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第26話 全てを賭けた一撃

「ええっ!? 脳筋の虫さんなの?」


 左右、上下から尾を振り回しファインを攻め立てるジェネラス。


「くうっ……」

「弱気になってはダメよ、ファイン!」

「でも、これじゃ防戦一方だよ……」


 次第に押されていくファイン。グレースは攻撃に出る機会を伺っているが、ジェネラスの再生力を超える一撃を叩き込む必要があり、飛び込めずにいる。


「プルのカウンターも使えないか……!」


 焦るグレース。するとノアルがファインに向けて言う。


「私に考えがあります。プルは魔法を吸収し威力を倍増させて相手に跳ね返すのでしたね?」

「ええ、でもあいつは魔法を使わないから……」


 ジェネラスの攻撃をなんとか防いでいるファインは、何かに気づいたように声を上げる。


「あ! もしかしてノアルが考えてることって!」


 その反応を見たノアルは力強く頷く。


「私の魔法も跳ね返せる、そうでしょう? うまく反射させればあの怪物に当てることもできるはずです」

「方向を変えるぐらい造作もないわ。あの気色悪い虫に鉄槌を下して差し上げてよ」


 啖呵を切るプルに応じて、普段は穏やかなノアルの射るような眼差しがファインに向けられる。


「次は私とモンドの全力を出します。どれだけの威力が出るか、私自身、正直恐ろしいです。それでもやりますか?」


 ファインの眼前では、次々にジェネラスの餌食になっていく討伐隊の仲間たちが見える。尾はファインを狙っているが、人型部分の毒を伴う鋭利なカギ爪が足元の討伐対を襲う。


 すでに戦意を失い逃げ出そうとする者も、魔王の結界により離脱できず戦場は恐慌をきたしている。


 そんな地獄絵図を眼前にし、ファインの胸にはセクレタリアトでの惨状が思い起こされていた。


 街は破壊され、女、子ども、老人を問わず多くの命が失われた。悲しみと怒りの感情が湧き出てくる。ファインはごくりと唾を飲み込み答える。


「やります……やりましょう! 私たちがなんとかしなければ全滅です。魔王が野に放たれればセクレタリアトのような悲劇がインヴァーでも起こります……ここで魔王を倒します!」


 ファインに熱い想いが灯り、オレンジ色のオーラが体を包む。


「いい覚悟よファイン! わたくしたち力、存分に見せて差し上げてよ!」


 ファインのオーラはプルに流れ込み、黄金の輝きが薄暗い城内を眩く照らす。


「ファインさんの想い、受け取りました! モンド、全力でいきますよ!」

「我の準備も出来ている。さあノアル、全てを解き放つのだ!」


 ノアルは杖を構え、目を閉じて詠唱を始める。


「生きとし生ける者を見守る神々よ、災いをなす悪なる存在からか弱き者を守りたまえ。その怒りは全ての敵を滅し、再生の機会すら奪わん」


 爆発的に高まっていく魔力に耐えかねたノアルの服がボロボロと破れていく。ブラウスは千切れ、綺麗な腕が、肩が露わになっていく。

 生足のスカートも散り散りになり、ノアルの髪の色と同じピンクのパンツが剥き出しになる。


 更に高まる魔力によりブラウスは形を失い、大きな胸を覆うブラジャーだけが残る。

 パンツの色と合わせたピンク色にフリルの付いたブラ、そこに収まる胸がブルブルと激しく揺れる。


 戦場で下着姿になってしまったノアルの恥ずかしさは頂点に達し、今すぐ穴にでも入りたい想いに襲われる。しかし、それこそがホープフル・ダイヤモンドに力を与える。


たかぶる、昂るぞ、ノアル! これ以上は我ももたぬくらいにっっ!!」


 モンドの渋い声は絶叫に変わり、横で聞いているファインをドン引きさせたのだが、すぐにノアルの一撃を受け止めるべく体勢を整える。


「ファインさん、お願いしますっ! ラース・オブ・ゴッド神の怒り!」


 ノアルの杖から放たれた物体は、不自然に色がなく、実態を伴わないかのようにゆっくりとファインへと近づいていく。

 強いていうならば直径一メートルほどの球体だが、周囲の景色を歪ませ、自身の形も色も定かではない。


「どこに攻撃しておるのだ。愚かなことを!」


 ちょうど討伐隊をほぼ一掃し終えたジェネラスは、少し離れたところから一連のやりとりを目にした。


「んんんんっっ……!」


 ファインが掲げたガントレットにノアルの魔法が触れると、凄まじい力で引き込まれそうになる。

 プルの力でなんとかその場に留まるも、ファインはこれまで感じたことがない力を目の当たりにしていた。


「あはははは! 面白い、面白いわ! 今のわたくしの相手に不足なくってよっ!!」


 ノアルの破滅的な魔法を前にしてプルの高笑いが響く。それに鼓舞されるようにファインも闘気を目いっぱいに高める。

 守る、みんなを! グレースの力に、私はなるんだ!!


 ノアルは力を使い果たしたのか、地面に膝をつき、肩で荒い息をしている。グレースが駆け寄り、自分のマントを彼女にかけてやっている。


「やあああああ!!」


 根負けしたかのようについにノアルの魔法はプルに吸い込まれる。


「ふう、ご馳走様。さあファインっ!」

「うん、プルちゃん! リフレション・バーストっっ!!」

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