉じているのは能力の問題か。もしかしたら制御できていないのかもしれない。病的とも言える白さは、アルビノだろうか。どこか浮世離れしているように見える。


「お願いがあります」


 考えをまとめていると、ホークアイが言葉を挟んできた。私は苛立つより前に、意外に思った。

 彼とは付き合いが長い。こういった時、口を挟むような男ではないのだ。だから私は「何かな」と素直に聞いた。


 ホークアイは言った。


「俺を殺してください。こんな世界は耐えられない」


 私は彼の瞳を真っすぐ見つめた。

 既に能力を失った濃緑色の瞳は心なしか濁って見えたが、私は声を穏やかにして説得した。


「らしくないよ、ホークアイ。能力消失には不明点が多い。治る見込みは十分あるし、何もせずとも明日には元に戻っているのかもしれないよ」


 しかしホークアイは首を横に振った。


「いいえ、俺には分かるのです。既に俺の能力は死んでいる。何をしようとも、生涯このままだ。俺にはそんな人生は耐えられない」

「……ホークアイ。君、怪我しているだろう。だから気が弱くなっているんだ。だから今はゆっくり休もう。この話は怪我が治ってからだ」


 手を差し伸べると、ホークアイは私の手を握り、そして、自身の額に当てた。


「何のつもりかな?」

「あなたは『何もせずとも明日には元に戻っているのかもしれない』と言いました。怪我も自然治癒する程度のものです」

「だから、俺の時を進めてください。十年、いいや、百年先まで」


 私はため息をついた。いい加減苛ついてきたからだ。


「そこまで言うなら進めてあげるよ。泣いて後悔しろ」


 エネルギーを込め、能力を発動する。

 能力は人に向ける場合、相手のエネルギーにぶつかり相殺する。だから防御に集中されると、結構な消耗を伴うのだ。

 今回はかつてないほどスムーズに能力が行使された。本当に彼には、超能力のためのエネルギーが失われているのだ。


「十年進めた。傷の方はすっかり良くなっているね。気分は?」

「力は戻っていません」


 私は更に十年進めた。

 彼は同じ返事をした。


 十年、また十年。

 彼の返事は変わらなかった。


 もう何度目か。これが最後になるであろう能力の行使の前、しわがれた声で彼は違うことを言った。


「あなたに拾っていただき、俺は幸せでした」

「そう、良かったね」


 彼は倒れ伏し、その生命を終えた。

 結局、最期まで能力は戻らなかった。


 完全なる能力の抹消が証明されたわけだ。

 迂闊に手駒を近づけるわけにはいかない。

 きっと、件の組織も同じく頭を抱えていることだろう。


(ホークアイを解剖すれば何か分かるか? 女についてはあまり刺激したくないから、可能な限り監視に留めるが、生きた検体が必要なら適当なごろつきを使うか。『真世界』の計画を早めに暴かないといけないな。今までのような嫌がらせでなく、専用のチームを。派手になるなら公安対策だけど、それは本体が何とかするか)


 携帯電話から、本部にいる分身に電話を掛ける。

 分身間の情報共有が機械頼りなのが歯がゆいところだ。


 本体には情報がリアルタイムで共有されるから、機械を使うにしても、本体を介した連絡網の方が良いと思うのだが、あれは学生気分を謳歌する算段らしく、全くもって使えない。


(ま、一番大変なのは本部の分身か。残り寿命14時間。過労死しないと良いけど)


 電話の向こうから聞こえてくる引き攣った声に、私は心底同情したのだった。


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