これがナミたちが内蔵助と交わした最後の会話である。赤穂浪士たちが御家再興の希望とした浅野内匠頭長矩の弟の浅野大学は、大名としての再興は果たせなかったものの、将軍綱吉死去に伴う大赦の後、改めて安房国朝夷郡・平郡に500石の所領を与えられ、旗本に復した。また吉良家がお取り潰しとなったのは、討ち入りをも構想内の幕府の肝入り⦅陰謀⦆だったのか……。
そして元禄16年2月4日 ⦅グレゴリオ暦1703年3月20日⦆赤穂浪士たちが切腹する。
クエストを終えたナミたちは、大石の墓の前で手を合わせる……するとデンちゃん前に居るはずのない大石内蔵助が現れる。少し抜け殻のような内蔵助が、
「ありがとう。お主たちのおかげで我々は救われた」
そう言って手を差し出してきた。恐る恐るデンちゃんがその手を掴むと、内蔵助から光る球が飛び出した。しかも江川の時よりも大きい。
「なにまたこれ、どーしたの??」
「デンくん、大丈夫か?」
藍が身構える。大石には見えていないのだろうか? 大石はなにも動じない。そして光る球は音もたてずにデンちゃんに吸い込まれた。またも光る球とデンちゃんは互いを引き寄せ合うように重なり光る球は見えなくなった。
「デンちゃんなんともない?」
「ナミさん、『また』って前にもあったの?」
「うん、江川さんのとき……」
ふと目を向けたそこにはもう大石は居なかった。音もなく消えていた。そして討ち入りが行われたことで諦めたクエストであったが、『赤穂浪士46人は無事救われました。そのためクエストはみなし達成と判定されております、おめでとうございます。そのため特別査定での報酬が支払われます』とのメッセージが送られてきた。
クエストは終了……赤穂浪士は救われた……?!
3人は釈然としないまま達成ゲートを潜り、戻ったのだった。
正史において、不平を感じたのは内匠頭と赤穂藩士たちであったのは間違いない。両成敗にならず、浅野内匠頭だけが処罰された不公平。
赤穂藩士たちは忠臣であったのは相違ないとも思う反面、そもそも内匠頭は正しかったのであろうか? 動機が不明のまま逝った内匠頭はあの世から義士たちを褒めたのであろうか? 内匠頭の刃傷も内蔵助たちの仇討ちも自己満足を押し付けただけにも取れてしまう。もしかしたら百姓一揆と変わらぬ類。
そして討ち入りが幕府の狙い通りであったとするならば、歴史とはあまりにも時代の陰謀に塗りつぶされてはいないだろうか?
現代においても理不尽がまかり通るのが社会。そんな社会に一石を投じかったのかもしれない。
今回のクエストでは、結果の満足はあっても、不平が解消された訳ではないのが残念である。
***
「今回はクエスト
「はい、達成報酬は支払われずに基本査定アップによる特別報酬が支払われたとのこと……」
「報酬の話はどうでもいい……酸化の大きさは……?」
「レベル4相当だそうです」
「次は何としてでも奪え」
「はい」