ジエイと共闘した傭兵団を率いていた女性が自分達に通行料を要求していたヨナだという事を知ったギン達、特にブライアンは怒り心頭であり、その行方をジエイに尋ねる。
「ジエイ、その女はどこに行ったんだ⁉このままじゃ気が収まらねえ」
「申し訳ありません。そのような事は存じておらず、戦闘が終わるとそのまま分かれてしまいました」
こればかりはジエイを責めるわけにもいかず、ブライアンは怒りのぶつける場所を失っていた。
そのような状況に対してルルーの中に疑問が生まれる。
「彼女たちの事は気になるけど、もう1つ問題があるわ」
ルルーの発言が気になり、エイムが尋ねる。
「それって何ですか?」
「グラッスとの同盟よ。このまま結ぶのが正しいのかなって思ったわ」
「さっきの人達が関係あるんですか?」
「そうよ。彼女たちの行為は国家間のトラブルの元になりかねないわ。自らを領主に雇われた傭兵だって言ってたし」
ルルーはヨナ達の行為が領主の命、もしくは彼女たちの独断だとしても、他国とのトラブルの火種になる行為があった以上同盟に対し慎重な態度になっていた。
そのルルーの話を聞いてムルカも自らの意見を述べる。
「しかしルルー、ここまで来てなにもせずに帰るわけにもいかんだろう。とりあえず我々は交渉に向かい、グラッスの国王に今回の件を報告し、彼女らや領主の処遇を委ねるしかなかろう」
「お待ちください、同盟交渉は遅くなりますが、先にトッポックス領主に事実確認をしましょう。そのうえで判断すればよろしいのでは?」
「分かった。それで貴殿が納得するのなら先にトッポックス領主の館に向かおう。皆もそれで良いか?」
ムルカが尋ねると各人が返答をする。
「俺は構いません」
「私もです」
「ま、しょうがねえか」
「私は事情がよく分からないので皆さんの判断にお任せします」
とりあえず、グラッス国王との交渉の前にトッポックス領主に今回のヨナ達の件の事実確認に向かうこととなった。
各々が馬車に乗り込み、領主の館を目指す。手綱を握っているのはギンであり、一同に声を掛ける。
「それじゃあ出発するぞ」
ギンがそう言うと馬車は動き出し、領主の館を目指す。
馬車の中でジエイがヨナ達の事を一同に話していた。
「彼女たちは帝国の兵にも引けをとらない者達でした。特に彼女の持つ魔法の弓というのは矢を通し、眠りや麻痺の魔法を対象相手にかけるというものでした」
ジエイの話を聞いてエイムが感心し、思わず言葉が出る。
「あの人そんなにすごい人なんですね」
エイムの言葉を聞いてブライアンが言葉を発する。
「奴というより弓がすげえな、そんなすげえ弓を持っていても金に困っているのか」
ブライアンの言葉を受け、ジエイがヨナの言ってた言葉を思い出し、告げる。
「しびれ薬代が
ジエイの言葉を聞いて、ギンは馬車を止め、ジエイに尋ねる。
「ジエイ、今薬代が
「はい、そうですが」
ギンの言葉を聞いて、エイムがギンに尋ねる。
「どうしたんですか?ギンさん」
「奴らはもしかしたらまだ報酬を受け取っていないかもしれない」
「え、それってどういうことですか?」
「これは俺の推測だが、もしかしたら通行料を巻き上げるという依頼をされたのかも知れない」
ギンの言葉を聞いて、ムルカが何かに感づく。
「まさか……ギン殿」
「はい、奴らは領主の依頼で通行料を巻き上げていたかも知れません」