ある日、ブライズは天気が良かったので森に散歩に行くことにした。ブライズはパンとチーズの入ったバスケットと、スケッチブックを持っていくことにした。
森の中は鳥たちの声で思っていたよりも賑やかだった。
「気持ちよい風ですね」
ブライズはお気に入りの場所に着くと、木々や花々のスケッチを始めた。
しばらくすると、人の気配がするのに気がついた。
「きゃあ!? デリック様!?」
「失礼致しました、ブライズ様。あまりに集中されていたので声をかけるタイミングを逸してしまって」
デリックは頭をポリポリとかいて、気まずそうに微笑んだ。
「素敵な絵ですね」
「たいしたことありません」
ブライズは慌ててスケッチブックを隠した。
「兄とアシュリー様の肖像画も、応接室に飾らせて頂きました」
「まあ、恐れ多いです」
「いいえ、素敵な絵だと良くお客様にも言われていますよ」
ブライズは照れながらも、嬉しそうに微笑んだ。
「あの、ブライズ様はもう心に決めた方はいらっしゃらないのですか?」
「おりませんが、何故ですか?」
デリックはホッとした表情で話した。
「私などが話しかけてもご迷惑でないか、心配で」
「……デリック様とのお話は楽しいです」
ブライズの頬が赤らんだ。
「立ち話も何ですから、座りませんか?」
「ドレスが汚れてしまいますよ」
「かまいませんわ」
デリックは森の話や木々、花の話をした。デリックの博学さにブライズは感心した。
「デリック様は物知りなのですね」
「本が好きで、幼少から図書室の本を片っ端から読んでおりましたから」
「それで」
デリックとブライズはしばらく黙って、風景を眺めていた。
「こんな風に黙ってしまうと、退屈ではありませんか?」
「いいえ、私は落ち着いた時間を過ごすことが楽しいのです。デリック様は?」
「私もです。……ブレイズ様とお会いできて良かったです」
デリックは俯いて言った。
「舞踏会でお会いするお嬢様方は賑やかすぎてついていけません」
「私も舞踏会や華やかな場所は苦手ですの」
「また、お会いできますか?」
「ええ、喜んで」
デリックはブライズに手を差し伸べた。ブライズはその手を取って、握手をした。
二人は見つめ合って、微笑んだ。