そんなこんなで、アンリ・ルソーを見に行った日のことを、日記に書き残すことにする。
「そんなのより、たくさん壮大な経験をしたじゃない。わざわざそんな、小さな一日のことを取り上げなくたっていいのに」
日記のことをアンリさんに伝えたら、アンリさんは呆れてそう言った。だからボクはムキになって、アンリ・ルソーに固執する。
「これまでもなんだってしたし、これからだって色々すればいいじゃない」
「過去は終わったことだし、未来のことなんてわからないから」
「カリフォルニアのディズニーで遊んで、ルーブル美術館でゴッホを見て、屋久島で世界遺産の屋久杉に感動したりしようよ。そんな壮大な日々を日記に書こうよ」
「聞こえのいい言葉なんて意味がないよ。今ある現状だけがすべてなの」
アンリさんはいつだって僕をからかうから、今日だけはボクが軽口を叩いてみることにする。
「人の受け売りで反論できた気分になれるなんて、君はやっぱりまだお子ちゃまだ」
ボクの子供じみた行動に、アンリさんはやっぱり高笑いをする。
なんだかちょっと、悔しい気分。すこしだけふわふわと、これでいいかと満足した気分。
どこかの誰かに伝える気持ちでもないことだから、ボクはちまちまと、アンリ・ルソーを見に行った日のことを、ここに書き残すことにする。