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第3話 『決意』

フェンの力によっておたふくのように膨れ上がった顔面は瞬く間に治療された。

獣人メイドお姉さんに奉仕してもらえるならこれ以上の幸せはない。


「ニグラス様。そろそろお夕食の時間ですわ」


ふむ。

チラリと時計を見る。

時刻は18時00分。

少し早い気もするが…まぁいいだろう。

メルスに案内されながら夕食用意されている部屋に向かう。


部屋に入る。

執事やメイド達が扉の前に立っていた。

巨大な長机には沢山の料理が並んでいる。

料理に手をつける。

そのどれもが感動するほどの美味さ。

美味しい、と思わず言葉を洩らす。


「ふぅ……」

「主人様…今日はどうなされたのですか?」


おぉ…本物だ。

カトリーナ・アルナス

凛々しくクールビューティーな女性。

背が高く、執事服がよく似合う宝塚の人みたいだ。

でも、胸や尻は女性らしい。

頭脳も高く。

実は、シュブーリナ家に仕えていた騎士である。

なんで、執事なんてやってんだろ。

普段は冷静で表情も変えない。

そんなカトリーナ大きく目を見開いて此方を見ている。


「ん?」

「その……」


少し言い淀みむ。

ニグラスが話せという目でカトリーナを見ると決意した様子で話し始める。

ふぅ、良かった。

殴られるかと心配だったが大丈夫でしたな。


「……普段であれば我々の料理など不味くて食えるか…と皿や机を蹴飛ばしていたのですが、この度は我々の食事を大層美味そうに完食されていたので…」


んー…

なるほど……

まさか、そこまで酷いとは…

この設定は本編では無かったから知らなかった。

聞けば、用意された食事は一口も口を付けずに残し作り直せと癇癪を起こすのが日常茶飯事だったとか。

皿やグラスを割る事も毎日。


しかも、聞けば…彼女が騎士ではなく執事をしていたのはニグラスが「生意気な女は騎士なんぞやめてメイドか執事でもしてろ!」と首にしたとか。

ほんと、何やってんの。


皿などを割る事については、色んな場所に掃除用具が準備されていた。

それに他の執事やメイドも落ち着かない様子だったのかー。

本当に申し訳ない…

メルスは黙々と食事を続けている。


ま、今はそんな事よりも伝える事があるよな。


「……カトリーナ。そして皆。いままですまなかった…せっかく僕の為に作ってくれた料理を無駄にするような真似をした事、本当に申し訳なく思っている」


深々と頭を下げる。

カトリーナを含め周りの執事やメイド達はポカーンと固まっている。

ニグラスを殴り飛ばしたメイド達と同じである。

まさか、また鉄拳制裁が来るのでは!?

と、ビクビクと身体を震わせるニグラス。


「……あぁ、ニグラス様…変わられたのですな…」


しかし、恐れていた状況にはならなかった。

それどころか何故か、カトリーナがとても嬉しそうな声でそう言った。

周りもみんな、すすり泣いている。

どうしてしまったのだ?


「ガフフッ」


フェンは微笑ましそうにニグラスを見ている。

可愛らしいギザギザ歯だ。

でも笑い方はちょっと変だね。


ていうか、本当に…ここまで感動されるとは思わなんだ。

何処までニグラスは性悪だったんだよ…我ながら呆れる。



「許してくれてありがとうな…」


みんな、謝罪を受け入れてくれてありがたい。

まだ完全に信頼をしてくれた訳ではないだろう。

だが焦らなくていい。

ゆっくりと皆んなとの関係を築いていきたい。


フェンやカトリーナ達と共に食器を片そうとすると更に感動された。

何となく居心地が悪かったので部屋に戻ってきた。

メルスは自分の部屋で休ませた。


フカフカのベッドで寝転ぶ。


「そういえば…」


転生してからずっと気になっていた事がある。

ニグラスはそれを確かめる事にした。


「ステータスオープン」


================================


ニグラス・シュブーリナ (12)

レベル:1

種族:ーー

耐久:F(5)

筋力:F(5)

敏捷:F(5)

魔力:F(5)

固有スキル:淫乱

魔法:該当なし


================================


「いや、弱っ!?」


基礎ステータスがあまりにも低すぎないか?

主人公は最初の時点で20はあった筈だ。

ステータスF(5)って…そこら辺のモブと変わらない…

ステータスには数値とアルファベットがある。


F(0〜100)

E(101〜200)

D(201〜400)

C(401〜600)

B(601〜800)

A(801〜900)

S(901〜999)

EX(1000以上)


という風にランク付けされている。

基本的にある難易度やスキルや魔導具の使用を除くと主人公やキャラのステータスはS(950)以上はいかない仕様になっている。


どうしてこんなステータスで主人公をボコせたのか…と思ったが、そういえば対象の力を自分よりも低くする力を持つ魔導具を使ってたな…

それなら、納得だ。

努力を嫌い、貴族としての権力にしか頼らないキャラだったよ。


てか、スキル淫乱ってなんだよ!


このままでは、ダメだな。

あまりにも酷すぎる。

こうなった原因は分かりきってる。

本人の怠慢の結果だ。


物語の開始となるインセンベルク勇王学園の入学試験は今から3年後。

本来は15歳から入学試験を受けられるのだが、ニグラスはこの時点で既に母親から学園に口利きをしてもらってるのだ。


学園には入学試験+クラスを決めるための実技試験が用意されている。

其処で主人公と出会い、卑怯な手でボコボコにする。

しかし勇者として覚醒した主人公に完膚なきまでに負ける。

そしてニグラスは、学園に入ったものの最下生クラスとして入学しニグラスに恨みを持つ生徒達に罵倒や暴力を受ける。


そして最期は、誰からも知られる事なく勝手に死んでいた。

救いようのない末路。

何度、【スター・ウォーリアーズ】をプレイしても変わらなかった結末。


「そんなの断じて認めん!」


そんなの認めない。

認められない。

絶対に回避しなければならない。


本編のニグラス・シュブーリナというキャラクターと同じような末路を辿ることは絶対に避けてやる。

これから訪れる死亡フラグを何とか阻止する。

これはチャンスだ。


今の自分はゲーム本編の屑野郎ニグラス・シュブーリナ。

だが、中身は違う。

ニグラス…お前は幸運な奴だよ。

【スター・ウォーリアーズ】伝説の攻略者であるこの天城奏多がお前を救ってやる。


その為にやることは一つ。


強くなる。



お前の嫌いな努力を死ぬほどしてやる。

これまでの怠惰なお前の性根を叩き直してやる。

本編でニグラスに恥をかかせた主人公をぶっ倒すくらい強くなってやる!

あわよくばヒロイン達と…ぐふふ

おっと、少し取り乱してしまった。


ん?

どうやって、だって?


そんなの簡単な事さ。


俺には、俺にしか知らない原作知識がある。

強くなる為ならばどんな手段だって使う。

個人で限界があるなら他者に頼ればいい。


【スター・ウォーリアーズ】で積み上げてきた努力が遂に形になる日が来る。

まぁその条件として…この世界が俺の予想している難易度と同じ難易度だったらの話だ。

もしそれが違ったら、別の作戦を練るが…


「ふっ、そうと決まれば早速行動せなばなるまい!」


決行は明日。

悪いがもう少しだけカトリーナに働いてもらおう。


あ?

なに?

俺が動けって?

何を馬鹿な事を…


転生する前から俺のモットーは他力本願なのだ。

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