プレツの都市、スップの街中を歩いていたギンは一緒に歩いていたエイムに自らの妹の存在を明かし、現在どうしているかの話をしようとしていた。
「妹の事だが、正直今どうしているか分からないんだ」
「え⁉どういうことですか?」
「妹が生まれてすぐに他の家に養子として出されたんだ」
「そうなんですか、でもどちらの家に出されたかも分からないんですか?」
エイムの問いにギンは少し顔を伏せて話す。
「俺も幼かったから詳しい話は理解できなかったし、内乱後はブレイクに育てられていたが、その話をすることもなかったからな」
「じゃあ、妹さんとの思い出はないんですね」
エイムの言葉を受け、ギンは口元を少しだけ緩めて話す。
「いや、ないこともないな。おぼろげだが覚えているのは、母が抱きかかえている赤ん坊、妹だったと思うが手を握ったことがある。まあ、強く握りすぎないよう母に注意されたがな」
「それってギンさんも妹さんが生まれて嬉しかったってことですよね」
「どうだかな、だが今思うことはどこかで幸せに生きてくれたらいい。それが妹に対しての唯一の望みだ」
ギンの言葉を聞いてエイムは暖かく、優しい言葉をかける。
「でも、会えることがあるといいですね。きっと妹さんに会えれば、ギンさんも妹さんもすごく嬉しい気持ちになると思います」
「エイム……そうだな、それを希望に生きていくのも悪くないな」
「私も是非お会いしたいですね」
「どんな奴かは分からないが、仲良くしてほしいとは思うな」
ギンの言葉にエイムは笑顔で返答した。
「きっと、ギンさんの妹さんなら優しい人だと思いますから、仲良くできると思います」
「だが、ものすごい意地悪な奴だったらどうする?」
「うーん、その時はギンさんがビシッと注意してください」
「10年以上ぶりに会って兄面は難しいな」
ギンの少し困った返答を聞いてエイムが、可笑しかったのか笑い出す。
「フフフ、ギンさんもお兄さんらしく振舞いたいと思っているんですね」
「いや、そういうわけじゃないが……実際に会うと何を話していいかは分からないと思うな」
「でも、私は会えるという事が大事だと思います。ご両親もお兄さんも亡くされたギンさんにとっては妹さんが会えるかもしれない肉親なんですから」
「エイム……」
ギンはエイムの言葉を聞いて、エイムの心遣いに身が染みていた。
そして同時に別の思いが頭に浮かんでいたのである。エイム自身も本当の両親のことを知る権利があるのではないかということである。
だがギン自身はこの話を打ち明けるタイミングを計りかねていたのだ。