何をやってもビミョーなオトコが町外れのコーヒー屋の隣に住んでいた。名前は小見野達郎という生まれも育ちも何の変哲もないオトコだ。
街が暗くなる頃、このオトコは都会の方の会社からやってきておぼつかない足取りで鍵をあけ部屋に入っていく。
(はぁ~今日も疲れたな〜
なんでこんなに俺が怒られなきゃ行けねぇんだ)
家に帰宅して出た言葉がそれなのだから会社での姿が思い浮かばれる、今日もと言うので日常的に上司に怒られていたのだろう、
(ちくしょー
ムカついてきたな
あいつの顔面ぶん殴ってやりたくなってきた)
良からぬことをいい出した。あいつというのは上司なのだろうが、日頃のストレスを晴らしたいと思うが故に家でも嫌いな上司を思い出すとは何とも無意味だ。それなら思い切り仕事をやめて家で寝転がっていても良いのだ、
グダグダ抜かしながら達郎はよく行くコンビニへ晩飯を買いに出かけるのであった
会社でのスーツは脱ぎ、ダボダボの一周回ってオシャレと感違いされそうなズボンと好きなアニメのTシャツに着替え、重たい靴を脱ぎ代わりにサンダルを履いて普段の凡庸な姿である。
(どうにかしてあいつをギャフンと言わせてやりてぇな、言われっぱなしじゃムカつきがおさまないぜ。)
コンビニへ行く最中でさえ、そんなことを考える達郎であるが言われっぱなしではそう思うのもおかしなことじゃないが、そもそも仕事のできない達郎が悪いじゃないかとも思える…
コンビニについたらいつもの定員さんに軽く会釈をした、慣れ親しんだ顔だが少し照れている。いつも食べていたのはツナマヨおにぎりとからあげ串それと春雨のスープだ。それらをそそくさと取り達郎は
急ぐように店を出た。そうオトコは腹が減っていたのだ。家に着くやいなり鍵をかけるのも忘れ唐揚げ串をレンチンし春雨スープにお湯をそそいだ。
うまい飯を食えば達郎のモヤモヤした気持ちも吹っ飛んだのであろうがこのオトコケチであり、自分へのご褒美もないのだ。
(いただきます、うめぇ~!
唐揚げ串とツナマヨ握りの相性は今日も最高だぜ〜)
いつも同じようなご飯しか食べていなかったが、この相性を知って以来よく食べている。うまい飯にはスープもと言い、あったかいスープでそれらを腹に流し込むのであった。
腹が膨れてきた頃、今日の反省を達郎は初めた。
まず仕事のミスをしたのは自分だったがそれを同期の人間や、他の人間がいる前で怒るのはどうかしてると達郎は腹を立ててまたムカついて始めた
(あー仕事でもミスばっかり
上司にちっちゃなことで怒られてたら将来も大した人生歩めるはずないよなー俺の人生ってなんか意味ねぇなー)
今までの失敗が重たくじぶんにのしかかるようだった。ふと将来について考えてもなんだかパットしないのが見えたのだろう、達郎は人生の意味を説いていた。
(はぁーもう寝るか
早く寝れば明日はいい気分で目が覚めるはずだ)
そう考え食べたあとの後始末もせずに歯磨きをして布団にはいりゆっくりと今までの思い出を頭で再生しながらゆっくりと目を閉じて静かに寝るのであった。
朝の日差しがカーテンをしきりに少しだけ部屋を照らし近所の鳥がチュンチュンと鳴きはじめた。
達郎は眠りから覚めてすぅーと座ったまま背伸びをした。
(わあ~よく寝れた
なんだか今日はいつもと違う気分で目が覚めた)
それはけっして悪いものじゃなく、なんなら全人類にかんじてほしいほど晴れ晴れとした気持ちだった。いつもと違う億劫な気持ちにならず、いい気持ちで会社に迎おうと思えた。達郎はそそくさと洗面台にむかい、冷水で顔をしめた。それからも気分のいいまま身支度をし、気持ちよく晴れた空の下会社にむかった。
いつも通る道だった。最寄りの向かう道の端に見慣れない少女が立っていた。今の時代なかなか見ないおかっぱで袴を着て立っていた、しかも手にはなんだかその独特の魅力に引き寄せられそうになった。
しかし、のんきに準備していたから会社に行く時間だ急がなければならなかった。素通りしようとするとき思わぬ彼女から呼び止める声がかかった、
(あなた選ばれたひとよ)
その意味の分からぬ声に戸惑いを隠せず達郎は足を止めた。この少女は何を言っているのだろうか誰から選ばたのか、その理由さえわからない
(それってどういう意味?)
達郎は思わず聞いた