ムルカが悲しみを乗り越えられると信じることとした一同に対し、司祭が声をかけていた。
「とりあえず皆さん、長旅でお疲れでしょうから本日はゆっくりとお休みください」
司祭の言葉を受け、ルルーが司祭に声をかける。
「司祭様、私はこれまでのことを報告したいと思いますのでよろしいでしょうか?」
「はい、承知いたしました」
司祭にこれまでの報告をすることにしたルルーはギン達に自由にしていいことを伝えた。
「みんなはゆっくりしていて、街に出てもいいし」
ルルーの言葉を聞いてギンが行動を開始する。
「そうだな、俺は少し街に出て外の空気でも吸ってくる」
ギンの行動を見てエイムが声を出す。
「あ、じゃあ私もご一緒していいですか?」
「ああ、構わない」
「ありがとうございます」
そう言ってギンとエイムは街まで出かけていく。
その様子を見てからヨナはルルーに声をかける。
「じゃあ、あたしらも街に出るよ。けっこう大きな街だし、ちょっと楽しみかな」
「街の人とトラブルを起こさないでよ、あなた達ケンカっぱやそうだし」
「失礼だね、こいつらは短気だけど、あたしがいれば無茶なんてさせないよ」
「私はあなたも十分短気だと思うけど……、まあ、あなたを信じるわ」
ルルーの言葉を聞いて、ヨナ達は街へと出ていく。
1人教会にとどまっているブライアンが気になり、声をかける。
「ブライアン、あなたは街に行かないの?」
「ああ、ちょっとこの街では色々あってあんまり出たくねえんだよ」
ブライアンにとっては生まれ育った街ではあるが、かつての同僚とのいさかいもあり、スップの街を出歩くのは抵抗があるようだ。
ルルーもあえて深くは聞かず、声をかけてその場を立ち去った。
「そうなの、何か用があったら声をかけてね、それじゃあ」
ルルーは奥の部屋に行き、司祭にこれまでの同盟交渉の経緯を報告する。その旅の途中で同行することになったジエイ、ヨナ達、ブロッス帝国の部隊と戦闘になったことすべてをだ。
「……そうですか、想像以上に過酷な旅であったようですね」
「はい、帝国の侵攻範囲は想像以上に広くなっていると感じました。これも彼らの軍事力がなせることだと思うのですが」
「気になるのは同盟国ですね。スールはともかく、グラッスの方からは不穏な動きを感じますね」
「はい、こう言っては失礼だとは思うのですが、国王が少々頼りなく感じました」
ルルーの言葉に対し、司祭は違った見解を示す。
「いえ、私は少し違う感じがしましたね」
「と、言いますと?」
「いくら国王がまだ若く未熟な面が目立つとはいえ、側近の1人が国王の意見をその場で覆させるなど異常な光景だと思いますね」
「た、確かにそれは……異常ですが、その側近に国王ですら逆らえないような力があるということですか?」
ルルーの問いに司祭が神妙な表情で答える。
「そこまでは断言できませんが、注意する必要がありそうですね」
「はい」
「それからルルー、旅の途中で会ったジエイという方は今どうしているのですか?」
「現在はスールに帰国し、国王にこれまでの経緯を報告しているようです。報告が終わり次第、こちらと合流すると話していました」
ジエイの話を終えるとルルーはヨナの話を司祭にした。
「司祭様、ヨナ殿とその傭兵団との護衛契約の件ですが……」
「私は構いません。正規軍を動かせない以上、あなた方に別で護衛が必要だと私も思います」
「ありがとうございます」
最後にルルーがあることを司祭に尋ねる。
「司祭様、最後に魔法剣についてですが……」
ルルーが感じた疑問とは?