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第10話 そんなこんなで

そんなこんなで、アンリ・ルソーを見に行った日のことを、日記に書き残すことにする。

 「そんなのより、たくさん壮大な経験をしたじゃない。わざわざそんな、小さな一日のことを取り上げなくたっていいのに」

 日記のことをアンリさんに伝えたら、アンリさんは呆れてそう言った。だからボクはムキになって、アンリ・ルソーに固執する。

 「これまでもなんだってしたし、これからだって色々すればいいじゃない」

 「過去は終わったことだし、未来のことなんてわからないから」

 「カリフォルニアのディズニーで遊んで、ルーブル美術館でゴッホを見て、屋久島で世界遺産の屋久杉に感動したりしようよ。そんな壮大な日々を日記に書こうよ」

 「聞こえのいい言葉なんて意味がないよ。今ある現状だけがすべてなの」

 アンリさんはいつだって僕をからかうから、今日だけはボクが軽口を叩いてみることにする。

 「人の受け売りで反論できた気分になれるなんて、君はやっぱりまだお子ちゃまだ」

 ボクの子供じみた行動に、アンリさんはやっぱり高笑いをする。


 なんだかちょっと、悔しい気分。すこしだけふわふわと、これでいいかと満足した気分。

 どこかの誰かに伝える気持ちでもないことだから、ボクはちまちまと、アンリ・ルソーを見に行った日のことを、ここに書き残すことにする。

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