ギンからヨナ達傭兵団と傭兵契約を結ぶことを提案されたルルーは、自らが下した決断を傭兵団の代表であるヨナに告げようとしていた。
「さてと、ええとヨナ……、でいいのよね?」
「そうだよ、何だい?」
緊張しているのかルルーは深呼吸をして改めてヨナに告げる。
「ふーーー、傭兵団長ヨナ殿、我々はあなた方と傭兵契約することを希望します。貴殿の返答をお聞かせ願えるでしょうか?」
「ちょっと、何だい急に改まって、傭兵契約?あたしらはここの領主様に……」
ヨナが思わず言葉を止めたことを察し、ルルーが続きの言葉を話す。
「雇われている……、のよね。でもあなたも気付いていると思うけど、その領主は領地を没収されあらゆる権限を失い、あなた達を雇い続けることはもう無理よ」
「そんなこと分かっているよ……、でも例え誰が治めたってあたしらが住む土地に変わりはないよ」
「でも、それじゃああなた達が辛いと思うの。依頼とはいえ、他国の人間から不当な通行料を巻き上げようとした悪評があなた達について回るわ」
「はっ!あたしらはそんなの慣れっこだよ。生まれも育ちも卑しいからね。だから、あんたが気にすることないよ」
ヨナの言葉にルルーが寂しげな表情で言葉を返す。
「私はあなたが私達と契約をしないと言うなら、それは仕方ないと思っているわ。でも、なんか無理をしているように見えるの」
「あたしがかい⁉」
「ええ、本当はあんなことをしたくなかったんじゃないの?それでもしたのは彼らの為?」
ルルーが言う彼らとはヨナを慕う他の傭兵達だ。そのことを言われ、ヨナは本音を吐露する。
「ああ、そうだよ。あいつらも卑しい生まれと育ちでまともな仕事になんて就けなかった。だからあたしらは傭兵団として活動したんだよ。それがあたしらの生きる道だったんだ」
「そうだったのね。でもさっきあなたは言ったわよね、ギン……、彼の言葉を聞いて強い思いで生きたいって、今がその機会だと思うわ」
「そうは言ったけど、実際どうしていいか分からないんだ」
思いはあっても踏み込めないヨナに対し、ルルーが希望の言葉を言う。
「それを私達と一緒に探しましょう。あなた達は過ちをおかしかけたけど、まだ新たな道を見つけられるわ」
「本当にそうかい?」
「ええ、きっと」
ルルーの言葉を聞いたヨナは決断を下す。
「そこまで言うならあんたらと契約するよ。あんたらにあたしらの身を預けるよ。みんなもそれでいいかい?」
「俺達はどこまでも姉御に付いて行くだけでさあ」
ヨナが仲間に尋ねるのを確認するとルルーがヨナに言葉をかける。
「決まりのようね。これからよろしくねヨナ」
「よろしく」
互いに挨拶をかわし、ヨナは仲間の傭兵と共にいつでも旅立てる準備を始める。
話し終えたルルーにムルカが声を掛ける。
「成長したなルルー」
「いえ、私なんてまだまだです。もし私が少しでも成長できたというなら彼らに出会えたからです」
ルルーはそう言うと、ギンとエイムの方向を向く。
「彼らは私よりも他者を思いやる心が強かった。私はそれに心を強くうたれました」
「そうか」
「はい」
そこには穏やかな空気が流れていた。