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ゴブリンキング

 そこは、薄暗い洞窟の中だった。壁に備え付けられた松明の灯が揺らめき、その場に集う異形の人型達を橙に照らす。


「キング、今日の獲物はこちらです」


 一匹のゴブリンが、玉座に座る一際大きな個体に何かを差し出した。


「これは良いな、酒を注ぐのに丁度いい」


 それは、小さいサイズの頭蓋骨。形状から人間の子供のものと分かる。ゴブリンは人間を殺す事を目的とした襲撃はあまり行わないのだが、キングと呼ばれた巨体のゴブリンの背後には多くの人骨が積み重なっていた。どれも頭蓋骨なので、別の場所で殺害され頭部のみがこうして献上されているのだと分かる。


「カカカ、軍師のおかげで人間どもも右往左往しておる。もうすぐワシらもかの魔王軍に仲間入りだ」


 上機嫌で笑うキング。だが、軍師と呼ばれた杖を持つゴブリンは険しい顔をしている。


「ご機嫌の所、申し訳ございません。あまり良くない知らせです」


 その言葉に一瞬で真剣な表情に戻ったキングだが、気分を害したというよりは軍師の言葉を受け止める為の態勢を整えたといった様子だ。それほどまでに彼はこの軍師を信頼しているのだった。


「どうした?」


「勇者が、我等を探り始めました」


◇◆◇


 ケントは盗賊達のアジトを訪ねていた。


「皆さんにお聞きしたい事があって来ました」


 かしこまった態度に、だが盗賊達は待っていたと言わんばかりに迎え入れた。


「まあまずはそこに座ってくださいよ、先日は教団退治助かりましたぜ。今日はゴブリンの事ですね?」


 どうやらケントの予想は正しかったようだ。コレットは不思議そうな顔をしている。


「はい、ゴブリンの襲撃があった後で町の中に異変はありませんでしたか?」


 盗賊の頭は、口角を上げニヤリと笑った。これは喜びを示す笑みだ。


「さすが勇者様、闇雲に周辺地域を駆けまわるだけの冒険者どもとは違う。仰る通り、ゴブリンが地下水路を通って悪さをしていましたよ」


 そう、ゴブリンは少数による襲撃で兵や冒険者の目を外に向け、手薄になった町の中で活動していたのだ。


「ゴブリンがやるような悪事と言えば、食料庫を荒らしたりとかですか?」


 前述の通りゴブリンは人間を殺すために襲う事は稀で、大抵は食料を奪う事が目的だ。また、ケントは敢えて口に出さなかったが、この世界におけるゴブリンの重大な危険性として異種族のメスを襲い子供を産ませる習性があった。


(あまり考えたくはないけど、それが目的の可能性は十分にある)


 だが、盗賊の答えはそんなケントの想像を更に超えたものだった。


「それが、力のない人間を性別年齢関係なく無差別にさらっています。前の魔王教団から子供が助けられた時にも子供が帰って来なかった家が多数あり、そちらはゴブリンの仕業だと思われますね」


「それって、大問題じゃない!」


 コレットが叫ぶ通り、重大な問題だ。すぐにでも退治しに行きたいが、まだ情報が足りない。


「ゴブリンはどこから地下水路へ侵入しているのか分かりますか?」


 侵入口が分かってもそこから更に敵の拠点を見つけなくてはならないのだが、焦らず順を追って解決していかねばならない。


「ええ、西の一角に更なる地下への入り口が隠されています。奴等が入って来るのはそこです。巧妙に隠されていますので、うちの者に案内させましょう。しかし、我々が探ったところ奴等の住処に直接つながっている様子はありませんでした。相当に慎重な連中ですね、ただのゴブリンとは思えませんよ」


 やはり、通常のゴブリンが取る行動ではない。ケントは悪魔に敗北した前回を思い、剣の柄を強く握りしめた。


◇◆◇


「才能値98000の非常識な人間か。厄介だな、直接対決は避けたいものだ」


 キングはゴブリンの中でも突出した才能値を持ち、圧倒的な強さで種を統べている。だが、だからこそ慢心せず全てにおいて慎重を期していた。自分よりも強い者が世の中に多く存在する事を理解していたからだ。


 そんなキングの聡明さに軍師は心酔し、自分の持つ全ての能力を彼の為に使う覚悟であった。


「勇者は多くの仲間を持ちません。連戦で疲弊させるのが最良でしょう」


 軍師の進言を受けたキングは、すぐにゴブリンの兵、ソルジャー達を呼び寄せた。


――――――


邪精 ゴブリンキング

才能値 12450


邪精 ゴブリンメイジ(軍師)

才能値 8200


邪精 ゴブリンソルジャー(平均値)

才能値 4500

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