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第16話 お前が言うな

 弘人全力の死ね。


「あらひろ君そんな悪口言っちゃだめよ」


 燐菜は諭すように弘人の頭を撫でる。


「お前はママか」


 振り払おうと試みるもやはり振り払えない。この女、実は笊斗以上の脳筋疑惑がある。


 幸音はそんな二人の姿を見て、力なくうなだれた。


「……仲良いんだね二人は。どっちも素が出てるっぽいし……」

「残念だけどこいつの素はこれじゃねぇよ。俺は大体こんなんだけどこいつはもっと腹黒い」

「ひどいわひろ君」

「おいアバズレこれ以上俺を馬鹿にすんな」

「私相手には猫被ってるの?」


 幸音は何が言いたいのだろうか。弘人は思考が読めず上手い回答が思いつかない。


「え? いや被ってないって言うか君にも割と普通に接してると思うけど……」

「まだ分からないの? ひろ君は好きな相手には奥手なのよ」

「なっ!」

「ちゃうわぼけい! 好きじゃないわい!」


 燐菜は口を開けば爆弾発言ばかり。味方撃ちに長けたこの女をどうにか静かにせねば、関係が今以上こじれかねん。弘人は幸音に対する注意の九割を燐菜に向ける。


「そうなのぉ?」


 この女、弘人の考えに気づいている。静かに距離が、しかし着実に離れている。遠距離狙撃か。


「あ、えっとさ……言っておこうかな……」


 幸音は本当に言うべきか否か迷っているかのようにうーんとしばし沈黙する。


「何を?」


 幸音にまでとんでもない言葉を言われたら弘人は死ぬだろう。そう確信できた。


「私、ちょっと前に告白されたんだ」

「おめでとう僕たち二人はあなたの恋路を応援しますなぁ燐菜?」

「えぇ乙女の恋は何よりも美しいのだから私は永久に味方よ」


 弘人にとっては全く恐ろしい言葉では無く、寧ろ歓迎すべき発言だった。燐菜と手を繋いで笑いながらその場を回る。


「……おっけーした方がいいの……かな?」


 幸音は弘人と燐菜に問う。二人はもう彼女が付き合い始めるとばかり思っていたもので、唐突なダンスは中断された。


「してないの? したほうがいいって。誰かは分からないけど」

「石倉君」


 その名前は。


 弘人と燐菜は顔合わせ発言に戸惑った。


「つ、繋がっちゃうのか―……」


 だからしつこかったのか? なんて弘人は思う。毎日のように言ってきたのには理由があったのか。


「あらあら面白い展開ねひろ君」

「つまんねーと言って欲しいな。俺はつまんねぇ。てっきり平川かと思ったわ」

「平川君? なんで?」

「いや適当だけど。石倉と話したことあるの?」


 弘人は幸音が石倉と仲睦まじい様子を確認したことは無かった。


「去年も同じクラスだったから」

「ほへぇ~……」


 去年からの繋がりであればそれはもう強固なものであろう。まさか年度を超えた恋があるとは。弘人にとっては初体験だ。


「で、許可するの? 彼は犯罪者よ」

「お前が言うと何か気持ち悪いな燐菜」


 本当に気持ち悪かった。

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