放課後、オーガイは友達と一緒に帰ってしまった。
非情である。
もちろんチェビルも転校生ゆえ、いろいろと引き合いがあった。
その中で「学校を案内してあげるよ!!」という子がいたので、頼むことにしたのだが。
女子3人に男子1人。
声をかけてきた女子だけでなく、その友人たちも一緒だ。
親切心と興味がないまぜになって、そのような状況になったのだろう。
チェビルはひとまず女子3人についていき、初等部を実際に歩いてみることにした。
ここが理科室、ここが音楽室、ここが……。
教室のある建物から出て体育館やプールも案内された。
しかし怪しいところは見当たらない。
「こんなところかなあ」
女子たちが一通り、案内したと告げた。
「そうか。ありがとう、いろいろ分かったよ」
「そう? えへへ。そうだチェビルくん。お家はどっち? 一緒に帰ろうよ」
ここで断るのは不自然だ。
オーガイも帰宅したようだし、転校初日にひとりで校内をウロウロしているのは目立つ。
「うん。俺の家は近くのマンション。一緒に帰ろう」
「そうなんだ? 私たちもすぐ近くなんだよ」
そんなわけで教室に荷物を取りに戻り、チェビルは女子3人のやまない会話に疲れつつ、マンションの前まで見送られた。
◆
「ただいま」
「あれ、おかえりなさい。早かったですね」
ラフな部屋着に着替えたオーガイが、アイスを片手に出迎えた。
さすがにイラっときてチェビルは唇を尖らせる。
「ソッコーで帰ったのは誰ですかね。オーガイさん」
「フォローはすると言ったのに。まあいいです。転校初日だから派手な動きをしない、という判断を尊重しましょう」
ペタペタと裸足でフローリングを歩いて家の中に入っていく。
チェビルも靴を脱いで、家に上がった。
リビングには巨大なポータルが鎮座している。
これは仕事用のポータルで、アルマンド社のエージェント仕様だそうだ。
さすがにまだオーガイの私物との違いは習っていないので、何が違うのか知らないが。
「これはクラスメイトに見せられないよなあ」
リビングにはど真ん中にポータルがある上、最低限の家具しかない。
生活感が薄いとかそれ以前の問題である。
「誰も呼ばないでくださいよ。そもそもそんな深い付き合い方をする仕事じゃないってことは、分かっていると思ってましたけど」
「そうですね、分かってますよ。……ところでミサキさんとクロさんは?」
「ミサキさんは晩ごはんの買い物です。クロさんは知りません」
「…………バックアップのふたりって、ちゃんと俺たちのこと見てるんですか?」
「見ているでしょう。危険がなくなったから、生活に戻っただけですね。クロさんは知りません」
「ちなみにミサキさんが出掛けたのはいつです?」
「私と入れ替わりでしたね。クロさんは知りません」
俺のこと見てないじゃないか!!
内心で「大丈夫か?」と思いながら、チェビルは冷蔵庫からアイスを取り出した。
「あ、それ私の物ですよ」
「ケチなことを言わずにひとつください。というかこれ、ミサキさんが買ってきた奴じゃないんですか」
「ミサキさんが私のために買ってきたものです」
そんなのアリか? とチェビルは思ったが、袋を開けて遠慮なくアイスにかぶりつく。
「あ、あ~~~!? なんてことをするんですか!! それ私のだって言いましたよね!?」
「
「食べ物の恨みは恐ろしいですよ、チェビルくん」
食べ終わったアイスの棒をチェビルに向けてくるオーガイ。
これでもうすぐ20歳だというが、精神年齢が外見に引きずられて幼くなっているのではないか、とチェビルは思ったが面倒くさいことになるので口には出さずに胸の奥にしまっておく。
ふとエレベーターがこの階に止まったのを感知して、チェビルは玄関を向いた。
サンダルの音でミサキが帰ってきたのだと判断する。
玄関が開けられ、
「ただいまー」
陽気な声がリビングまで届く。
ネギがはみ出ているエコバッグを手に下げているのは、どこから見ても真面目そうな女子高生といった感じのミサキだ。
「あ、おかえりチェビルくん。学校はどうだったー?」
「怪しいところはまだ見当たりませんでした」
「そうじゃなくて、楽しかったかって聞いているんだけどー」
「え? 仕事ですよ。楽しいも何もありません」
「えー? そっかあ。真面目だなあチェビルくんは」
冷蔵庫に手際よく食材を並べていくミサキ。
「今日の晩ごはんはねー、コロッケ蕎麦だよー」
「コロッケ……蕎麦? コロッケをおかずに蕎麦ですか?」
「違うよー。蕎麦の上にコロッケが乗ってるんだよー」
「え、なんですそれ。大丈夫なんですか?」
ミサキは「最初はサクサクした食感を楽しみつつ、コロッケの衣が麺つゆを吸ってふやけたのがまた美味しいんだー」と説明する。
採掘坑の宿舎の食堂以外ほとんど知らないチェビルとしては、ショッキングな組み合わせだった。