「ねーデンちゃん。わたし昨日お父さんに怒られちゃった」
学校内でナミと2人で話すのはあまり得意ではない。ナミはいつも男子から注目されていて、デンちゃんには居心地が悪い。
「ねーデンちゃん、聞いてるの?!」
周囲の殺気を上回るナミの不機嫌をデンちゃんが察知したのなら、慌てて応える。
「え、えーやっぱり?! 俺は母さんに言われた」
「いきなりクエストで月曜日学校休んじゃったもんねー」
学年違いのナミにとって、3学年の教室が並ぶこの廊下はアウェイのはずなのに、デンちゃんの方が居辛いのは、ナミと釣り合っていない自信の無さなのだろう。
「クエスト初挑戦、初達成だもんね」
「その後の焼肉もカラオケも楽しかったし」
「そう言えば、俺たちと、イイネ様たちと、もう一組の参加者って誰だったんだろう?」
「それも気になるけど、イイネ様たちにギブアップの仕方教えてもらっといた方がいーよね、イザというとき……」
「なんだか憎めない3人だよね」
「って言うかイイネ様のファッション、今思えば二次会のカラオケにピッタリ」
デンちゃんはイイネ様のディスコファッションを思い浮かべてみる。
「……わたしはクエストのことお父さんに言ってなかったから、大目玉よ……ってデンちゃんまた、聞いてるの?」
飛行機内でイイネ様を捕縛したときの急接近を思い出し、それ以外のことを考えられなくなっていた脳ミソを、何とか自制する。
「え、え? 言ってなかったの? 俺、おじさんに怒られちゃうなぁ……」
「デンちゃんとお泊りだって、言ってなかったの」
「ナミちゃん声大きいッ! ……でもそれやばッ?! 殺される……」
「デンちゃん、暫く家に顔ださないほうがいいかもねッ」
「うん、そうする」
「ね、次のクエストはいつにする?」
「早くやりたいね」
「そうね!」
予鈴が鳴る。それが廊下に響くとそれぞれの下へ返っていく生徒たち。デンちゃんも洩れなくそれに従う。初めてのクエスト成功が、2人をクエストへと夢中にさせていた……。ナミは階下へと向かう途中振り返る。
デンちゃんは卒業してシーカーになる。デンちゃんの学ラン姿ももう少しで見納めだな、ってナミはデンちゃんが見えなくなるまで見送った。
***
「あの時、菊地正子の手紙が確かに『酸化反応』したんだな?」
「はい、確かに見ましたアレを……」
「そうか……そんな低クエストで……」
「如何しますか?」
「今後の動向に要注意だな」
「はい」