ムルカが魔導騎士団副官トーラスとの一騎打ちをしているころ、ジエイは砦の近くにまで接近していた。
「どうやら、先程の騎士の従士は追いつけないようだ。早く砦に行かなければ」
そう言ってジエイは走る速度を速めた。ジエイは修行で足が速くなったのだが、忍術によりさらに速度を速めることが出来るのだ。
忍術を使ってさらに自らの速度を速めたジエイは砦にたどり着くが、砦が追い込まれている様子を目の当たりにする。
「ぐわーーーっ!」
「ぎゃあああ!」
多くのグラッスの兵士の断末魔をジエイは耳にして呟く。
「まずいな、ムルカ殿やギン殿達を待っていては間に合わん」
そう呟いたジエイは敵の背後を突き、短剣を敵に気付かれないように刺していく。
「ぐわっ!」
「あーーーーっ!」
突如倒れていく自分の仲間たちの様子を不審に思い周りの兵士がざわついていく。
「なんだ?」
「気をつけろ、何かいるぞ」
ジエイに刺されていない兵士たちが周りを警戒しているがジエイは攻撃の手を緩めず、忍術を発動させていく。
「おい!あっちの方が燃えているぞ!」
「どういうことだ?」
兵士が火の様子を見に行くとその兵士たちに突如、水流が襲い掛かる。
「うわーーー!」
次から次へと襲い掛かる不可思議な現象に兵士たちが混乱していく。
「くそっ!何が起きている?」
「まさか何者かがこの近くに潜んでいて魔法を使っているのか?」
「それだけじゃない。誰にも気付かれずに兵士を殺傷もしている」
「トーラス様は敵の足止めに失敗したのか?」
混乱のさなか砦の攻略部隊にジエイ以外の者が弓より矢を放つ。
突如、矢を受けた兵士たちは次から次へと倒れていく。
「何だ?今度は矢だと?」
「おい!あれを見てくれ」
1人の兵士が指をさした先にはグラッスに入国したギン達に通行料を要求した女性の傭兵であるヨナとその手下たちがいた。
「貴様らか!魔法を使い、暗殺術を使って我らを翻弄したのは」
身に覚えのないことを自分達がしたことにされたヨナはあきれながら返答をする。
「はあ?何言ってんだい、あたしらは今ここに到着したばかりなのに。まあいいや、あたしらの住んでる土地を荒らす奴は許さないよ」
そう言ってヨナは帝国兵に対して弓を向け矢を放つ。
「ぐはっ!」
矢が兵士に命中するとヨナは手下に指示を出す。
「みんな、あいつらをやっちゃいな」
「ヘイ!姉御」
ヨナの手下である他の傭兵たちも帝国軍に襲い掛かる。