一つの大きな関門はクリアした! やはり奴も逃げられないよう結界を張っている。
普通なら絶望するところかもしれないが、俺たちにとっては好都合でしかない。
「やるぞっ、アロン! 今度こそ、力を解放しろっ!!」
爆発的に闘気を高め、青白いオーラがグレースを中心に広がっていく。ジェネラスを含め戦場にいる誰もが気を奪われる。
「逃げられないんじゃあ……しょうがねえな! 俺様の真の力を見せてやるぜっ!!」
グレースの闘気にあてられ、覚悟を決めたアロンが叫ぶ。インリアリティを倒した時と同じく、グレースの闘気を吸収し、巨大なオーラの剣が形成される。
「それがインリアリティを
真っ向から勝負を受けるといった様子のジェネラスへと、猛烈な勢いで駆け寄るグレース。敵の尾を踏み台にして高く飛び上がる。
「はあああぁぁぁ!!」
「残念、まともに相手をするわけがなかろう」
ジェネラスの背中がぱっくりと割れ、サソリの尾のような触手が背後から出現する。それはグレースへと振り下ろされる、が、寸前で何者かに切り落とされる。
「グレース殿、今だっ!!」
ジェネラスの不意打ちからグレースを救ったのはヴァイスだった。グレースが跳躍する前にアイコンタクトでほぼ同時にジャンプをしていた。
歴戦の猛者同士、ジェネラスが何かしてくることは察知しており、完璧な連携を決める。
「喰らえっ! 必殺、アロンダイトっっ!!」
「うおっしゃああああ!!」
グレースの咆哮と共に、巨大なオーラの剣へと変貌したアロンがジェネラスの人型を一刀両断にする。断末魔の悲鳴一つなく、真っ二つにされるジェネラスの本体。
青い鮮血を噴き出しながら、切り離された上半身が落下していく。残された下半身と
グレースとヴァイスが地面に達するころには、ジェネラスの上半身は灰になっていく。
「見たか、俺様たちの力を!」
アロンが喜びの声を上げるが、それを掻き消すように頭上から声が響く。
「カカカ、無駄よ無駄ぁ」
みなが上を見上げると、消滅したはずのジェネラスの上半身は何事もなかったかのようにそこにある。ものの数秒で完全に復活している……!
「なんだあの再生力は……!?」
ヴァイスが唇を噛む。グレースは弱点だと考えたジェネラスの人型部分が、そうではなかったのかと逡巡する。
そうなると数十メートルにもおよぶ奴の百足状の体を細切れにでもするしかないのか……!?
「ぐわああっっつ……!」
周りにいた討伐隊メンバーがジェネラスの尾に喰われる。
「美味い美味い。新鮮な肉は旨いぞ」
ジェネラスの尾付近からぼりぼりという残酷な音が漏れる。
「やめろっ!!」
ヴァイスが尾に切りかかるが、ジェネラスは体をくねらせ、その巨体からは考えられないスピードで頭上から人型部分が襲いかかってくる。
跳躍しようとしていたヴァイスは虚を突かれ、敵の爪の餌食となる。
「ぐぬっ……!」
鎧を腐食させるほど凶悪な爪が肩に深々と刺さり、壁に叩きつけられる。
「ヴァイスっ!! くっ……!」
「貴様も死ねっ、魔王殺しの大罪人よ!」
グレースの眼前にジェネラスの顔が迫る。吐き気を催す腐臭が鼻を襲うほどに近づく。
「
稲光を伴う雷の塊がジェネラスに直撃し、爆風が四散する。その隙にグレースは後方の仲間たちの元へ飛び、体勢を整える。
「助かった、ノアル」
グレースの危機を救ったノアルは既にメッシュのニットとタイツを脱いでおり、森で魔獣に大ダメージを与えた魔法を繰り出していた。
「生意気な。しかしそれも無駄なあがきよ」
ジェネラスはやはりさしたるダメージは受けておらず、人型部分が負った火傷もすぐに回復していく。
数十もの節が
「危ないっ!」
前に出たファインがガントレットを掲げて間に割って入る。
「イヤイヤイヤ! わたくしをあんな汚物に近づけないでくださる!?」
プルは全力で拒否しながらも、その力で溶解液を目前で止める。液体の束は空中で静止した後、ボトボトと落ちていき、触れた床を溶かす。
「獣は嫌いだけど、虫はもっと嫌いよ」
「ありがとう、プルちゃん!」
「溶けてなくなった方が楽だったものを。虫けらは虫らしく潰れろっ!」
「だから虫が虫って……」
突っ込みを入れる間もなくファインの元にジェネラスの尾が襲いかかる。しかし例のごとくプルによって猛攻を阻む。
「どうしたの! そんな攻撃じゃ私はやられない! 魔法でも使ってみたら?」
ファインは反撃の機会を生むため、ジェネラスを挑発する。
「魔法なぞ力なき者が使うまやかしよ。ワシの圧倒的なパワーがあればそんなもの必要ない!」