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第5話

「お前さん初めてって聞こえたけど?」

「高校生?……の新顔か……」


 登録が終わり、受付を1歩2歩離れてすぐのことだ。筋肉質な大男2人組が話しかけてきた。ナミは思わず後ろ向きに1歩、受付へと戻る。そしてマスカレードマスクがあまり意味を成していないことを実感する。


(歳は50前くらいだろか?!)


「お兄さん、メディエに登録した目的は何だべ?」

反主流派側アンチガバメントけ?」


 筋肉質な大男2人を押しのけ、顔が隠れるほどに深く帽子をかぶった男2人組が声と共に割り込んできた。1人は腰にピコピコハンマーを、もう1人はガラス吹きの棒のようなものを杖のようにしている。ナミはさらに1歩下がった。


(大勢で歓迎して……くれてる……わけないわよね……)


「何だテメェら」

「こんな子供が反主流派レジスタンスって感じしないべや」

「それもそうけ……」


 筋肉質な大男の方の1人が喰って掛かるも、帽子の2人は相手にしない。それに業を煮やした筋肉質な大男の1人が、ピコピコハンマーの帽子男の肩を掴む。次の瞬間、肩を掴んだ男は後ろ手に捻り上げられる。それにしても帽子男の動きと言葉尻とのギャップが……。


「痛ててて」

「何しやがるんだ!」


 もう1人の筋肉男が助けに入ろうにも、帽子のもう1人が棒を上げ、立ち塞がる。


「人が話しているのに割って入るなんてマナーが悪いじゃないけ?!」

「お前らの方だろ、そこの坊主と俺たちとの間に割り込んできたのは!」


「そうだっけろ?」


(けろ?)

 深くかぶった帽子から感じる強面な雰囲気と田舎臭い言葉尻にナミは思考をくすぐられてしまう。


「痛ててて、放せ」

「メディエに登録したってことは、クエストに出るんだべ? その目的は金か? それとも……」


 帽子の男は捻り上げた手を緩めることなく、デンちゃんに向けて淡々と語り掛けてきた。


「俺は探究者シーカーです。」


 デンちゃんは怯むことなく堂々としている。ナミはその姿に思わず惚れ惚れしてしまう。その背後になにやら気配を感じたのなら持ってた紙をサッと取り上げられてしまう。


「キャッ」

「ナミちゃん!」


 ナミの短い悲鳴にデンちゃんがバッと振り返る。そこには女が立っていた。男たちとお揃いの帽子だが、こちらは美しい顔と長い髪をおくびも隠さず晒している。ミステリアスに巻きつけてある鞭が異様さを醸し出す。


「んー何々……『近所のアルバイトよりもシフトが自由で働きやすそう(うちの高校はアルバイト禁止だし)』『デンちゃんは普段、家のこととロボット作り、変な武術ばっかりだから、クエストでデート……した……いっ……」

「キャー!! 何声に出して読んでんのよッ!!」


 ナミは慌てて紙を取り返す。その顔は真っ赤だ、湯気も出ている。そんなナミを気にすることなく女は猫撫で発信する。


「大丈夫なんじゃない~。坊やたち行っていいわよ」


「イイネ様、いいんだすか?!」

「エモ、姐さんが言ってんべ」

「だけんどもバズ兄……」

「バカだねお前たち。レジスタンスがこんな堂々とメディエに登録するわけないだろ?!」


(変な武術って……)

 デンちゃんは心外だ……。ナミが変な武術という認識だったことに……。


(デートって……デンちゃん全部聞こえちゃった、かな……?)

 デンちゃんの強張った表情を盗み見たナミは、デンちゃんが何を以ってその表情なのか、正しく勘違いが支配している。




「なーに可愛い理由じゃないか。この子お尻も小っちゃくてかわいいじゃないかい」


 そう言うとナミのお尻を撫でる。ナミは飛び上がって手を振り上げる。デンちゃんはお尻を羨ましそうに見ながら声を上げる。


「い゛ー、何すんのよッ!」

「ナミちゃんのお尻がッ!」


 イイネ様と呼ばれた女はナミの平手打ちを受け止めた。帽子の男たちはナミに近寄ろうとするも、今度はデンちゃんが行く手を阻む。

(ナミちゃんの平手打ちが簡単に止められるなんてッ)


「お止め! おまえたち。……あんたたち気に入ったよ。クエストで会うのが楽しみだよ。じゃあね、坊や~」


 そう言ってイイネ様はその色っぽい唇からデンちゃんに連続で高速投げキスを放つ。『しまった』と緊張が走るナミ。デンちゃんは動けないでいる。

 デンちゃんとイイネ様との空間を奔るキッス。それを筋肉質の男2人が割って入り身を挺してガードする。間一髪である。2人の男の顔が幸せそうだったので、ナミはお礼を言うのを止めた。


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