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第4話 ご帰還

「弘人くーん!」

「? あぁ坂下さん」


 下駄箱から出ると、丁度水を飲んでいた幸音がいた。ユニホームを着て汗を浮かばせており、手にはラケットを持っている。テニス部の部活中のようだった。


 弘人と燐菜に近寄ってくる幸音。


「えっと……」


 燐菜は相合傘の時の様な密着具合で弘人の隣に張り付いており、幸音はその名前が分からず困惑する。弘人は気が付きすぐさまフォロー


「こいつは燐菜です」

「り、燐菜さん! どうも!」


 幸音が大げさに頭を下げると、燐菜は妖艶に笑う。


「どうも、ひろ君のセフレです」

「セッ」

「違うけど」


 燐菜の爆弾発言を真っ向から即時否定する弘人。しかし、幸音は何故か顔を赤らめた。


「ははは……。弘人君はもう大人なんだね……」


 明らかに勘違いしている幸音の様子に、弘人は苦虫を嚙み潰したかのように苦悶の表情を浮かべる。


「違いますマジで本当に」

「ひろ君と私は切っても切れない関係なの」

「おい穴に埋めるぞアバズレ」

「本当のことを言って何がいけないの? ひーろ君?」


 ここはどうやら逃げるのが得策のようだ。弘人は無理やり話を終了させる。


「じゃあ坂下さん、また明日。部活頑張ってね」

「あ、う、うん。ありがとう! バイバーイ!」


 幸音は特に詮索することなく友達の元へと戻っていった。あの様子なら翌日に追及されることも無いだろう。一先ずは難を逃れたといえる。


「あの子、ひろ君に好意持ってるわね」


 不満そうに口をすぼめる燐菜。しきりに脇腹をつついてくる。


「やめい。……まぁ嫌われてはいないと思うが、好意があるとしてもそれは友達としてだろう。あの人誰でにでもあんな感じだし」


 席が近い人とは、そこまで親しくなかったとしても休み時間に話す仲になる、というのはよくあることだろう。特に幸音はどんな相手に対しても積極的に話しかけていく性格だ。目立たないグループとアニメやゲームの話をしていることもある。ただ人懐っこい良い人というだけの話だ。


「そうなの? じゃあ私のひろ君は取られないわねちょっと安心」


 燐菜は満面の笑みで腕に抱きつき、わざとらしく胸を押し付けてくる。傍から見ればバカップルにしか見えないだろう。弘人はこの窮地を打開すべく振りほどこうとするが出来なかった。女にしては力が強すぎる。


「お、お前彼氏いるだろ。離れろ」

「安心して。今いるのは彼氏じゃなくてセックスフレンドだよ。あの人はただおち」

「黙れ」


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