ヨナ達傭兵団が帝国軍に対し攻撃を仕掛けている様子を見て、好機と見たジエイは自らも戦線に加わり帝国軍の前に姿を現した。
突如現れたジエイの姿を見て不審に思ったヨナが尋ねる。
「な、何だいあんた?」
「ご安心を、私はあなた方の味方です。帝国軍を追い払いましょう」
「まあいいや、頼むよ」
ヨナがそう言うとジエイは手持ちの短剣を投げ兵士たちに刺していき、兵士は次から次へと倒れていく。
「まさか奴か?暗殺術や魔法で我らを翻弄していたのは」
兵士たちはジエイが気付かれずに暗殺をしていたと感づくが、ジエイは手で印を結び火の忍術を発動さえ帝国軍に放つ。
「ぐわーー!」
火は広範囲に及び多くの兵が火に巻き込まれる。ジエイの忍術を見てヨナが感心する。
「へえーーー、やるじゃないか。あたしの力も見せてあげるよ」
ヨナがそう言うと弓に魔力を込めて矢を放つ。
1人の兵士に矢が放たれるがその兵士は剣で矢を叩き落すことに成功するが叩き落した矢が破損した瞬間にその兵士はその場に眠ってしまう。
「おいどうした?……ん……」
眠った兵士に駆け寄った兵士もその場で眠ってしまう。
その様子を不思議に感じたジエイがヨナに尋ねる。
「今のは一体何なんですか?」
「ああ、これ。魔法の弓さ」
「魔法の弓?」
「そうさ、この弓があたしの魔力を媒介にして矢に色んな魔法効果を与えるのさ。さっきのは眠りの魔法で、あたしの得意な魔法さ」
様々な魔導具をジエイも知ってはいたが、さすがに魔法効果がある弓矢に関しては想像していなかったのか驚きを隠せない様子である。
「すごい、ですが攻撃魔法を込めれば敵を殲滅することも可能だったのでは?」
「いや、あたしにはどうもそういう魔法の素養はないみたいでさ。眠りや麻痺の魔法が得意だからその方がいいかなって思ったんだよ。魔力もそんな消費しないし、しびれ薬代とかが浮くからあたしとしてはお得だよ」
魔法の弓のおかげで魔力、そして経済面で得をしていることを喜々としてヨナが話している中ジエイがヨナに呼びかける。
「じゃあ、総仕上げといきますか」
ジエイはそう言うと兵士たちの懐に飛び込み、接近戦で次から次へと帝国兵をなぎ倒していく。
「あたしらも行くよ!」
「ヘイ!姉御」
更にヨナと傭兵団も畳みかけ、もはや帝国軍は戦意喪失しており、帝国側の戦線は崩壊していき、砦攻略は事実上の失敗に終わろうとしている。
何名かの兵士は戦線を離れ騎士団長であるカイスに報告へと向かっていった。