グラッスの王宮内の玉座の間へ案内されたルルーとムルカはグラッス国王に挨拶をし、これから同盟交渉が始まろうとしていた。
「はるばる長旅足労であったな。して何用であるか?」
国王の質問に対しルルーが答える。
「はっ、我がプレツはブロッス帝国の侵攻に対抗するべく反帝国同盟に向けて動いております。先日我らが王より文が届いたと存じますが、我らが使者としてその返答を伺い、我が王に届ける任をおった所存にございます」
「ふむ、確かに文が届いておったな。よかろう我らもその反帝国同盟に加わろう」
「ありがたきお言葉恐悦至極に存じます」
ルルーの言葉を聞いて、更に国王が聞く。
「話はそれで終わりか?」
「いえ、こちらよりお許し願いたいことがございます」
「何だ?申してみよ」
ルルーは少しばかり緊張して思いを話す。
「はっ!同盟反対派だと耳に挟んだトッポックス領主殿に雇われていた傭兵団を我らの護衛として雇うお許しを願えますでしょうか?」
「何?」
「我らとしましても諸国をまわるのに護衛がいることにこしたことはございません。彼らも雇い主を失い路頭に迷っていたでしょうから……」
「ならぬ、ならぬぞ!反対派に雇われていたとはいえ、我が国の民だ。如何に同盟国とはいえ、他国の者に……」
国王が反対意見を述べようとした時に、側近が国王に声を掛ける。
「陛下」
「何だ!今私が話しているではないか」
「まあ少しお耳をお貸しください。特使殿、しばらくお待ちくだされ」
そう言うと側近は国王に耳打ちをした。
「あの者達は、我らにとっては反逆者に近いのですぞ。厄介者を引き受けてくれると向こうから申し出ているのですから素直に受けるのが良いと思いますが」
「し、しかし」
国王の表情が歪んだ瞬間をルルーとムルカは目にするが、側近は国王に対し話を続ける。
「あの者達を国内に残しておくのは火種になりかねません。私は国を守るために申しているのです。どうかお聞きくだされ」
側近が国王の元を離れると、国王はルルー達に言葉を告げる。
「失礼した、まあ、そなたらが護衛が必要だというなら、彼らの国外での活動を許可しよう。話はそれで終わりか?」
「え、は、はい」
「なら、下がってよいぞ」
「では失礼いたします」
そう言ってルルーとムルカは玉座の間を後にする。
同盟は成ったが、国王のヨナ達に対する処遇の心変わりを目の当たりにし、グラッス国に対する不安を感じずにはいられなかった。