「あのなー、
「え、ええ。わかりました」
これは、前回じいちゃんを呼び出した時と同じ方法なのか?
「ドーマンセーマン、アビラウンケンソワカ、来や!
いや、どうやら爺ちゃんを呼び出すのではなく、平安貴族の先祖を呼び出したようだ。
「満生、
「いや、別に用はあらへんねん」
「な、それじゃあ戯れに呼び出したというのか!?
「まーまー、人の話最後まで聞きーや」
相変わらずマイペースな満生さんに、呼び出された平安貴族の傲満は少し苛立っているようだ。
「あのなー、あーしら、あの謎の壺で力をごっつ吸い取られたやんかー」
「う、うむ。そうでおじゃる。まさか
「でもなー、今のあーしの力って本来の十分の一程度やねん。でも一応まだアンタを呼び出せる事が分かったんや。一応蘆屋の本家に伝わるやり方を正式にやってみたんや」
「そ、そうでおじゃるな。今の時代、
靖満という名前を聞いた瞬間、満生さんの顔が固まった。
「ああああ、兄やんの事はいわんといてぇえやぁあ!!」
「わわわ、わかった、満生、落ち着くでおじゃる」
普段マイペースで怖いもの知らずのはずの満生さんがこれ程取り乱すって、いったいそのお兄さんの靖満さんってどんな人なんだろうか?
「それで、満生。
「そうそうそこやねん、本題はそこや。今のあーしの力、どう考えても本来の十分の一や、それでもアンタを呼び出せるかを確かめてみたねん。今後の仕事の為にな」
「今後の仕事? また
何、そのマッチポンプ……。
「ちゃうねん、それやったら今お世話になってるここの人達に迷惑かかるやろ。だからまっとうな仕事や! あーしが考えたのはな、お祓いじゃなくて事故物件リフォームや」
リフォームって事は、俺に何かやらせるつもりなのか?
「あ、あの……満生さん、それってどういう事ですか?」
「あのなー、巧。あーし今ここの家に居候なっとるやろ。でも流石にそこのタヌキ姫みたいにゴロゴロニートしてるのもあかんなーと思ってな、それで今のあーしの力でも霊を呼んだり話したりできるかと思って鬼哭館に置いてた実家の文献読み直しとったねん」
「それで、事故物件で何をしようというんですか?」
「そこや、普通はお化けが出たり孤独死や殺人とかがあった家って『おお事故てる』とかのサイトにまとめられとるねんな。そういう家って不動産も嫌がるねん。だからそこの霊と話をして時には力づくで問題解決したらアンタらの仕事に繋がらへんかなーと思ったんや」
確かにそう言われると、空き家問題が深刻化していて、住む人の居ない空き家のボロ屋を見るたびに勿体ないなーと思う事は何度もあった。
成程、確かにそういった家の持ち主が死んでいた場合、死人に口無しではなくその死者と会話をする事で家の権利者所在不明とかの問題を解決出来るなら、空き家の解体とかリフォームとかの仕事に繋がるか。
「どうやらあーしの力、本来の十分の一でも十分に巧のおじいちゃんとか傲満呼び出せるのがわかったから、普通の事故物件の霊くらいなら問題なく話出来るってとこやね」
「何やらよくわからん事を始めようとしておるようじゃのう、ワシはよくわからんが何かやれというのかのう」
「別にええわ、そこのゴロニートぽてりこ姫のタヌキに手伝ってもらう程手が足りないわけやないからな」
「な、何じゃと!? ワシだって出来る事があるんじゃ! 見るがよい、これがワシの召喚術じゃ」
そう言うと、紗夜はどこから手に入れたか分からないスマホを押し、何かを話していた。
「ワシじゃ、すぐに来るのじゃ!」
あ、これ……俺は何かイヤーな予感がした。
そして十分後……。
「紗夜姉さん! お呼びですか!」
「拙者ら、直ぐに馳せ参じたでござる!」
「ワイら、メシ切り上げて来たんやでー」
へ? これ召喚術でも何でもなく、ただのスマホ呼び出しでは?
というかそのスマホ、どうしたんだ??
「紗夜……それって、スマホだよな。それ、一体どうしたんだ?」
「うむ、これか。これは、
それってただのパシリを使っているヤンキーの女王では??
「何や、それってあーしでも出来る事やん、一応あのアホ三人の連絡先は登録しとるからな。まあ、あーしはそんな事せーへんけど」
満生さんは何とも言えない表情で紗夜と罪堕別狗(ザイダベック)の三人組を見ていた。
いや、紗夜に呼び出されたとはいえ、彼ら三人は母さんの指示で家中の掃除を手伝ってくれたからなんだか悪い気がする。
そして肝心の紗夜は家に併設の児童館に行って子供達と一緒に遊んでいる始末だ。
まったく、これが戦国時代の悪霊姫の姿だといったい誰が思うのやら。
まああまり気にしたら負けのような気がする、近所では紗夜と満生は俺の親戚の良家のお嬢さんといったイメージになっているみたいだ。
まあ実際、満生さんはあのだらしなさとは違って
まあその二人が何の因果か俺の家の居候になっているのが現状で、その満生さんが俺の仕事に有利になるようなプラスアルファを考えてくれたのは、ただ酒を飲むのが本人の中でもプライドとして許されなかったのかもしれない。
でもこの話、いくら俺がツムギリフォームの現社長だと言っても、勝手に一人で決めるのも良くない。
それこそ満生さんに聞いてじいちゃんの霊を呼びつつ、甚五郎さん達にも今後の方向性として話をした方が良いだろう。
甚五郎さん達は今日くらいで鬼哭館の跡地の撤去作業を終わらせて帰ってくるだろう。
俺は別にそれをサボっていたわけではなく、家の事務所で撤去にかかる費用とか、産廃業者への報酬計算とかをしていたのだ。
それなのにコンビニの壁修理に喫茶店の看板修理、それも無償でやったから本来より数日作業が遅れたが、それでもどうにか佐藤武蔵建設との鬼哭館解体作業の仕事に関する契約内容は無事完結した。
だから今後の方向性として、甚五郎さん達とじいちゃんも加えた上で今後のツムギリフォームの仕事を決めていかないと。
まあ、言い方としては……事故物件請負人始めました、ってとこかな。
満生さんが霊的現象を解決してくれるならどんな事故物件でもウチのスタッフで解決出来そうだ。
確かにこれは新たなビジネスになる。
さあ、甚五郎さん達が帰ってきたらこの話を進めよう。
甚五郎さん達が仕事から戻ってきて晩御飯の後、俺と満生さんは紗夜とツムギリフォームのメインメンバーと家族を集め、今後の仕事の話を進めた。
「実はこれは満生さんの提案なんだけど、ウチの今後の方針として、事故物件中心にリフォームしていこうと思うんだ」
「巧ぼっちゃん、正気ですかい!? 事故物件って……殺人とか、孤独死とか普通誰もやりたがらないやつですぜ」
「だからこそビジネスチャンスなんだ、普通ならそんな所に手を出せるワケが無い。でも、満生さんの力だと、死者と話が出来るんだ。そう考えると、これは持ち主不在の家とか、権利がどうなっているのか分からない家とかの問題が解決できる今の俺達だけにしか出来ないやり方なんだ」
「せやで、あーしが話せばたいていの霊とは話出来るからな。どーや? おじいちゃん」
「う。うむ。確かに実際に今ここにワシがおるのは満生さんの力じゃからな」
コレは説得力ありすぎだろ、俺達の後ろに亡くなったじいちゃんが姿を現した。