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幼き思い出

 書物店で魔導書を購入したギン達は会話をしながら歩いて馬車を預けている馬小屋まで向かっていた。その道中でギンがエイムに尋ねている。


「そう言えばエイムはどうしてあんなにスラスラと古い文字が読めるんだ?宮廷魔術師や王族や上級の貴族でもない限り触れることはないはずだ」

「私の村の村長さんからたくさん本をもらったんです。若い頃はコッポの王宮の宮廷魔術師だったみたいですから」

「そうだったのか、いやだからといってスラスラ読めるものではないと思うのだが」

「言いませんでしたっけ?私小さい頃は体が弱くて病気がちだってこと」


 エイムの言葉を聞いてギンはプレツのスップでミッツ教団の教会に行く道中で言われたことを思い出していた。


「ああ、お母さんの魔法薬を飲んでいたってあれか」

「そう、その話です。だからあんまり年の近い子と外で遊べなくて、村長さんからもらった本を読んでいました。分からない文字はお父さんやお母さん、村長さんに教えてもらってたんです」

「いやすごいな。病気の身でもそんなに勉強するなんて、余計に体を悪くしないか?」

「大丈夫ですよ。あ、でも元気な時まで読みふけり過ぎたら、さすがにお母さんに怒られました」


 エイムが幼いころの思い出を語るのをギンは静かに聞いていた。


「でもお母さん、時々読み聞かせもしてくれたりして、幼い私はあの時間がとても心地よかったです」

「……そうか」

「その時思ったんです。いつか私も誰かに魔法や文字を教えられることができればって、まさかこんなに早く来るとは思ってなかったですけど」


 エイムの言葉を聞いてギンは強く言葉をかける。


「そうか、じゃそういうことなら頼むぞ。エイム

「もう、先生は止めてください。恥ずかしい」


 ギンとエイムがやりとりをしているとブライアンが正面から声をかけてくる。


「おう、お前ら。書物店の用事は終わったのか?」

「ああ、こちらの用は済んだ。ん?ブライアンその盾……」


 ギンがブライアンが背中に背負っている大楯を目にすると、その盾は鋼製であった。


「おう、これか。中々いい盾だろ、まあちょっと高かったけどな」

「そんなに高かったならルルーに相談して旅の資金から返してもらってはどうだ?」

「でもようあいつケチくさいからな」


 ブライアンの言葉を聞いてエイムが苦言を呈す。


「ダメですよブライアンさん、そんなことを言っちゃ、ルルーさんは私達の旅がしっかりとできるように管理しているんですから」

「何だよエイム、お前まであいつの肩を持つのか」


 困っているブライアンにギンが言葉をかける。


「エイムの言う通りだ。だが俺達にとって必要ならあいつも出し渋りはしないだろうから1度相談はするべきだろう」

「ちっ、分かったよ」


 ギンとエイムに言われ相談することにしたブライアンであった。

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