「そういえば石倉君の件どうなったの?」
何日経ったか分からないが、今日もまた石倉の話を聞かされる男ー弘人。どうやらまだ言っていなかったようだ。なんなら最近の記憶が無い。
「あぁそれもう関与しません」
「え、なんで? あれ普通じゃないって」
「窃盗症ってやつだと思いますね。私では無く医者が必要かと」
「え?」
「やべ」
幸音には言っていなかった。石倉が万引き常習犯なのは笊斗と燐菜しか知らない。
「どういうこと?」
こうなった幸音相手に話題をそらすのは至難の業だが、やってみるのが男弘人。スッと数学の問題集を取り出し適当に開いて指さす。
「それよりこの問題が分からなくてさー。小テストこのままじゃ十点も取れないかも」
「それまだ習ってないけど」
「あ、違った間違えました。こっちですこっち」
「教えたら教えてくれる?」
今回は成功。だがまだ話題のすり替えが出来ていない。これは万事休す。
「……何を? 僕の好みの女性とか? いやぁそれは」
恥ずかしがってみる作戦に加え話分かってないよ作戦。
幸音には効かず、それどころか落ち込んだように肩を落とさせた。
「弘人君最近私のこと避けてるよね。私何か気に障ることしちゃった?」
これを言わせた男はアウトである。
「してないよただ中々会う時間が無かっただけとかでは?」
同じクラスだからといって毎日話すかといわれると、イツメンでも無い限りは無いだろうと弘人は思っているがどうか。
「だって私が話しかけるとどっか行っちゃうか無視するじゃん」
今までの行動がバレバレのようで。
「いやぁ君みたいなべっぴんさんにそんなことしませんよ」
「……馬鹿にしてる?」
「してません……」
本気で言われてはもうふざけられない。関係を悪くはしたくないのだ。
「じゃあなんで」
幸音が弘人の机を叩く。
「恋よね。坂下さん可愛いから緊張しちゃって」
「おい燐菜来んじゃねょ」
気づいたら燐菜が弘人の椅子に座っていた。どんな技を使ったのか、弘人はさっきまで座っていたのに立っている。
「澳原さん」
「どうも幸音ちゃん。相変わらず可愛いわね」
「か! お、澳原さんの方が可愛いじゃーん」
幸音は燐菜が少し苦手なようで、会話がややぎこちない。だが当の燐菜はどうでもよさそうに変顔を披露した。
「いいえ私はこう見えて性格ブスなの」
弘人は燐菜の変顔が変顔じゃないのにムカついた。
「おい燐菜くだらねぇ話するつもりなら消えろ」
弘人は至って真面目に言葉を投げた。すると燐菜はようやくふざけるのをやめる。
「……分かったわ。ちゃんと教えてあげる。でもここじゃ人目もあるし」
弘人のぼっち飯階段――
「俺は聞こえた。聞こえたぞ。リアルハーレム主人公って言葉をな。こんなハーレムいらねぇ」
弘人は教室から出る際、間違いなくリアルハーレムという言葉を耳にした。それも羨ましいというよりは。あんなブスがという驚きの要素の強い感じで。完全なる悪口を言われたのである。
「クソみてーな人生ですねはい」
ムカついたので男という男を眠らせておいた。そのためオールできるぐらい今は絶好量だ。
なんて弘人が脳内大暴れを行っていると、燐菜が幸音に真相を教えていた。
「……というわけなの。泥棒しちゃうまで落ちちゃったっていうのと、ひろ君の悪口を平然と言いのけちゃうってことで、もう助けないって判断に決めたのよ」
全部言ったようだ。そんなに長く考え事をしていたのか? と弘人はスマホの時計を確認した。対して時間は経っていない。
「……澳原さんは。弘人君の力を知ってたんだ」
もう全部伝わっているのが驚きすぎる。
「えぇ。私とひろ君はそれはもう固いきずなで」
「おい燐菜やめい」
「愛し合ってるのだから」
「愛し合ったこと無いから嘘言わないで」
「今から真実にしちゃう?」
「……死ね」