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婚約者は私より妹を選びましたが、むしろ好都合でした
婚約者は私より妹を選びましたが、むしろ好都合でした
茜カナコ
異世界恋愛ロマファン
2025年03月25日
公開日
3,363字
完結済
地味な令嬢が婚約破棄されたけれど、自分に合う男性と恋に落ちて幸せになる話

第1話



「いいですか、ブライズ。今日の主役は貴方なんですから、いつものように壁の隅に立っていてはいけませんよ」


「はい、お母様」


 それを聞いて、妹のアシェリーも言った。


「私も目立たないよう努力は致します」


「アシェリー、ありがとう」



 一家で、ロールズ家の舞踏会に向かう。


 馬車は軽快に走っているが、私の心は重かった。なぜなら、目立たず地味に絵を描いて過ごす方が気楽だったからだ。しかし、今日はそういうわけにはいかない。それは、今日がバーナード・ロールズ様と私の婚約発表パーティーだったからだ。



「さあ、着きましたよ。ドレスを踏まないように気をつけて」


「はい、お母様」


 私は最後に馬車を降りた。


 ロールズ家の舞踏会は、始まろうとしていた。


「ロールズ卿、本日はよろしくお願い致します」


「パルヴィン伯、こちらこそよろしくお願い致します」



 お父様達が挨拶をしていると、バーナード様が現れた。


「はじめまして、ブライズ様」


「あの、私アシュリーです。お姉様はあちらです」


 バーナード様は握手しようと出した手を引っ込めてしまった。


「あなたが、ブライズ様?」


「はい、バーナード様」



 あらかさまに、バーナード様はがっかりしていた。


 それはそうだと、私も思っていた。金髪に碧眼、お人形のように可愛らしい妹に比べて、私は地味を絵に描いたような容姿をしていた。自覚もしている。


「婚約は解消しませんか? 私はアシュリー様に心を奪われてしまいました」


「いいですよ、アシュリーが良ければですが」



「私が!? お姉様を差し置いてそんなまねは出来ません!!」


 アシュリーは首を振った。しかし目はバーナード様を見つめている。


「私がお嫌いですか?」


「いいえ、そういうわけでは」


 アシュリーは顔を真っ赤にして俯いた。


 バーナード様は誰の目から見ても美男子だったし、派手でアシュリーと並ぶと絵になった。


「婚約祝いに、お二人の肖像画を描かせて頂けますか?」



「お姉様……」



 こうして私の婚約披露パーティーは、バーナード様とアシュリーの婚約披露パーティーとなってしまった。


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