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第15話 ブラックモンブラン、またの名を青春_3

 商店街はこれまでも帰り道だった。けれど、恥ずかしがり屋で繊細な高校生にとって、スーパーのセルフレジがスタンダードな排他主義な高校生にとって、古臭く閉鎖的な個人商店は入りづらい。

 物を買うためだけに不要なコミュニケーションをとるのは、正直面倒に感じる。欲しいものが無くても、絶対に勝って帰らないといけないというプレッシャーも窮屈で仕方がない。だから敬遠していた。

 でもいざ入ってみると、案外悪くないな、と思った。

 商品が多少割高でも、その分店主のおじいさんと、言い換えれば利害のない赤の他人と、一期一会の他愛もない話をするのも悪くない。肩の力を抜いて、後腐れない適当な冗談を言うことも、同級生には言いづらい些細な不幸を吐露することも出来る。

 それはある種の期待に似た、特異な興味と焦燥だった。その日からはなんとなく、強いて言えば稀にまけてくれるからという理由で、宮瀬とともに河津桜商店に通い始めた。自分でも変なことだけれど、気づけばこの小さな店でたまにアイスを買うことが、取るに足らない息抜きの場になっていた。

 そして、満開の桜が徐々に散り始め、葉桜に移行しつつある頃。

 古風で可愛い女の子と、河津桜商店で出会った。

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