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第2話 『転生』

落ち着いて。

状況を整理しようか。

まず、これはどういう展開だ?

このえってぃなメイドさん達は誰かな?

そもそも、この広い屋敷はなんだ?

自分は確か、【スター・ウォーリアーズ】の新しい物語を始めようとしたんだよな?

なら、これはゲーム?


だが、あの感覚。

あの感触。

あの快楽。

アレは紛れもないリアル。

そして、今…ベッドで涙を流しながら寝ているメイド達…本物だ。

ゲーム内のキャラクターがこんなヌルヌルと動く筈がない。


「うぅ、、、ニグラス様、起きられたのですね」


ふと、一人の美しく妖艶なメイドが声を掛けてきた。

ん?いま、ニグラスって聞こえたが…まさか、そんな。

だが、思い当たる節は確かにある。


煌びやかな部屋。

巨大なベッド。

部屋に飾られた豪華な装飾。

そして、メイド達の震えよう。


嘘だろ…そう心の中で思いながら、急いでベッドから起き上がり鏡の前に立つ。

そして、自分の姿を映す。


銀髪が良く似合うモデルのような顔立ち。

この美しい顔立ちに誰もが好青年だと騙されただろう。


思い出した。

話しかけてきたメイドは…フェンで間違いない。

ニグラスに最も非道な仕打ちを受けてきた悲劇のヒロイン…

これで確信した…今の自分は、あの『最悪最低』ニグラス・シュブーリナなのだと。


「フェン…僕はニグラス。そうだな?」

「は?え、ええ…貴方様はニグラス・シュブーリナです」

「それで、僕はメイド達を無理矢理襲っていた、そうだね?」

「ええ、いつものように激しかったですわ」


全く、なんで奴だ…まぁ自分なんだが。

メイド達はビクビクと肩を震わせて此方の様子を伺っている。

それはそうだろう…自分の意思すら尊重されず無理矢理奉仕させられていたのだから。


なんて最低な奴だ。


「僕は他にどんな事を?」


そう問うと、メイド達は恐る恐る語り始めた。


夫と強制的に離婚させられニグラスの奉仕メイドにされた者。

経営していた宿屋を潰されて奉仕メイドにされた者。

恋人を殺され無理矢理、奉仕メイドにされた者。

もう、本当に救いようのない。

こんな酷い所業を行ったのは、そう…俺、ニグラス・シュブーリナである。


とにかく、メイド達に服を着てもらう。


ニグラス・シュブーリナ。


【スター・ウォーリアーズ】に登場するキャラクターの一人。

そしてその中で最も嫌われている悪役貴族こそがニグラス・シュブーリナである。


父親は死去。

母親は外交で常に不在。

伯爵としての権力。

それを利用して好き放題している。

自分の気に入らない者を家の権力を使って追い詰め破滅させる。

誰かが少し口答えしただけでも、執拗に相手を追いつめる。


そして女癖が悪く。

恋人や伴侶がいようと全力でそれを排除し自分の物にする。

飽きたら娼館に売り飛ばす。

などと言った最悪の所業を当たり前のように繰り返す救いようのない屑。


どうしてか、分からない。

が、天城奏多は確かにこの悪役貴族ニグラス・シュブーリナに転生してしまったらしい。

これからの未来を憂い、天井を見上げる。


「はっ!」


今は、そんな事を考えている場合ではなかった。


「メイド達、そしてフェン…君達に言いたい事がある」


ガバっとニグラスは頭を下げる。

その行動にメイド達やフェンは動揺する。

何をしているのだろうか、と。


「これまですまなかった!君達にして来た事を考えれば許してくれなんて言えない!罵ってくれてかまわん、殴ってくれてかまわん!本当にこれまですまなかった」


突如、謝罪の言葉を述べられたメイド達やフェンは更に激しく動揺する。

(え、この男、気でも狂ったのか?)そんな心の声が聞こえてくる。

だが当然だろう。

これまで暴虐の限りを尽くしてきたクソ野郎が突然、自分たちに誤り出したのだから。

不気味で仕方ないだろう。


「あ、あの…」

「もう僕の奴隷として奉仕する必要はない、君達が願うならこれまでの時間を返す事は出来ないが返せるものは全て返すつもりだ!本当にすまない…」

「ニグラス、様…」

「それでも気が済まないのなら、殴ってくれて構わない!むしろ、殴って欲しい!」


なんて、ドMな発言だろうか。

だが、断じて構わん。

これで少しでも彼女達の気分が晴れるのであれば何度でも殴られてやろうではないか。


メイド達は互いに顔を見合わせる。

ニグラスの言葉が嘘偽りない、そう判断したのだろうか。

身体を震わせながらも、目を合わせる。


「さぁ、気が済むまで殴ってくれ!そしてそれぞれ望みを伝えてくれれば出来る限りの補償をする!」

「どういう心情の変化があったのか知りませんが、それで許されると?」

「思っていない、これが僕に示せる最大限の誠意だ!」

「そう、ですか。ならその誠意受け取ります。そして、必ず約束は守って貰います」

「あぁ、守ろう」

「それでは、歯を食いしばって下さい」

「ふぇ?」


先程までニグラスを恐れていたメイドとは思えない程の気迫。

曲がりなりにも主人であるニグラスの胸倉を勢いよく掴み、拳に力を入れる。

信じられない程の殺気!


「あ、あの、やっぱりさっきのなーー「このっ!くそ野郎がァァァァァァァァァァァァア!」

「ーーくぁwせdrftgyふじこ!?!?!?」


凄まじい轟音。

拳がニグラスの顔面にめり込む。

脳が揺れる…容赦ない一撃ッ

しかし、それははじまりに過ぎない。

ガシッと次のメイドがニグラスの胸ぐらを掴んで離さない。


「ひぇ」


強烈なフックがニグラスの顎を捉える。

身体がぐらつくが倒れる事をメイド達は許さない。

次々とメイド達の積年の恨みを晴らすような強烈な一撃が流星のように降り注ぐ。


数分後。


ニグラスはその美しい顔面がふっくらと膨れ上がり、情けない体勢で気絶していた。

メイド達は、それぞれの要求を書面に記しニグラスの剥き出しになった尻に叩きつける。


「「「「それではさようなら」」」」


流石に限度があるのではないだろうか。

しかし、文句は言うまい。

きっと彼女達の受けた屈辱と苦痛はこんなものではないのだから。


「お疲れ様ですわ。ご主人様」

「フェン…?」


フェンは、ニグラスの頭を自分の膝の上に乗せる。

ぷるんと立派な山々が揺れたのは見なかったふりをしておこう。


「どうして」

「愚問ですわ。私は幼き頃より貴方に仕えて来ましたわ。貴方の元を離れるつもりはありません」

「そうか…ありがと」

「ご主人様に礼を言われるなんて初めてですわ」


おい、ニグラスめ…こんなメイドが側に居ながら感謝すらしていなかっただと?

挙げ句の果てに陵辱しおって。

だが、今度は違う。

彼女を大切にしよう、そう決意するのであった。

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